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新ダンジョン

あれから何日か経って進化による揺れも感じなくなってきた。

見張りを立ててはいたがこのセーフルームに冒険者は1人も来ていない。


サダさんが大量に食材を確保してくれたおかげで飢えることはなかったが似たよう食事ばかりでちょっと飽きて来ている。贅沢かな?贅沢だな。

ここで生活するのもちょっと慣れて来ている。

初めはトイレでみんな恥ずかしそうにしていたが今はそんなに気にせずに行けるようになった。

汗の匂いが気になると言い始めた女性陣のために芋虫から取れた糸でタオルを作って濡れタオルで体を拭くことで我慢してもらってる。水も貴重なのだから流石にお風呂とか無理だからね。


やることも特になかったので脱出の時に必要になるであろう連携を相談したり、サダさんに稽古をつけてもらったり、今あるもので役立ちそうな道具を作ったりしながら過ごした。

ちょっとしたトラブルとしてカヤ先生の女の子の日が始まったのに気づいてしまいこっそり相談されてしまったのが一番大変だった。母の仕事の関係で知っているだろうと相談されては対応しないわけにはいかない。余っていた絹糸があっという間になくなったよ。

あと、辛そうだったので治療もしてあげた。やっぱり土の上は冷えるので女性はダブルパンチで答えるそうだ。冷え性と重なるのはやっぱり辛いんだろうな。わからんけど……

こんな時の『三陰交』は鉄板のツボなんで使ったけど、それだけでは心許ないので、冷えに効く『寒府』というツボも使う。

『三陰交』は結構一般の人でも知ってるツボだと思う。女性の疾患で使われることも多いので前世で俺が鍼灸師だというと大抵の女性は三陰交の話をしてきたりする。

たまに間違った使い方をしてる人がいるのでヒヤヒヤする時もあるツボだ。

生理を誘発させる効果があるので妊娠初期には堕胎の効果が出てしまうことがあるのに使ってる人がいて焦った焦った……

『寒府』というツボは身体の寒邪という冷えの元を取る作用がある冷え性に良く効くツボで、生理痛の人なんかはこの場所が硬くなって痛みが出る人が多い。

膝のお皿の上から掌を横にした分を上に上がって外側の腱の上にツボの反応が出ている事が多いのでそこにお灸をしていく。

3そうほどで身体のがホカホカすると言ってくれた。いつもならもっと据えるんだけど、やっぱりスキルがすごいんだろう。

そう考えるとツボの数は少ない方が身体の負担は減るんだろう考えるながらツボ1つ1つの効果をもっと考える必要があるのだと思い治療を終えた。


元気になった先生はやたらボディータッチが増えて女性陣がなんかザワザワして他の子達もベタベタ触ってくるようになった。

こう狭い空間にいると生存本能が働いて……これがモテ期か……え?違う?

多分脱出したら我に返ってしまうってことだろ?

わかってるわかってる。今だけだってことぐらい………はぁ。

でも今ぐらいいいよね?ちょっとだけモテる気分を味わうだけだから……


とまぁ多少のトラブルはあったものの命の危険自体は全くなかった。

鍼の後にサダさんが元気になりすぎて訓練がきつかったのは事件とは言えないか……

円皮鍼の効果なのかはまだわからないが、どんだけ動いても一向に疲れないサダさんのしごきに耐えた後皆一様に戦闘系スキルのレベルが6〜8の間で強化された。日ぬほどきつかったよ……戦闘は苦手の俺でさえLV5まで上がったんだ…これは死線にさらされたかどうかでレベルがあがるんだろうな。マジで死ぬかと思った………


皆きっちりレベリングと連携を鍛えたのでダンジョン脱出に希望が見えて来た。

とりあえず今日はこのセーフルームを中心に探索することになった。

進化に伴う揺れは収まっているし、セーフルームの移動もしていないので進化は終わったと予測できるものの油断はできない。まだ道が増えたり減ったりしている可能性もあるので道を一本づつ調べては戻りを繰り返す。

