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足取りを追って 03

 成人式の後の『飲み会』に行ったツレも、ヨシアキの情報からはっきりした。

 4人ほどいるうち、3人は上田市内にいるのが判り、そこも訪ねてみる。

 2人までは、かなり酔っぱらってしまったらしく、あまり記憶がないと言っていた。その内の一人が

「ケンちゃんは、全然飲まなかったねえ、てかウーロン茶ばっかりだったかな?」

 と言っていた。

「車で帰るからさ」

 と言ったらしい。やはりその時点では、タクシーを使う気はなかったようだ。


 もう一人のオオツキカツハルは国立東信病院に入院中だった。

 若いのに帯状疱疹にかかったのだそうだ。

 ちょうどシゴトもなかったので、点滴に通うよりは気が楽だ、とのことで一週間ばかりの予定で入っているらしかった。


 マンガの本を枕元に置いて、呑気そうな面長の顔でこちらを向いた。

「ケンジねえ、神経質だったよぉ」

 呑気な男に言われるのも少し可哀そうかも、とサンライズはあいまいに笑う。

「あの日もねえ、二次会で全然飲まなかったし」

 彼もそれは覚えていたらしい。

 しかし、前後についてはもう少し詳しいことを知っていた。


「式の後に、ロビーで誰かと話してた、オッサンだったな。背広、市役所の人かと思ったんだけどさ、最初」


 声をかけようとしたが、真剣な顔だったので後にしよう、と他のヤツらとしゃべってたんだ、オレ。

 その後、二次会の場所決まったんで歩いて行こうぜ、って誘ったらヤツは時計見てから

「うん」

 背広の男が消えた方をずっとみていたので誰あれ? と聞いたら


「東京から来たって」

 初対面だった、と。


 サンライズは眼鏡を押し上げて身を起こした。


「東京から来た、と言ったんだね?」

「あ、ああ」


 その後、二次会が何時に終わるのか、何度か気にしていたらしい。


「何の用事で男が来たのか、聞いたか? ケンジに」

「いや全然」


 カツハルは全然終わる様子もない点滴を見上げて、また目を戻した。


「とにかく、二次会の間も時間は気にしてたな」

 その男と会う約束をしていたのだろうか。

「オオツキくん、その男の顔、覚えてる?」


 どうだろ? と言うので何か写真が手に入ったらまず、ここを訪ねようと心に決めて彼は病室から出て行った。


 廊下に出てすぐ、シヴァに連絡。

「千曲川で死んでた男、身元判ったか?」

「だいたいね」

 外資系の製薬会社社員で、上田には休暇旅行中だったらしい。

「顔写真あるか」

「社員証のが取れると思うよ」

 帰ったらすぐ見たい、と伝えてホテルへと帰った。


 川で遺体となって見つかったトクマスシゲヨシは、とんでもない男だった。


 シヴァは大物を釣り上げたようだった。

 社員証の他に、彼は何枚か顔写真を用意してあった。


 サンライズは夕飯前に急いで病院に取って返し、オオツキにその写真を見せた。

「似てる、つうかこの人かも、ていう程度だけど多分」

 隠し取りらしい、斜め上からのショットをみて

「ああ、こんな目つきだったよ。そうそう」

 どことなく、イヤな感じがあって覚えていたのだと言う。


 日中会った時にさりげなく聞いて、見舞いに好物だというプリンを山ほど買っていったので、オオツキはしごく機嫌がよかった。

「何だか、悪かったねえまた来てもらって」

 いやいや、こちらの収穫の方が大きいので、と思いながら彼はまたホテルに戻る。


 戻る途中、また測り直してみる。

 スタンドのすぐ近くに行き、心を落ちつけてスキップ計をリセットし、まず左方向に出る、そして、トクマスが発見された千曲川沿いの道へと入っていく。


 だいたいの場所まで車をつけ、川原を見渡す。

 上田駅から対岸になるので、市街地が川の向こうになだらかに広がっているのだろう、それほど灯りは見えないが、こちら側よりはずいぶん明るい。

 川面は降ったりやんだりの雪でかなり白い所が多い。

 黒く光っているのが水面なのだろうか、そこもすでに凍りついてるのかも知れないが、暗くてよく判らなかった。


 そこから、距離をいったん確認し、ナビを見てからまた大倉家の方へと進む。

 山があるので大きく川の方を回り込む形になるが、電鉄の線路のあたりからは少し道も判ったので、あとは半分自動的に車を運転する。


 大倉家はすでに人が揃っているのか、車が二台増え、母屋には灯りがついていた。

 彼はここでも距離を確かめて、今度は通常ルートで市民会館へ。

 Zがあったスペースにいったん車を止めて、全行程をチェック。それからようやくホテルへの帰路についた。


 スタンドから川原沿いの現場を経由、そして大倉家までが13.2キロ、大倉家から市民会館までは前回と同じだった。

 ふたつを合わせると23.8キロを少し切る、ほぼ、計算通りだった。


 一つの可能性が見えてきた。

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