最後の危険(前編)
昔々、世界は鬼・魔王・悪魔などによって、幾度も支配されていました。
しかしその度に勇者が現れ、世界は救われてきたのでした。
あれから数年・・・再び物語が、幕を開けます。
この平和な世界で、今一人の少年が旅をしていました。
少年の名は、チン太郎。
名前は下ネタですが、強大な力を生まれ持った者でした。
チン太郎は昔から英雄に憧れ、今度世界に悪者が現れた時は、必ず自分が倒してやろうと考えていました。
しかし彼は歪んだ心を持っていました。
「この世界は平和すぎる・・・だが必ず悪者はいるはずだ!そうだ、向こうから現れないならば、こちらから滅しに行ってやる!」
そして彼は世界の悪を探して、旅をしてきたのでした。
邪悪の根源、大悪魔ヘルハザード。
かつてそれを封じ込め、今なお封じ続ける冥界門の冷凍ウンコ。
チン太郎はそこに悪の臭いを嗅ぎ付け、やって来ました。
空中要塞ONIGASHIMAと、飛空挺ビュンビュン丸の墜落地です。
「これが伝説の巨大ウンコか・・・」
チン太郎は巨大ウンコに触れようとしましたが、ある男に呼び止められました。
「おいてめぇ!そこで何してやがる?」
ある男は、巨大ウンコを冷凍した張本人。
かつて世界を救った勇者の一人、絶影そのものでした。
「てめー怪しい奴だな?ここはな、一般人は立ち入り禁止の危ねぇ所なんだよ。帰れ小僧」
口の悪い絶影は、チン太郎の気を悪くしてしまいました。
「・・・俺が、一般人?フン、俺は世界一強い。英雄になる男だ!少々年上だからって、偉そうにするなよなッ」
チン太郎の態度もまた、絶影の気を悪くしたのでした。
「クソ小僧が・・・調子に乗りやがって」
絶影は両手に氷の刃を作り、チン太郎もまた構えました。
そこに、大きな地震が起こりました。
「うおっ」
臨戦態勢を解いた二人の前に、黒く大きな炎がありました。
「何だ・・・これは?」
混乱するチン太郎に語りかけるように、絶影は言いました。
「ヘルハザード・・・」
「え?」
黒い炎は、ヘルハザードの最終形態に瓜二つでした。
「俺はかつてこいつを封じ込め、そしてそれが復活しないように定期的に見張りに来てたんだ・・・今日もそうだった」
「で、遂にそいつが復活したって訳か?ははは、面白い。安心しろよ!この俺様がぶっ倒してやる!」
チン太郎は再び構えました。
「バカ、やめろ!」
絶影の叫びも虚しく、チン太郎は突進していきました。
「オラァッ!」
チン太郎の右拳は黒い炎に命中しましたが、ダメージを与える事はありませんでした。
それどころか彼の右腕は、黒い炎に取り込まれていくようでした。
「う、うわああっ」
「『氷機関銃』!」
絶影は氷の玉を乱射し、チン太郎を黒い炎から押し出しました。
「こいつ、本当にヘルハザードなのか?」
黒い炎に意志はなさそうですが、近付くものは取り込んで破壊するようでした。
「クッ・・・畜生!」
チン太郎の右腕は傷だらけになっていました。
彼のプライドもまた、傷が付いてしまいました。
「おい小僧、てめーはどいてな」
絶影は両手を前に出し、大暴威を繰り出しました。
黒い炎は突風を受け、ゆっくりと動き出しました。
「やっ、やべぇ!あいつがヘルハザードかはわからんが、力は同等だ!世界に放つ訳にはいかん」
絶影は次々と技を繰り出します。
「『暴鬼』!『絶輪』!『金玉』!」
しかし氷の柱も効かず、氷の輪でも抑えられず、氷の玉もまた消滅しました。
「ウラァッ!」
チン太郎も左拳を突き出しましたが、また黒い炎に取り込まれかけました。
「小僧、こいつはやべー・・・まさに世界の最後の危険、『ラストハザード』ってとこだな」
絶影は己のネーミングセンスに少し酔い、決断しました。
「小僧、もうこれしかねぇ!『冷凍糞』!」
絶影は最大限の力で黒い炎・ラストハザードを凍らせます。
「くっ・・・駄目か!おい小僧!」
「な、何だ?」
「俺はしばらくこいつを抑える!お前は桃太郎って奴を探して、この現状を伝えるんだ!」
絶影に従いたくはなくとも、チン太郎はもうわかっていました。
絶影が己の数倍の力を持っている事、それでもラストハザードには敵わない事。
もうこれしか、世界を救う方法は無いという事も。
「・・・わかった!」
チン太郎は、走り出しました。
「うおおおーっ!」
絶影は限界を超えた力で、何とかラストハザードの動きを止めました。
「信じてるぜ・・・桃太郎・・・」
そして彼自身も、凍り付いてしまったのでした・・・
黒い炎、後にラストハザードと呼ばれたそれは動けなくなりましたが、小さな炎を幾つも吐き出しました。
そしてそれらは、世界各地に向けて飛んで行きました。
チン太郎はそれを見て、一番大きな炎が向かう先に走り出しました。
理由は特にありません。何となくです。
その後世界各地で、炎の雨・ラストハザードによる被害が相次ぎました。
しかし金太郎、浦島太郎などの勇者達によって、被害は何とか抑えられていました。
かつての動物村は、ヨーゼフが王となって国として、復興していました。
ですがここ動物王国にも、ラストハザードは降り注ぎました。
動物の戦士達は襲い来る炎達を必死に防ぎますが、防ぎきれません。
「おぉ、神よ・・・」
ヨーゼフ王は破滅を覚悟しましたが、そこに一台の高級車がやって来ました。
「ヨーゼフ!」
下品な面、下品な声、そして下品な臭い。
それはまさにかつての勇者の一人、馬鹿馬ランディでした!
「おいおいオイラの紹介だけひどいんじゃーないかなっ!」
「あなたはスポポビッチ王子!」
「おいおい、だからオイラは王子じゃねーってよ!」
今や世界一の作家となったランディですが、もう正義の心を忘れてはいませんでした。
「このくらいの攻撃なら・・・ふんっ!」
ランディは巨大ウンコをひねり出し、ついでに尿までかけたブレンド物を作り上げました。
「はぁっ!『玄武ハリケーン』!」
そして砂嵐を巻き起こし、それによって飛ばされたブレンドウンコは、全ての炎を消し去りました。
「おぉ、さすがは王子・・・」
ヨーゼフは涙を流して喜びました。
「良いって事よ!」
ランディの文字通りの馬鹿面が、ますますブサイクな馬鹿面になりました。
動物王国の戦士達も、次々とランディに感謝しました。
「ありがとうございました(臭かった〜)!」
「さすがは王子、いえランディ殿です(ブッサイク〜)!」
「調子に乗るなよ家畜の分際で(ランディ万歳)!」
一人本音と建前が逆の者がいました。
「しかし・・・これは何か臭うな」
「失礼ですが、王子のブレンドウンコのせいでは?」
「違う!そーじゃなくて、ラストハザードはこれで終わりじゃない気がするんだ」
「な、なるほど」
「炎、か・・・冥界門に行ってみよう。おっとその前に、アイツの所に行かなきゃな」
こうしてランディは、ある男のもとへと急ぎました。
「王子、お気を付けて!」
「ああ、またな!」
さてさて世界はどうなってしまうのでしょうか・・・
それにしても最後の物語は、真面目すぎてつまらない!