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リンゴ太郎外伝  作者: oyj
3/3

最後の危険(後編)

世界中に降り注ぐ炎の雨・ラストハザード。

被害は大きくなっていくばかりでした。

世界一の巨大都市・ギンギンシティにも、遂にそれは襲いかかりました。


今、この街の神であるランディは留守中でした。

市民は恐怖に怯えていました。

そこに、一人の少年が現れました。

チン太郎です。


「キャー!」

女性を襲う炎。

「オラァッ!」

それを消し去るチン太郎。

「あ、ありがとう・・・キャー!」

再び悲鳴を上げる女性。

「どうした?」

戸惑うチン太郎。

「存在がセクハラー!」

逃げる女性。

「え!?」

社会の窓もパンツの窓も全開のチン太郎。

「・・・」

もう、メチャクチャでした。


「これじゃ英雄とは程遠いな・・・くそ」

炎を一つずつ消滅させて、チン太郎は言いました。

やはり彼には英雄の素質があるようでした。

世界中でラストハザードに対抗できる者は、金太郎、浦島太郎、ランディくらいなものでした。


「これは・・・」

そこに、またも英雄の素質を持つ者が現れました。

「どういう事だ?ランディがいないこの街が、無事ではないか」

この男は、まさに真の英雄といった所。

一度心が破壊され悪に染まりはしましたが、世界を二度も救った者です。

そう、彼こそは誰もが知る永遠のヒーロー・・・桃太郎です!


