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ボビーはすでに休みたい 01

 その後はまた鳴木集落に戻り、戸別訪問を再開する。


 美世は家まで車で送ろうかと言ったら、まだ用事があるからと駅で別れ、学校のある城跡の方面に向かった。

 遠慮をしたわけではなさそう、ただ目的が違うから簡単に断っただけ、という気軽さが美世にはあった。


 ボビーはふん、と鼻を鳴らしながらも

「面白いね」

 とまんざらでもなさそうな口調だった。

 サンライズも、そんな軽さは嫌いではなかった。


 シヴァはどうするの? とボビーが聞くが、夕方ホテルに戻るように言ってあるから、置いて行くつもりだった。

 ボビーはそちらにもふん、と鼻を鳴らす。

 これは、やや不満げな鼻の鳴らし方だったが軽くスルー。

 だんだんと、サンライズにも彼のクセが呑み込めつつあった。


 正直、ボビーは地味なシゴトにやや退屈さを覚えてきたようだ。

 得意の変装、といっても毎日オヤジの背広でオヤジのメイク(外国人っぽさはあまり消していないものの、ごく普通の調査員風、どこに行ってもそれ程注視されずに済んでいる)、これではストレスもたまるだろう。


「あの、リーダー」

 案の定、移動中の車中でおずおずと切り出してきた。

「おシゴトに入ったばかりで何ですけど……」

「休みとりたい?」

 すかさず言ってみる。

「困るんだよねー、忙しいのにさぁ」

 やっぱりそう言うのね、という顔をしたのでついにやにやしてしまった。

「何だ」

 ボビーが気づいたようだ。「乃木課長のマネね」

「悪いけど今日はつき合って」

 えええ? という目をしたところに、

「もう午後の部に入ってるしさ、明日はまる一日休みにして、ゆっくりしろよ」

 と言ってみる。

 ボビーはようやくほっとしたように肩から力を抜いて座席にもたれかかった。


 ボビーは、やる時はやるが、やらない時は本当に何もやらない。

 やりたくない時もやらないけれども。


「でもさ」

 急にボビーが身を起こす。

「今回本当にワタシが同行して意味があるのかしら?」


―― 特に変装が必要な場面はなさそうだし、ただの助手としてもついて歩くだけであまりシゴトしてないし。

 久々に任務の内容に疑問を持っちゃうわ。


 脇でブツブツ言い続けるボビーを、とりあえずサンライズはぬるく軽く無視し続けた。


 集落では、予定通りに三件ほど聴き取りに回った。

 どこの家庭でも似たような反応だった。

 地区長から連絡がきたので、それなりに快く迎えてくれたものの、先見についてはあまり興味ないか、興味があってもあまり信じていないか、という感触ばかりだ。


 三軒目の訪問が終わって彼らが外に出た時、ちょうど、雪が舞い始めた。

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