新しくなったダンジョンは以前のダンジョンとは……どう違うのかはわからない。

知っているのはサダさんしかまともに探索したことがないのだから当然っちゃとうぜんだな。


サダさん曰く通路の人さは変わらないし、洞窟型であることも変化はない。時たま草が生えてるところや湧き水があるのは見たことがないのだが、深い階層になると他のダンジョンでは存在するので、深層にいると仮定すればそう変化はないようにも思うらしい。ただ水も草も毒物が含まれていることもあり、基本的には自分たちが持ち込んだものかドロップ品しか口にしないそうだ。ドロップ品なら安全性はあるという認識もどうかと思うが……今までの経験で安全だということなんだろう。変わったものがドロップしない限りは大丈夫出そうだ。

今の所はどこがどう変わったのかはわからないが、生えている草は薬草だったので見つけるたびに採取している。水も鑑定した結果魔力を含んでいて飲めば微量の魔力回復をし、この水を媒体にした魔法を使うことも可能なので少し取ってある。ただ水の方は水分補給の役には立たないのだそうだ。全部の属性の魔力が等しく混ざると液体化するものであって飲み込んだら魔力に変わるそうだ。適正でない魔力は便として排出されるので魔力適正のない人には何の意味もない代物だという。

ポーション作りの元になる液体ではあるので俺にとっては利用価値があるので邪魔にならない程度には持っていくことに賛成してくれてよかった。


そして魔物だがオークやオーガが多い。オーガは鬼とも呼んでいる魔物なんだが、個体差が大きく、オークより強いものとゴブリンよりちょっと強い程度の強さの個体がいる。生まれてすぐはかなり弱いそうだ。オスならだいたい一ヶ月ほどでオーク程度の強さに、メスならその倍かかる。オスは生命力が強く好戦的で、メスは強さは性欲が強く混血のオーガを出産することで生命力の強さを獲得しているんだそうだ。鬼種というのは総じて生命力が強く種類が多いことで知られている。オーガの遺伝子が強いので混血であっても普通のオーガとして生まれるものも多い。鬼人と呼ばれる人種がいるが、祖先は魔物なので一部地域では迫害されてるそうだ。

鬼人は他の鬼種とは異なり破壊衝動はなく温厚で賢いものが多い種族でもあるのだと聞いている。

実際には見たことはないが、高ランク冒険者の中に鬼人がいるようで一族の悪いイメージを改善するのが目標だと言っているらしい。

他にも魔物はいるのだが、特段変わったものは見かけないとサダさんは言っている。


何度か戦闘を行ったが皆訓練どうりに動けていてその辺の新人冒険者にも負けないだろう。

オーガのランクは強いものでAランクの個体もいる。今倒した中ではBランクの個体が混じっているとのことなのでいくらサダさんがつてるとはいえ5歳にしては強すぎるといえる。

ちなみにオーガが落とすのは皮、牙、角、魔石がほとんどで、たまに肝を落とす。肝はレアドロップなのだが「ハズレア」なんて呼ばれている。理由は使用用途が特にないからということだ。

一様の用途はそのまま生で食べれば自然回復力が上がるというものだ。

どういうわけか薬に加工してしまうと効果がなくなる。回復力自体はとてつもなく役立つのだが、副作用として魔物のオーガのメスに欲情してしまうというものがある。誰が好き好んで魔物に……ということで不人気アイテムなのだ。

一部悲しい男はメスのオーガを捕獲して肝を使う奴がいると聞いたことがあるが真偽はわからん。

盗賊なんかは使ってると聞いたことがあるし、悪徳娼館でサービスドリンクに肝を細かくしたものを混ぜて飲ませた後メスオーガのいる部屋に放り込まれることもあるのだとか……恐ろしい。