「おいおい随分と差のある紹介じゃないかっ!?」

どこかから馬鹿馬のそんな声が聞こえてきそうでした。


「む?」

桃太郎は、たった一人で炎と戦う少年を見付けました。

「なるほど、君のおかげか」

「ん?何だあんたは」

チン太郎は桃太郎の正体を知らず、疑い構えました。


それもそのはず。

今の桃太郎の格好は、ただの農民でしかありませんでした。

旅を終えた彼は、絶影と共に幾度か悪を倒したりもしましたが、普段は民達の畑仕事を手伝って生きてきたのです。


そこに、また新たなラストハザードが降り注ぎました。

チン太郎は炎に向かって構えましたが、その必要はありませんでした。

「ウォルフよ、私に力を・・・『神風』!」

犬型の風によって、全ての炎は一瞬で消え去りました。

格好は農民でも、その力は全く衰えてはいませんでした。


「あんた・・・何者だ?」

「私の名は、桃太郎という」

チン太郎は全てを理解しました。

「つまり絶影って奴のおかげで・・・」

そして全てを話しました。

「なるほどな、お姫様はプリンが好きなのか・・・」

桃太郎は全く話を聞いていませんでした。


もう一度話したチン太郎のストレスは、中々のものでした。

「よしよくわかった。そろそろ奴も来る頃だろう・・・」

そこに、一台の高級車が現れました。

「いや〜さすが桃太郎!オイラの予想通り、街を守ってくれてたんだな!」

「いや、この街を守ったのはこの少年・チン太郎だ」

「え、そーなのか?ありがとな、チン太郎!」

馬とはいえ他者に感謝される事はチン太郎には珍しく、彼は喜びを覚えていました。


「ところでランディ・・・」

「ん?」

「自分が管理している街を、危険にさらすなッ!」

「アギャーッ!」

桃太郎はランディを一刀両断し、言いました。

「よしウォーミングアップは済んだ・・・行くぞ」

「・・・あ、ああ」


三人は、ある場所へと出発しました。



「おい桃太郎サン、こっちは冥界門じゃないぞ?」

「力ある者は、一人でも多く協力した方が良い」

「どういう事だ?」

「かつての勇者は、もう一人いるのさ」

ランディは言いました。

「多少、いやかなり性格に難がある奴だが・・・頼りにはなるぜ」

そう言った瞬間、ランディは何者かに一刀両断された気分になりました。


「チン太郎、君はどうして冥界門なんかにいたんだ?」

「俺は、英雄になりたかったんだ・・・」

桃太郎を尊敬するチン太郎は、自分の夢と、いきさつを語りました。

「・・・なるほどな」

高級車は、ある家へと辿り着きます。

「我々がこれから会う男は、まさに英雄だ。だがそれがどんなものか、よくわかるよ」


「久しぶりだな。ばあさん、じいさん、ペルシャ。」

「おぉ、桃太郎!ランディも一緒か」

「にゃー」

「ここは無事なのかい?」

「ここにはまだラストハザードは降っておらんよ」

「そうか・・・で」

「アイツ、か」

全員が暗い顔をしました。


かつての勇者・・・彼は旅を終えた後タウンワークを見て、アルバイトを始めました。

しかしどのバイトをしても長く続かず、彼はいじけて三度ヒキコモリになってしまいました。

しかも今度は長く・・・彼は人に、三年寝太郎とまで呼ばれるようになったのでした。

そう、彼の名は――


「リンゴ太郎!」

部屋の前で、桃太郎・ランディ・太郎おじいさん・おばあさんは声を揃えて呼びました。

が、返事はありません。

桃太郎は言いました。

「わかっただろう、チン太郎。英雄だからといって、幸せになれる訳でもない。確かに世界を救うのは素晴らしい事だが、そこからどう生きるかは自分次第なんだ」

「・・・なるほど」

チン太郎は、絶影と桃太郎に会って、少しずつ考えが変わってきました。


「人には皆、それぞれできる事があるのだ。英雄になるのも生き方の一つだが、一番合った事をしていくのが良いのではないかな」

桃太郎はそう言って、刀『真月』を抜きました。

「『満月』!」

「待ってくれ!」

チン太郎は扉を破壊しようとする桃太郎を止めて、叫びました。


「おいリンゴ太郎サンよ!俺はずっと、アンタのような英雄になりたかったんだ!俺を・・・ガッカリさせんじゃねえよ!」

すると中から、声が聞こえました。

「俺にケンカ売ってんのか、テメー?」

その声はまさにリンゴ太郎でした。

「リンゴ太郎が・・・喋った」

おじいさんとおばあさんは感動しました。


「おらー!誰じゃい俺にケンカ売ってんのは!」

単純MAX、性格は一言で言えば最悪、かつての勇者最後の一人、リンゴ太郎が出てきました!

「テメーかバ家畜!」

「アギャーッ!」

刀『残月』でランディを一刀両断したリンゴ太郎は、言いました。

「・・・で?俺を怒らせてまで出てこさせたんだ。何かあったんだろ」



桃太郎、ランディ、チン太郎、リンゴ太郎の四人を乗せた高級車は、冥界門へと向かいます。

桃太郎は全てをリンゴ太郎に話しました。

リンゴ太郎は久々に外に出て、面倒臭そうでした。


そして遂に、最終決戦の時は来ました。

「『朱雀炎舞』!」

桃太郎のキジ型の炎によって氷が溶け、絶影は復活しました。

「おう、皆揃ったんだな!」

チン太郎は思いました。

仲間を信じ、己の身を凍らせてまで自分を逃がしてくれた。

そしてこれから力を合わせ、世界の為に戦おうとしている男・絶影。

この男もまた、尊敬するべき人物であると。


「よっしゃー!久々に、暴れるぜッ!」

リンゴ太郎は悪魔リンゴタリオンに、桃太郎は悪魔モモタロイザーへとそれぞれ変身しました。

ランディは角と羽を生やし、絶影は氷の刃を作り出し、チン太郎は構えました。


「ワシも忘れず使ってくれー!」

どこからかこんな声が聞こえたモモタロイザーは、TSUNAMIを繰り出しました。

猿型の大津波は、ラストハザード本体を解放しました。

「破ッ!」

桃太郎の衝撃波は、ラストハザードに穴を開けます。

ランディは飛び立ち、角でラストハザードを切り裂いていきます。

絶影とチン太郎は、交互に攻撃して取り込まれずに少しずつダメージを与える事に成功しました。

「・・・最初から協力すりゃあ、良かったのかもな」

絶影は笑いました。

チン太郎も、笑っていました。


「主人公は・・・俺じゃーっ!」

リンゴタリオンは大爆発(ビッグバン)を起こし、ラストハザードは遂に消滅してしまいました。

「あ、あれ・・・?もう終わり?」

「案外大した事なかったなー」

「まぁ良いではないか。平和が一番だ」

「暴れ足りねーぞ!」



五人は、またそれぞれの道へと戻ります。

リンゴ太郎は、再びタウンワークでバイト探しに。

ランディは、作家としての忙しい日々に。

桃太郎は、農民の手伝いに。

絶影は、また冥界門の見張りに。


そしてチン太郎は、旅を続ける事にしました。

しかしそれは悪を探すものではなく、困っている人々を助ける為のものでした。

この後チン太郎は、自分の進むべき道を見付け、新たな世代の英雄になった・・・のかもしれません。


こうして、最後の物語は幕を閉じました。

「俺の出番少なすぎじゃー!」

一人不満そうな主人公を残して・・・




『リンゴ太郎』 完

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