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領主がやってきた

治療技術の向上に錬丹術での鍼の作成を決意し練習する日々。

たまにアカリと遊んで、アカリの剣術や槍術の稽古に付き合う。平和だ。

季節はそろそろ春になろうかというところか。

俺は5歳になり、来週から学校に通うことになる。


鍼の方は作ることに成功している。

細さは0.2ミリで長さは40ミリの三番鍼さんばんしんと呼ばれる鍼灸で一番多く使われているであろう鍼だ。

材質は鉄のものと幾つかの金属を混ぜ合わせたなんちゃってステンレス。

鉄に魔力と氣を練ってお遊びで作った魔鋼鉄。これは治療に使う鍼には全く適していない。

なんせ堅すぎて0.2ミリでも釘みたいだ。父さんに見せたところ、これは特殊な金属で魔力に対する親和性が良く『エンチャント』の威力と持続時間が大幅に上がるという。硬さも鋼と同等の硬さがあってこれを作れる錬金術師は王宮専属になることもできるのだそうだ。

王宮に魔鋼鉄を作れる錬金術師が3人いると言われた。この国全体では10人ほどいるというが多いのか少ないのかわからんが父の師匠がその一人だという。これは秘密にしないといけないことだということはわかった。


他にも銀鍼を作ろうかと思って魔鋼鉄同様に魔力と氣を込めてみたら聖銀、金に込めたら聖金というのができた。

これは父さんにも言ってない。なんかよくわからんがやばそうな気がするんだ。

硬いがしなりがあるので鍼に申し分ないのだが……自衛手段が確保できるまで封印する予定だ。

銀と金はなんで聖なるものになったのか不思議だ。

ミスリルとかになると思ったんだが……父さんからは魔力の籠った銀はミスリルに変わると聞いていたのにおかしいな。


とまぁ色々な材質の鍼は作れるようになったし錬丹術を使えば衛生面も問題ない…と思う。

欲を言えば円皮鍼、皮内鍼など欲しい鍼はまだあるのだが今のところは我慢しよう。


ちょっとした事件もないではなかったが平凡な日々を送りながら修行中だ。

まだ回復魔法や回復薬に勝ることはできていない。

ただ腰痛とかなら鍼灸の方が効果があるんじゃないかと予想している。

そんなある日この町に領主様が視察に来ることを知った。


今日は領主様が町にくる日だ。

そういえばここの領の名前をまだ言ってなかったか『ゲッコウ領』これがこのあたりの領の名前だ。

領主が来ると聞くまで興味がなくって調べていなかったのだ。領主が来るからと色々両親から教わった。

この町にはアジア系の人種のような人が多いのだが元は領の名前と同じ国があったのだが全て移民なんだそうだ。なんでもこの国は島国で、他の大陸から渡ってきたのは歴史書に書いているのだが、渡ってきた理由はなぜか書いていなかった。歴史書ってかなり雑なんだな。

戦争があって統合したのだが実は買ったのはゲッコウ国が勝っていたとも書いていた。大きな島は統治しきれないとかで統合させてしまったそうだ。


話が脱線してきた。


今は領主様が来るとあってアカリと一緒に門前広場で領主が馬車で通るところを眺めている。

馬車から手を振る領主様はこの町の人と同じでアジア系の顔立ちをしている。

堀が浅く漆黒の髪、目は一重で少しぼーっとしたような優しい印象がある。

貴族だと言われたのだが、アジア顏の貴族とはなんとも違和感がある。

視察は幾つかの施設ど冒険者ギルドを見て回るだけなので、ほとんど観光みたいなものじゃないか??

