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艾《もぐさ》と線香

昨日採ってきた蓬で早速「もぐさ作り」を始める。


鍼灸師の国家試験ではもぐさの作り方に関する問題も出ることがあるので一連の流れは知っている。

学校に通っているときは艾は買えばいいんだから、わざわざ作り方なんて学ぶ必要あるの?なんて思っていたがこんな具合に役に立つなんて夢にも思わなかった。

ありがとう国家試験!!異世界では結構役に立ってますよ!?

生産時期とか加工の過程とかはこんな時に必要なんですね!!!勉強しててよかった〜〜〜


さてさて『艾』って何??と思う方もいるので簡単な説明

もぐさとは蓬の葉の裏にある毛、毛茸もうじょう腺毛せんもうを集めて作られます。毟るの?なんて思う方もいるかもしれませんがそんなことはありません。というか毛が短いので毟れません。

もぐさはお灸に使われ熱刺激により治療や健康維持、美容などに用いられています。


艾作りを始めるとしよう。

さてまずは蓬を乾燥させます。

はい!今日は蓬を日干しにしてしゅ〜りょ〜!!!

残りの時間は追加の蓬を採りに空き地に出かける。魔法や鍼の練習も忘れない。

乾燥するまでの数日はこれの繰り返し。結構な頻度でアカリと一緒に空き地巡りをすることになりました。

二人で空き地巡りをしながら気がついたのだがアカリは俺よりも体力がある。何か武道でもしてるのかと聞いたら剣と槍の稽古をしているらしい。なんでもその『刀術』『槍術』というスキルを持っていたそうだ。刀術なのになんで剣??兄の使ってた木剣があるからそれを使ってるんだとか。3歳だし木剣を持って立つだけでも訓練になってるそうだ。槍の方も今は持ち方しかしてないそうなのでまぁそんなものなのかもしれない。


数日が過ぎ乾燥させると次の工程に移る。

乾燥したもぐさを砕くのだ。薬を作っている我が家では石臼があるので石臼を使ってゴリゴリ砕いていく。

砕いたもぐさをふるいにかけて余分な葉っぱや葉脈を取り除く。

何度もなんども繰り返すと淡黄色のふわふわとやわらかい上質艾じょうしつもぐさの完成だ。これは直接肌にするお灸の時につかう艾だ。

そして少し葉脈の混じる茶色っぽい艾は荒艾あらもぐさといい、間接的に体を温めるお灸をするときに使う艾だ。


乾燥が済んだ蓬を順次艾に変えていく。

この時もアカリが手伝ってくれた。「楽しいね!!」と笑いかけてくれるので毎日癒されてしまう。おままごとか何かだと思っているのだろう。

艾もたまってきて上質艾が1キロ、荒艾が5キロほどになった。

余分な水分をもう一度取るために今度は陰干しをしておくことにする。


さぁ完成目前!!

完成する前に荒もぐさ用に道具を作ることにする。

一つは箱灸

上下に板を張らない箱を作り、はこの中にそこから8センチほど離した位置に網を貼る。網の真ん中は少しだけへこますようにしてここに艾を載せれるようにしておく。これが箱灸!!この箱灸はお腹や腰にやると気持ちいんだ!!

冷え性の人なんかに人気だったのがいい思い出だ。

もう一つ棒灸というのを作る予定なのだが、紙の筒に詰めて棒状にするだけなので特に必要なものは紙ぐらいだ。

紙は捨てる予定だった蓬の葉脈やらを木屑と一緒に混ぜて錬丹術で作ってしまおうかと思っている。

この辺は融通がきいて便利だな!!


他にいるものは〜〜〜あ!線香がない。

直接皮膚にお灸をすえる時には線香を使って火をつけるので必要なのだ。

スギとかタブの木はあっただろうか?ちなみにこれも国家試験に出てくる内容なので勉強している。

詳しい作り方は知らないが錬丹術でなんとかなるだろう。

実は『艾』も錬丹術でなんとか作れたのだが、せっかく作り方を知っていたので手作りしてみたのだ。手作りと錬丹術製でどちらの方が効果があるのかとか調べてみたかったという理由もある。線香は手作りの必要性を感じないので錬丹術をフル活用する。


スギは葉っぱでタブは樹皮と葉っぱだったか??

記憶の片隅にある知識を引き出しながら両親におねだりすると、アカリの家は木材加工をしてるから行ってもらってきなさいと言われた。

アカリと一緒にアカリの家に行き材料をもらえるか聞いてみる。この近くの山には杉の木は生えてないからないと言われたが、タブの木はあるそうで樹皮と葉っぱをもらうことができた。

何に使うのか聞かれたので線香を作ることを話したら「貴族の香木こうぼくだろ?そんなのタブから作れるのか?」なんて聞かれた。

香木と線香は違うので何を言われてるのかわからなかったが、線香やお香をまとめて香木と言っていたみたいだ。お香は貴族の嗜好品で香木からしか作れないと思われているそうだ。

どんな木からでも作るだけなら可能だと思うのだが……試した人はいないのだろうか?

アカリの父さんからできたら教えてくれと言われたので軽く了承したがどうなのだろうか??

せっかくだから今工房内にある木の樹皮も色々もらって帰ることにする。

桜、りんご、松、ヒノキの四種類だ。


家に帰り早速作ってみたが、案外すんなり作ることができた。それぞれ出来た線香はいい匂いがする。

お灸に使うには『もぐさ』の匂いと混ざってしまうのでタブが一番良さそうだ。

一様父さんにアカリの家でのことを話してから線香を持って行くことにした。父さんにも線香の作り方は説明してあるのでアカリの父さんが製品化したいというなら父さんを通すように言って欲しいと伝言を預かった。


アカリ家につくと早速線香を見せて香りの確認をしてもらった。

「桜とりんご、ヒノキもいい香りだ、スギと松もいい。どれも商品になりそうだよ!!」

興奮気味に言うのが少々怖い。何が怖いってスキンヘッドに鋭い目、ごつい筋肉で何人か殺してそうなんだもん。

いかつい割にアカリの父さんは桜とりんごがお気に入りで次点でヒノキってところのようだ。

父さんの伝言を伝えると近いうちに商品化の打ち合わせをしたいと次の休みにうちに来るそうだ。

自分の分の線香さえ確保できればどうでもいいのだが、これって噂の前代知識チートってやつなんだろうか??

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