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ボビーはすでに休みたい 02

「寒いと思ったら」

 サンライズ、コートの襟をたてる。

「ちょっと早いが、切り上げるか」

 車に戻ってからふと

「この近くに三重塔があるって、見ていくか?」

 とボビーに言ってみたら

「はい」

 と即答。急にオフモードに入ったようで口調も弾んでいる。

「いいわね、デートには渋い感じだけど」


 駐車場に車を入れて、山門をくぐる。

 目の前に銀杏の巨木が、白みがかった骨のごとき枝を天に向かってぐいぐいとつき上げていた。そしてその向こうには黒々とした塔のシルエットがくっきりと冬の空を切り取っている。

「美しいなあ」

 こういうのが心に沁みるようになってきたって、やっぱり歳かなあ、と大きく息をつく。

 冷たい外気が肺いっぱいに満ちる。


 彼らは一通りぐるっと回ってから、山門を出てアプローチを下っていった。

「ねえリーダー、すぐ近くに美術館があるわよ」

 芸術大好きなボビー、彼のそでをひっぱった。

「ついでだから見ていかない?」


 その美術館はこじんまりとした作りだったが、中は静謐な空気が満ちていた。

 大正昭和の頃の日本で、才能に恵まれながら不遇な生涯をとじた、あるいは夭折した画家たちの作品を集めた美術館だった。


 最初は美術にあまり興味のなかったサンライズも、途中からくいいるように絵のひとつひとつを見つめていた。もとよりボビーは大興奮。

「この、ブルーの少年」素敵ねえ、とかぶりつきに寄る。

 見てよ彼、このナイーヴな表情、これなら作者が夢中になる気もわかるわ。彼、この少年にラヴ・レターも書いたんですって。昔の日本にも、こんなに一途な文化があったのね。ステキ、と繰り返していた。

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