表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/62

ダンジョン脱出

あれから数回同じような分かれ道に出て同じように進んでいる。


一向に地上に出る気配はない。

氣であたりを探って見たけど地上がわからない。

今はしんがりを務めているサダさんの近くで同じ班のみんなと歩いている。

斥候を担当しているはずの灰蝙蝠の最年少アオくんが後ろに下がって来て小声でサダさんと何か話し始めた。

小声で話されると無性に木になるよね?聞き耳立ててもいいよね??


「サダまずい、今山の麓辺りかもしれん。上のダンジョンに入ってるかもしれない。」


「どういうことだ?うん。」


「元々の入り口の真下はさっきの分かれ道の真上にあるはずだったんだがそれがなくなっている。入った道が上に向かっているもんだと予測していたのに今は山の上層に向かって道が進んじまっている。」


「お前の斥候スキルでそう出てるのか?うん。」


「あぁ。元の出入り口はないと出てる。」



え?うそん!!斥候スキルがどの程度信用できるかは知らんがもし本当なら出口のないダンジョンをさまよってんの?



「外とつながる道は完全にないのか?うん。」


「いや、進化の影響でこの辺りにできてるんだが……閉じかけてる。」


「!!間に合いそうか?うん。」


「この人数はきついな。魔物が出ないというのなら子供の足でも走ればギリギリと言ったところだ。」


「くっ!だが一刻も早く出る必要がある。うん。………走るぞ!!うん!」


「わかった!」


なんだよ、焦った〜。

外につながる道がないみたいに言うのは心臓に悪すぎる!

まぁ急がないといけないみたいだが…大丈夫だよな??


それからみんなにこの話をしたあと大人は小走り、子供は全速力で走り、遅いものは元冒険者の先生が抱えて走っている。途中何度かゴブリンが出て来たがすぐに灰蝙蝠が始末していく。ドロップ品は当然無視だ!

子供でも命の危機がわかるのか皆泣き言を言わずに走り続けている。

外の光が見え始めて速度を上げる子供と少し安心したのか速度を緩める子供がいる。俺たちは最後尾を走っているので速度を緩められるとこっちも落とす必要がありアカリが急に遅くなった前の子供にびっくりしてこけてしまった。

カヤ先生と同じ班のみんなでアカリを起こし、擦りむいて痛みがあるだろうアカリを励まして再び走り出す。


少し前と距離が開いてしまったようだ。だいたい10mと行ったところか?後ろにはしんがりのサダさんもいるので不安はない。心強いものだ。

外に出た子供たちは安堵からか地面にへたり込んでいるようで先生たちが出口から離れるように声をかけている。

もうすぐ出口のところで通路の壁が崩れてゴブリンナイトが5体飛び出して来た。

とっさのことにみんな反応できていない!!


だがしんがりは高ランクパーティー『灰蝙蝠』である。


「鎌鼬!うん。」


サダさんが風魔法で2体の首を切り落とし、あと3体!

刀を持ったサブリーダーのハジメさんがゴブリンナイトの剣を受け止めて弾き飛ばし、返す刀で首を落とす。

弓使いのユウキさんが出口から矢を放って1体の延髄を貫く。

怪力のシドさんが両手で持った大槌をゴブリンの胴体を叩き体勢を崩したゴブリンの頭を槍使いのユキさんが突き刺す。

5体のゴブリンナイトが呆気なく光る粒子に変わる。


ガタン!!ゴゴゴゴ……

ゴブリンの相手をするために前に出ていたサダさん以外も面々と俺たちの班の間に壁ができる。


「な!!」


あと少しで脱出というところで出口が閉じてしまった。

呆然としているカヤ先生。アカリ、イクミ、マフユ、サヤ、サツキの5人は何が起こったのかわかっていないようでキョロキョロとあたりを見回す。


「ストーンブレット!!うん。」


ボーリングの玉ほどのでかい石が今できた壁に激突する。

サダさんが壁を破壊しようとしたのだ。

だが石が壁にめり込んだだけで壊すこたができない。


ガガガガガガ!!!


信じられないほどの縦揺れに思わず皆うずくまると地面が傾く。

さながら滑り台のように滑り落ちていく。


「うわーーーーーーーー」

「ひゃーーーーーーーー」

「キャーーーーーーーー」

「アァーーーーーーーー」

「んーーーーーーーーー」

「ファーーーーーーーー」


いくつもの悲鳴とともに勢いよく滑り落ちていく。

ものすごいスピードで仄暗い石壁が過ぎ去っていく。

20秒か30秒がたったころ急にふわっと浮遊感打することに気づく。

あれ?地面がない!?


とっさに振り向くと壁に穴が空いており、そこから投げ出されたようだ。

死ぬ!!

恐怖とともに身体中の毛がざわめく。


ザパーン!!!

ゴポポポポ


うぐ!……水?

