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ヨシアキ、Zを駆る 02

 駐車場に収まった時、サンライズとヨシアキは外に出て、とりあえず一服。

「キミ」買ってやったコーヒーを一つ投げてやるとヨシアキは器用に受け止めた。

「なかなかいい運転だねえ」へへ、と少し照れたように彼は鼻をかく。

 一本吸うか? と煙草を見せるとうれしそうに手を出した。

 煙を吐きながら、少し従兄弟の話になった。

「アイツさ、すげえ慎重派だったからね……ちょっとばかし、先のこと心配しすぎてさ」

 南は、先見のことを言っているらしかった。

「スケート行く、って言や氷割れるっつうし(割れなかったけどな)、友達んち行こう、って 誘ったら『あのうちのオンちゃん病気なんだろ? 怖いから行きたくねえ』っつったり(それはすぐおっ死んだ。まあ、誰が見ても元気はなかったけどね)」

「今回、家出したとは考えられない?」

「そうだなあ」

 ふう、と煙を空の高い方に吐きだして、南は考えていた。

「あのオフクロさんじゃあ、うんざりするかも。かなり過保護だったしねえ」

「過保護、か」サンライズはここで聞いてみた。

「いっとき大倉に預けられたのか? ケンジくん」

「ああ、そうそう。ケンジんち両親が離婚した時、あのオフクロが引き取ったんだ。オレはあんまり詳しく聞かなかったけど……

 うちはうちで何だかゴチャゴチャしてたからさ、まあ、それは置いといて。

 オフクロさんとケンジが大倉の家に戻ろうとしたらね、あそこのバアチャンがキツイ人でさ、今じゃ、かなり弱っちまったからそうでもないんだけどね。そん時は『子どもをそんなに無責任な母親と一緒にさせらんねえ』とか言ってケンジだけあのうちに入れて、おフクロさんを追いだしたらしい。

で、ケンジの方は苗字はカドワキのまま、名前だけは『タケハル』と読ませて」


 調査記録に誤りはなかったのだ。


「その後、高校卒業して働き出した頃か、ケンジのやつまたオフクロさんのところに出て、苗字は今度オオクラに変えてさ。

でもオフクロさんが始めた雑貨の店がうまくいかなくなって、今度は二人であの家に戻ったんだ。その頃にはばあちゃんもずいぶん大人しくなってたしね」


 その後は順調に車は進む。運転中のヨシアキに、他にも細かいことでケンジのことを聞いてみる。普段付き合うツレ、近所の同級生、よく寄る店など……とりとめなく色々聞いているうちに、大倉家に到着した。


 サンライズ、最後にまたスキップ計を確認、メモに取る。

 ヨシアキに、以前運転した時にスキップをいじっていないことを確かめて簡単な計算。

 36.2からヨシアキが運転した12.5キロを引く。23.7。

 スタンドのバインダをこっそりポケットに入れたのには、ヨシアキも気づいていなかった。

 母親にいとまを告げ、あっさりと大倉家を去る。


 ヨシアキは、簡単なシゴトで五千円手に入ったのがよほどうれしかったのか

「また何でも手伝うから、声かけてね~」

 と愛想よく手を振って帰っていった。

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