前世の政治家たちの視察は半分観光のようなものだと思っていたが、この世界ではどのなのだろう。この町に面白いものはないしやっぱり領地運営の視察で間違いないのかもしれない。


馬車も通り過ぎ、アカリと付き添いで来てくれたアカリの祖母と一緒に屋台の串焼きを頬張る。

一本なんと6マール!!ってまだ通貨の説明をしたことがなかったな。

マールはこの国の通貨単位。

1マール大体10円くらいだろう。

貨幣の材質は鉄、銅、銀、金とその大きさが大小2種類ある。小さいのは丸型、大きいのは三角の形をしている。

小さい方を丸、大きい方を角と呼んでいるので、丸鉄何枚とかで表記されてることも多い。

各貨幣価値は以下の通りになっている。

丸鉄     1マール   角鉄      5マール

丸銅    10マール   角銅     50マール

丸銀   100マール   角銀   1000マール

丸金 10000マール   角金 100000マール



領主様が回る施設は正確にどことは知らないが、冒険者ギルドを視察することだけは知っている。そういえばまだ行ってみたことないんだよな、せっかくだし見てみたい気持ちがあるのでアカリ祖母におねだりしてみるか。


「お…姉さん、冒険者ギルドってどんなとこ??」


「ん?行ってみたいかい??ここはできて間もないから結構綺麗なんだよ。」


「他は汚いってこと?」


「汚いってこたぁないんだが狩りで取ってきた獣や魔物の匂いが染みついちまってるところがあるんだ。ここはダンジョンに行く奴が多いからまだそんなに匂いはしないってことさね。」


なろほど確かに狩ってきた生き物を持ち込んだら匂いがするな。

小説やゲーム知識ではわからない点だな。


「ダンジョンに行くのが多いとどうして匂いがマシなの?」


アカリも興味があるらしく会話に入ってくる。


「あぁそれはダンジョンの中ってのは不思議な空間でね。中で死んだ生き物はダンジョンに一部を残して吸収されてしまうんだ。その残る部分はその時によって違うんだがこの現象をドロップというんだ。人間の場合は死んじまうと装備を含めて全部ダンジョンに吸収されちまうからダンジョンってのは魔物の一種だとも考えられてたり、神様の試練で死んだものは装備もなくなるから神様に丁寧に埋葬されるんだとか言われたりしてるがどうなんだろうね??」


「なんでそんな危ないとこ行っちゃうの?」


「ドロップ品が高く売れるからかな。アカリが食べてるご飯に塩とか砂糖とか使ってるだろ?そういうのも魔物からドロップされることがあるんだよ。この国にあるダンジョンは浅い層に食材をドロップする奴が多いから特に人気だと聞いてるよ。」


会話しながら冒険者ギルドまで歩いていく。アカリは今質問ブームのようで「〜の?」と全て疑問系なんだがもう口癖になり掛けている。

冒険者ギルドは草原側にある西城門のすぐそばに建てられていて、帰ってきてすぐに換金できるように配慮されているようだ。


冒険者ギルドに着くと中の様子を伺う。もうすぐお昼ということもあり、人はそんなにいない。

イメージしていたのはガヤガヤとガラの悪そうな人がいる感じだが、人がいないのでちょっと期待外れだった。

よく考えればうちに薬を買いに来る冒険者は気さくでいい人ばかりなのでガラの悪い奴は少ないのかもしれないと今更思う。

ギルドの大きさは体育館ほどだが、ほとんど倉庫なのか人が出入りするところは小さな役所みたいな作りをしている。

一通り見て回って家に帰るとさっき領主様が乗っていた馬車がうちの店に止まっている。


自慢じゃないが町の中では有名な錬金術と薬を売ってる店なので視察に来てもおかしくない。

ちなみにうちの店名は錬金製品と薬を売っている『道具屋サワダ』という至って平凡な名前だ。

ちょっと驚きはしたが、店に入るとやはり視察中のようで両親が売り物の説明をしているところだった。


説明も終わって帰っていく領主様。

思ってたよりもまともな視察だったようだ。少なくとも領民に無茶苦茶する人ではないだろう。

領主様が帰った後の両親は案内に疲れてぐったりしていた。


「お疲れ様」


そうねぎらいながら鍼で疲れを取ってあげる。

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