表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/48

取引の一部始終 02

 晶子がはっとしたように彼を見つめた。

「あれ、リサーチの人じゃ……」

 南には見覚えのない男だった、両手を挙げたまま、まっすぐこちらに向かってくる。

「損はない取引だ、どちらか一人来てくれ」

 運転席の男が動こうとしたのを制して、眉のない方が南の首根っこを押さえたまま、歩み寄る男のほうに一歩だけ踏み出した。

 近づいて来る男は前に集中しているようだ。南を掴んでいる奴を見つめ、おもむろに口を開いた。が、一呼吸早く晶子が叫ぶ。

「アオキさん、ケンジがソイツらに捕まってるの、助けて!」

 アオキと呼ばれた男はぎょっとしたように身をひいた。だが、南に銃を突きつけていた男も動揺したらしく、掴んでいた手が一瞬ゆるんだ。南は思い切りその男を車に突き飛ばす。

「助けてくれ」車の後方に向かって全速力で逃げ出す、が、こめかみに熱い風を感じ、倒れ伏した。撃たれる。両手で頭を抱え、できるだけ伏せる。男たちの叫び声が響き、乾いた銃声がいくつか聴こえ、奴らの一人が絶叫した。撃たれませんように、今はただ、わが身のみが可愛かった。

 ばらばらと、数人の足音が近づいてきた。

「起きて、早く」ウールの制服を着た警察官が、彼を引き起こす。

「名前を言って、はい」「南、重樹」

「ミナミ・シゲキさん? サエキ・ミヨさんはどこにいるか判る?」

 彼は力なくミラを指さした。

「じゃあ、ちょっと一緒に来てもらうね」

 ドラマで見たような逮捕のシーンとは全然違う。

 警官が脇で、彼に向って何かしゃべっていた。全ての言葉が意味不明だった。


 しかし、両脇を支えられて歩きながら、漠然と感じていた。

 自分にとっては、もうすべてが終わったのだ、と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