表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/62

学校の予習

領主様の腰痛治療をした夜、領主様の使いだという初老の男性だやって来た。


「領主様の使いで参りました。フジミヤと申します。本日は領主様を治療していただき御礼申し上げます。この度こちらに伺ったのは『腰鳴神』を患っていたのを内密にしていただきたいというお願いです。帰り際も申し上げた通りこの病を患っていたと知られると少々厄介でして……ただ領主様が治療師を呼ぶ事態になったことも知られてしまっています……」


「そうですか、どうしましょう??」


母さんとフジミヤさんが悩んでいる。

何に悩んでるのかはなんとなくわかったので口を出す。


「馬車で長時間座っていたので腰が痛くなったんでしょ??ぎっくり腰じゃなかったの??」


俺がそういうとハッとするフジミヤさん。


「確かに長距離移動は腰を痛めることも……ぎっくり腰…ふむ、いいですね。そうしましょうか。」


「え?どういう??」


「息子さんの言った通りですよ、。たまたま視察で訪れた薬師の息子さんが珍しい治療スキルを持っていたので領主様直々に治療を拝見したく長距離移動で痛めた腰、この街では『ぎっくり腰』という俗称で知られている腰の症状を治療していただいた。我々は自ら受けたいと申し出た豪胆な領主様に慌ててしまったというだけのこと。」


「そうだろ?ぼく??」


なんかこの爺さんの視線が怖い。いいもの見つけた!!みたいな?

背筋がぞわっとする。気のせいだよな??

ひたいに汗をかきながらとりあえず首をかしげる。


「ふむ…、まぁいいでしょう。ではそういうことでお願い致します。何かございましたら領主の館へご連絡くだされば対応いたしますので。」


深々とお辞儀をして帰って行ったフジミヤさんの背中を見つめる。

不思議と氣の流れを感じない。隠密スキルを使った時の自分と似た感覚がある。

一体あの爺さんは何者だったのだろう??



翌朝、視察の終わった領主様一団は街を出て行った。


昨日のおじさんがちょっと気になって出ていくところを眺めていると、領主様の馬車の中にちらっと見えた。

結構お偉いさんのような感じだ。

変な爺さんに目をつけられた気もするが、自分で蒔いた種なので仕方ない。


領主様の視察で少し街も活気が出ている気がする。

ダンジョンの方も冒険者が増えて深い層の探索が進んでいると聞いている。

浅い層のマップもかなりできているようで、三階層まではほぼ全てのマッピングが終わっているそうだ。

また、この辺は山が近い地形なのが原因なのか上に向かう道と下に向かう道がある。ちょっと変わったダンジョンの構成になっている。上の道が正解なのか下の道が正解なのかそれとも両方攻略しないといけないのかわかっていない新しいタイプのダンジョンということもあり、人気も上がってきているのだとか。


なぜそんな話を今するのかというと、もうすぐ通うことになる学校では冒険者を育成することも目的としていて、入学一年目から一階層の安全なところでダンジョンについて学ぶ授業があるのだという。

他の国ではあまり冒険者の育成は積極的ではないという。なぜならは冒険者はどの国にも属していないことになっているから優秀な人材を育成しても他国に渡られることが多いからだ。

その点この国は島国であるため簡単に他国へと渡ることができず、豊かなこの国を知っている冒険者は定期的に国に戻ってくるので痛くもかゆくもないらしい。ダンジョン産の食品を輸出している豊かな国を作るために多くの冒険者必要になるのだろうし、好循環になっているのかもしれない。


ダンジョンでの授業など危ないだろうと俺は思うのだが、この街のダンジョンの一階層の初めの区画にだいたい300メートル四方の空間があり、そこは魔物や罠が存在せず、ダンジョン内にある転移石という石へと繋がる大きな石碑が中央にあるだけなのだそうだ。そこで授業をすると聞いているので危険はほとんどないらしい。

なんでもダンジョンに入ると身体能力が向上しやすくなるので他の街でも一階層に入って出るという作業はしているのだという。

ここは安全地帯があるのでダンジョン内での授業をするらしいが、体が出来上がるまでは長時間入ってると体調を崩すので授業以外では入れてくれないそうだ。


詳しくは入学してから学ぶのだが、ダンジョンの種類によって転移できるものとできないものがあるとかないとか。

冒険者のお客さんが教えてくれるので入学前から予習はバッチリ!!


あとは商人や職人を育成する授業もあって10歳まではそれらを満遍なく学ぶのがソルマートでの義務教育課程である。10歳になると冒険者ギルドに登録できるようになるなでそこからそれぞれ専攻を決めて行くのだが、一つに絞る人と、いくつかの職に興味のあるものは複数の授業を取る。これは大学とかの授業選択のような感じだな。

だいたいは冒険者一択のものと複数の職業を選択するものに別れるらしい。子供だから選びきれないので仕方ないだろう。

ここまで聞くとどんだけデカイ学校なのかと思うだろうが、職業に関する授業はその街の工房に見学に行くとか奉公に行くようなもので、職業体験のような形をとっている。13歳になる頃にはほとんど一つに絞って仕事を始めているので、15歳まで学校で授業を受けるものは研究職や文官などの職に就きたいものだけだろう。


冒険者を選んだものなど一年間ノウハウを叩き込まれたあとは学校にこないことはざらにあるそうだ。

日本の教育を考えると詰め込みすぎのように感じるが、読み書き計算ができれば上出来と言われる世界では一般教養程度なら十分学ぶことはできるという寸法だ。

科学もない、魔法も使えるかどうか個人差がある。歴史の授業は宗教学と同じくくり。案外学ぶことって少ない。


学校について何をするかもだいたい知ってもらえてだろうか??

大して面白いこともないだろうが、友達を作る場だと思えばどうだろう?

いいんじゃないかな??

どんどん移住者も増えているようだし俺の知らない子供もいるはずだ。

学校に多少の期待を感じながら入学の日を迎える。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