どうやら水の中に落ちたらしい。

服をきたまま投げ出されて体が重い。

前世では泳ぎが得意な方だったので混乱してはいるが周りを見る余裕はある。

カヤ先生は泳げるようですでにイクミとサヤを抱えて水面に向かって泳ぎ始めている。

サダさんもマフユとサツキを抱えて浮上していく。

アカリは俺の服を掴んで口から空気を吐き出している。

重かったのは服のせいだけで内容だ。

アカリを抱えて俺も水面めがけて泳ぐ。


「プハァ!!!」

「ゲホ!ゴホゴホ」


どうやら皆無事のようではあるが、俺以外の子供たちは水を飲んでしまったらしく苦しそうにしている。

落ちて来た穴と反対側にはい上げれそうな陸地があったのでまずそこから上陸する。

俺以外の子供は皆上陸するとすぐに気を失った。


「はぁはぁはぁ……どうやら助かったようですね。」


カヤ先生が子供達を地面に寝かせながら言う。


「はぁはぁ…ん……。助かってたら外に出てるわな。うん。」


サダさんの言葉に顔を青くして俯くカヤ先生。

サダさん……ちょっとデリカシーが…


「はぁはぁ、まぁ生きてるんだから……落ちたのが水で、んく…はぁ、しかも、魔物がいなかってよかったよ。」


「そ、そうよねムツキくん!!」


俯く顔を上げて俺にそう声をかけてくるカヤ先生。

サダさんは濡れた服を脱いで腰についてるポーチのようなカバンをガサガサと漁っている。

サダさんは高ランク冒険者だけあってあのポーチも魔道具みたいだ。多分マジックポーチと言われるものだろう。

そこからアルコールランプのようなものを取り出しゴブリンのクズ魔石をランプの中に彫り込むと魔石が燃え始めた。


「風邪ひくから火に当たれ。うん。」


おぉ結構あったかい!!

へぇ〜クズ魔石を燃やす魔道具かぁ。今放り込んだ魔石は色からして水の魔石だったんだけど、どの属性でも燃えるって便利なランプだな。


「脱出しないといけないが、俺1人でここにいる全員は守れんぞ。うん。」


「私は武術は苦手ですが、水魔法ならある程度使えます。攻撃もできるので少しなら……戦えます。」


「俺は武器なら作れるよ!!」


「それは知ってる。うん。学校の先生ならあるCランクの冒険者相当と思っていいのか?うん。」


「ええ。水魔法単体ならそれぐらいです。」


「え!カヤ先生そんなに強いの?」


「なんだ知らないのか?うん。学校の教師の条件は冒険者Cランクに一度ならないといけないんだぞ。うん。」


「なにそれ?知らないよ!!」


「学校では冒険者育成の授業があるからダンジョン内に生徒と一緒に入ることがあるのは知ってるわよね?一緒に入る先生が生徒を守れないと意味がないからある程度の強さが必要になるから冒険者のCランクってのが一番わかりやすい目安なのよ。」


なに!そんな事実が!?

確かに生徒を守れない人が一緒にダンジョンに入るのって危ないな。

ん?てことは元冒険者だぞ!って言いながら剣術とか教えてくれてたけど全員元冒険者じゃねーか!

なんだよ!なんか騙された気分だ。いや、先生たちは騙してないけど……

え〜っと冒険者のランクはGから始まるかだろ?

で持ってEとFが低ランクでDランクになると一人前か……でCとDの間に壁があるんだって話だよな。

順当にクエストをかなせばDまで上がるが、そこからCってのが難しいってことだった。

Cランクは高ランク一歩手前で経験を積めばBランクになる人がほとんどだとも聞いたことがある。

Cランク冒険者とBランク冒険者の間にはそこまで大きな隔たりはないってのをこの間サダさんから聞いてる。

経験とか信頼の差とか言ってたな。

てことはめっちゃ強くね?

いやでも子供を守りながらダンジョン見学させるんだからそれぐらい必要か?

うわぁ見た目によらない!!てかこの若さでそのランクなの??


「まぁCランクはFランクに上がった後に昇級試験さえ受狩れば一束飛ばしでランク上げができるな。うん。実戦経験の少ない冒険者のことだな。うん。」


あぁなるほど……Gランクで冒険者のイロハを覚えてFランクになるとある程度の実力者はとっとと上に上がってしまえということか。

しばらくして俺はお腹が減ってきたのでご飯を作ることにした。


実は俺もマジックバックを持っている。魔力依存で収納量の変わるものと、200Kgぐらい入るものの二つだ。魔力依存の方は腰から吊るせる巾着袋のようなもので魔力を登録してる人にしか使えないかなり便利なものだ。先日サダさんがこのダンジョンで見つけて入学祝いでくれたのだ。かなりのレア物で収納してある物の時間も停止するほどの逸品だが固有スキル持ちにしか使えないというのが鑑定で判明したためせっかくだからとくれたのだ。

もう一方は両親からの入学祝いでこれはそんなに高いものではないし時間経過するタイプの収納だ。

300Kgまでのマジックバックなら錬金術で作れるので普通に売ってるから一般でも普及している。

聖属性と闇属性の魔石を使って錬成すれば作ることができるのだが、一般で普及しているのはだいたい30Kgのものが多い。ちなみに錬丹術でも作れるのだが、製作者と使用者の体液が必要なので一回しか成功・・していない。体液は唾液を使ったのだが成功率が著しく低かったのだ。何十回とやって一回しか成功していない。

成功した後なら成功率の高い方法がなんとなく頭に浮かぶのだが、唾液で1割以下、血液で成功率3割、男性・女性特有の分泌液が8割……これ使えねぇと思ったね。いやほんと。


余談が過ぎたな。サダさんからもらったマジックバックにはお昼ご飯と何かあった時に食べる非常食おやつが入っている。鍼灸の練習で受けてくれた人が食べ物をくれることがよくあるのでこのマジックバックに全部入れてるのだ。

パンとハム、トマトで人数分のサンドイッチを作ると気を失っていたみんなも食べ物の匂いを感じたのか起きてくる。

みんなでお腹を満たしてダンジョン脱出のために打ち合わせを始めることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