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鍼を使う

昨日は鍼を作ってからあまりにも疲れたのですぐに眠ってしまった。


今日は昨日作った鍼を使ってみよう!!

とは言っても別に体調に問題があるわけでもないし、明確な目的というのはないので結構気楽だ。

氣が通りやすいかどうか、人に使った時に相手の氣を動かせるかどうか。大気中の氣を集めることができるか。

そのあたりの確認が主な目的である。


まずは自分に使ってみる。

氣の通り方は前世で使っていたものと遜色ないようで鍼が手になじむ。

大気中の氣はスキルのおかげで前世の時と比べて集まる感覚がわかりやすく、集めることは何ら問題はない。

氣を補うように体に入れてみると、体内の氣と異なるものが入ってきていることがはっきりとわかる。これはスキルで氣の感知ができることが原因だろう。前世と違うちょっとした不快感があるので治療をする上ではこの感覚をなくさないといけない。氣の癖というか波長みたいなのが合ってないような違和感を感じて気持ち悪い。

これは鍼を介する時に波長を変えないとダメそうだ。

ということは患者さんの体に流れる氣の波長も把握してそこに合わせる必要も出てくる。前世でもやってなかったわけではないのだが、スキルのせいで違和感がわかりやすくなっているので前世よりも繊細な氣のコントロールをしなければならないようだ。

自分の氣と大気中に漂う氣、治療するときには患者さんの氣と波長を正確に把握して変えていく必要があるのは難しいがやりがいもあって楽しそうだ。


1日この感覚に慣れる為ひたすら鍼を触り、氣の感覚を確かめる。

鍼で氣の収束と変換をしているイメージをしながらひたすらイメージトレーニングだ。


夜になると父さんにお願いして鍼の練習に付き合ってもらう。

これは他者の氣をどれだけスムーズに流せるのか、補えるか、外に散らせるかの確認と、体調をどれだけ把握できるのかを調べるためだ。

鍼灸術というスキルは人体に影響を与えるだろうという両親の予測もあってすんなり練習に付き合ってくれた。

仕事で疲れた体は氣が滞って流れ辛くなっていたり、氣が少なくなっていたりしていい練習になる。

それからしばらくの間は魔法などの練習を午前中に鍼の練習を午後にする生活がしばらく続いた。



一ヶ月ほどが過ぎた頃には鍼を使う感覚にも慣れて治療とまではまだ呼べないものの疲労回復程度の鍼を使えるようになっていた。

この時期になるとお店のお客さんたちにも鍼で疲労回復の練習をさせてもらえるようになってきたのでだんだん人との関わりも増えてき始めた。

はじめは話すのに緊張していたがどんどんと慣れて鍼の練習をさせてもらえたのだ。スキルの詳しいことは秘密だが、鍼灸術というスキルを持っていることは隠していない。治療系統の固有スキルで現在どの程度のことができるのか調査していることを説明してあるので、寛容な人たちは練習に付き合ってくれるのだ。

そこで練習している中で興味深い話を聞いた。


この国にも四季があり今は夏の始まりぐらいになる。そしてこの季節になると近くの山で山菜採りが始まるのだという。そこで思い出したのが蓬だ。

薬の材料として蓬を使うことがほとんどないためにうちでは扱っていない。薬草の辞典でも乗っているのは見たことがない。あるのかないのかわからなかったのだが、山菜を採りに行く人なら知っているかもしれないと聞いてみた。

すると「日当たりのいい場所だとどこでも生えてるよ。好みもあるけどあれも美味しいよねぇ。さすが薬師のお子さんだこと!!体にいいものは知ってるのね。」と返ってきた。

嘘ん!!空き地に生えてるやつって蓬だというのか!あれブタクサじゃないの??


普通に生えてるとか……そういえば前世でも蓬が自生してるとこってあると聞いたことがある。

実際には見たことがないと思ってたけどブタクサだと思ってたのが蓬だったのかもしれない。

なんで薬草の辞典に載ってないんだ?この疑問には母さんが答えてくれた。

うちの書斎にある薬草辞典は魔法薬を作るために必要な薬草しか載ってないんだとか。普通の薬草辞典も家にあるのだが、よく使うので薬室に置きっぱなしにしているから俺は見たことがないとのことだ。

頻繁に使う本は薬室に置きっぱなしにして、週に数回しか見ることのないものは書斎の本棚にしまうことで薬室の作業スペースを確保していると言われれば何の反論もできなかった。


今度その本も読ましてもらう約束を母さんとし、明日一緒に蓬採りに行く約束を近所のおば……は!なんか殺気が!!

すごい寒気もする。

すごい目が笑ってない、笑ってないよ!!

え〜っと、ゴホン!

改めまして、近所のお姉さんと町の外の草原で蓬採りというか野草採りをする約束を取り付けた。


オネエサンの孫も一緒に来るのだそうだが、孫……オネエサン………年齢はまだ40ではないと言っていた。

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