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取引の一部始終 01

 助手席の男がまず黒いセダンから降りてきた。

 眉のない眼を南に据えて

「サエキ・ミヨは?」

 とそれだけ聞く。

 南は黙ってミラの方を指さした。


 男は助手席にいたショウコに目をやった。

「写真と違う」


「あれは付き添いだ」

 男はかすかに首を振った。


「ミヨはどこだ」

「後ろにいる。眠っている」

「連れて来い、ここまで」

「金は?」


 今度は男の方が黙ったまま、車の後部を指さす。

 南が一歩前に出ると、

「先に娘を連れて来い」

 冷たく言い捨てた。


 突然、ミラの助手席が開け放たれた。

「ケンちゃん!」

 飛び出してきたのは、晶子だった。

 南はぎょっとして前を遮る。

 しかし、彼女の力は思いのほか強く、彼はあっけなく振り切られて雪の残った地面に尻もちをついた。


「ケンちゃん、いるの? ケンちゃん!」

 セダンを運転していた男も車から降りてくる。

 南は焦る。

「オマエ、眠らなかったのか……」

「ケンちゃん!!」

「待ってくれ、」

 南はあわてふためいて彼女に追いついた。

「オマエ、ケンジのことは後だ、今ここにはいない、まずミヨを連れて来よう」


「どういうことだ?」

 運転手が遮った。

 話し方が先ほどの男と同じようだ。

 爬虫類を思わせる平板な口調だった。


「ケンジ? オオクラケンジが捕まったのか」


「何ですって?」

 ショウコが白い息を乱す。

「何話してるの? この人。ケンジはどこ?」


 ケンちゃん、と叫ぶ声が甲高くなった。


 そこに一斉に、サーチライトが凍った闇を切り裂いた。


「動かないで、手を挙げなさい」

 南と晶子は目をつぶり、言われた通りに手を挙げて立ちすくむ、が、男たちはさっと車の影に入り銃を構えた。


「警察だ、車に隠れた2人、抵抗を止めて武器を捨てなさい」

 ライトを消して待機していたらしい、車両は全く見えなかったが、いつの間にか警察が南たちを包囲していた。

 急に南は助手席側の男に首根っこを掴まれ、引き倒されそうになった。

 まるでライオンに狙われたインパラのようだ。


「こいつを撃つぞ」

 男が大声で警察に告げた。


「オレたちは車で出る。2時間は追いかけるな、言う通りにしないとコイツを殺すからな」


 後ろ手で後部座席のドアを開ける。

 運転手に合図をして乗り込もうとしたせつな


「待ってくれ。取引したい」


 男が一人、警察の灯すサーチライトの後ろからゆっくりと歩み出た。

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