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報告書に嘘はなく


 年が明けてまもなく、『日本リサーチセンター』のアオキカズハルはまた、鳴木の集落を訪れた。




 雪が真っ白に景色を覆い、軒から下がったつららは冷ややかな関心を地面に向けている。


 地区長を先頭に、数人の代表が集まってきた。

 公会堂を使うか聞かれ、彼はいや、そのままこれを、とカバンから紙を出す。

「報告書は上に出しました」

 地区長に、A4のプリントを一枚渡した。


 彼は、目を細めてから気づいて額の眼鏡を降ろし、じっくりと最初から読み始めた。

 全て読み終えてもなお、紙から目を離さない。

 そのままの姿勢で聞いた。


「アンタは、これでいいのかいね?」


「いいも何も、書いたのは私ですから」


 ふん……と地区長は隣で心配そうにのぞいていた二人の組長と他の人々に紙を回す。


『本部統括室関係各位

  長野県上田市鳥神地区鳴木集落における特殊能力者調査についての報告


 結論:該当集落各戸および周辺地区への聞き取り調査をまとめた結果、『先見』と呼ばれる予知能力については、偶然と誤解との産物であり、未来の事象について一切予知・予見されたという確実な証拠は皆無であったことを確認した。

 また、昨年11月に行われた現地での無作為抽出30名によるテストでは、該当集落在住者全体の予知能力数値は0.85~0.92であり、全国平均である0.88と比べても何ら特別な差は見いだされなかった。

 よって、当地区での予知能力については、当調査では認められなかったと判断する。

 ※ 詳細データは別紙添付


平成九年一月五日

日本リサーチセンター調査チーム主任 青木一晴』



 大倉健治の件は、今回は『先見』とは一切関係なく処理された。

 アクシオの絡みもあったので、口頭では中尊寺支部長のみに報告はしたが、彼も

「了解、お疲れさん」

 と黙って胸に収めてくれた。


 鳴木の人たちに対しても、サンライズはあえて口にしなかった。

 しかし地区長にはそれも十分承知のようだった。


「アオキさん」

 佐伯のオヤジがためらいながら一歩前にでた。

「ホント、ミヨのことでは色々お世話になりました、ありがとうございました」

「いえ」

 サンライズは少し辺りを見回す。

 佐伯が気づいて、

「ああ、あの子は」

 と頭を掻いて言葉を継ぐ。


 ミヨはすでに友だちと遊びに出掛けたそうだ。

 今年は受験なのに……と丸顔のオヤジは苦笑していた。


 やはり彼女はどこまでもしなやかな少女だ。

 輝くような雪の白が反射して、サンライズは眩しげに目を

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