一日目の探索は特に進化したとこがわからないという結論にいたり、セーフルームで休息をとってまた探索することにした。二日目はダンジョンの進化自体は終わってそうだという予想を立てて上の階層に向かう通路を探すことにした。

俺が持ってる紙に地図をかきながら探索していく。昨日もきっちりマッピングしているので大体の予測で上に向かう方角を探索している。


何度か罠を解除し、魔物との戦闘をしていると少しひらけた空間に出る。

空間の中央にはフロアボスらしいレッドオーガとブルーオーガが上に向かう通路を守るように(・・・・・)仁王立ちしている。

下の階層にいるハズなのに守るように待ち構えられているのだ。

もしかしたら揺れて下へ下へ移動していると思っていたのがいつのまにか上に来てしまってるのかもしれない。

ボスである二体のオーガはすでにこちらをロックオンしてるようで逃げることは難しそうだ。

レッドとブルーはオーガの中では強い個体でBランクでも上位に当たる。一体であれば今の俺たちで討伐できるだろうが、二体となると少々厳しい。フロアボスということは普通の個体よりも強い可能性だってあるのだ。ここはダンジョンでダンジョンが作り出したとなれば連携だってとる可能性も考えられる。そう思うろAランクの魔物にも匹敵するボスだと考えて対処すべきだろう。

サダさんがセーフルームに閉じこもっている時に教えてくれたダンジョンの話を思い出しながらオーガを観察する。


ジリジリとこちらに詰め寄ってくるオーガはどう見ても破壊衝動だけで動くようには見えない。

ある程度知性があると見て間違い無いだろう。

首筋に汗が伝う感覚が鬱陶しい。

さすがのサヤも今回は飛び出すこともなくオーガの高度に合わせて微妙に位置どりを変えている。

一時間にも思える緊張した時間が苦しい。

ジリジリと躙り寄るオーガもどこかイラついてるように見える。


「堪えろよ。うん。」


「…ん。」


サダさんから一声かかりサヤの肩がピクリと動く。

どうやら我慢しきれず飛び出そうとしていたらしい。

俺は一様ヒーラーなので戦闘に積極的に参加しないのため、仲間や敵の動きをしっかり観察して指示出しをしなければいけないというのに全く見えていなかったようだ。

「ふっ」短く息を吐いて改めて周りを観察する。


後ろに魔物はいない。

広間の中にはオーガ二体だけ。上に向かう通路には特に異常なし。

鑑定は使ったところで特に何もわからなかった。罠とかあったらわかる時もあるんだけど反応しない時もあるから注意は必要。罠ならマフユが見つけてくれる。

オーガの持っている武器はレッドオーガが右手に棍棒。材質は鉄でなんの変哲も無い。

ブルーの方は右手に大剣を左手に小太刀の二刀流……あんなんで戦うのか?バランス悪いな。

え〜っと大剣は鋼で刃が欠けている。小太刀は〜…ん?ミスリル?

え?ミスリルってあのミスリル?マジで?うはっ!すげぇ〜

特殊な効果はないがミスリルの小太刀!

やばい欲しい!


「サダさん!あのブルーが持ってる小太刀、ミスリルだ!!」


「!!ミスリルだと!やばいな。うん。…サヤ、あれは防御せず避けろよ!!盾が切られちまう。うん。」


「…はい。」


あ!…興奮してる場合じゃないな……すげぇとか言って俺はアホか!

サヤが盾で攻撃を防ぐんだ。俺の錬丹術で鋼の盾の割には硬いが鋼ではミスリルを受けれないじゃないか!!

くそっ!魔力と氣を込めておくんだった!!魔鋼なら一撃ミスリルの小太刀を受けられるって可能性もあったのに!!!

こんな時に後悔するぐらいなら全部やっておくべきだった。

くそ!くそ!!隠さないといけない時とそうでない時を……

なんとか!なんとかしないと!!

さっきまで今か今かと前のめりになっているサキが小刻みに震え始めた。


なんとかできないものか!

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