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束の間旅気分 01

 電車が駅に着くたびに、車掌が電車の前へ後ろへと小走りに往復を繰り返している。

 六つ目の駅で、一緒に乗っていたオバサンが片手を前に出した。

 見ると、その手に切符を握っている。近寄った車掌は、目にもとまらぬ速さでその切符を抜き取っていった。

 オバサンたちは電車が止まると、ゆうゆうと自分でドアを開けて、外に出て行った。

 サンライズたちはぽかんと、不思議な電車のシステムを見守っていた。

 発車ベルが鳴ると、ドアは自動的に閉まって、電車はまたゆっくりと動き出した。

 どうも降りる前に、車掌に切符を回収してもらうらしい。三人は切符を取り出した。

 しばらくして、ようやく目的の駅に着いたが、なぜか車掌が来ない。

 三人はしばらく切符を前に出していたが、ボビーがたまりかねて咳払い、それからお互い顔を見合わせて、同時に手をひっこめた。

 どうしたらいいか分からないまま、切符を持ってドアを開けて降り(開けられなかったらどうしよう、とサンライズは少し思ったが無事に開いた)、壁だけの駅をすり抜けて外に出ていった。


 枯れ草色に染まった田畑と、にび色の水を湛えるため池の間を、彼らはゆっくりと歩いていった。

 風はないが、空気が冷たい。乾いた感じではなく、まとわりつくような湿った冷たさ。歩いていても、足先から痛みのような冷気が体を徐々にむしばんでいく。

 それでもシゴトだから仕方がない、サンライズは軽く、吐息をつく。嫌になってのため息ではない、習慣のようなものだ。


 今回のような調査業務は気楽でいい。やはりこういうのが自分向きなのだなあ、とつくづく思う。

 ボビーは明らかに面白くなさそうな顔なのが、後ろを歩いていても分かったが。シヴァは何となくリードのない犬のような気楽さで、前になったり後ろになったり、時には脇になったりして勝手についてくる。


 束の間の旅人気分だった。


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