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しなやかな少女 01

 シヴァは昼過ぎに一緒に外に出てきたものの、すぐに「行くところがあるから」2人から離れ、駅前の広いなだらかな坂をまっすぐ上っていく。

「あのコ……」

 リーダー、どうする? とボビーがあきれたように見送っているので

「アイツ、ああ見えてマジメなんだよねえ」

 図書館に行くらしいよ、と一言だけ告げて

「日本語、使いこなせるようになるといいなあ、早く」

 遠ざかるシヴァの姿を見送りながら誰にともなくそうつぶやいた。

 けげんそうなボビーを

「さて行くか」

 と明るくうながし、指定の喫茶店へと足を向けた。


 美世の取り得は、何と言ってもその性格だ。

 強い、というにはそんなに押しが強いわけではなく、したたか、という程ずうずうしそうでもない、しかし、優柔不断というわけでもない。

 一言で表すと「しなやか」という感じか?

 今どきの女子高生はみんなこんなものなのだろうか? 

 ボビーも同じように感じているのか無表情を装いながらも、やってきたケーキにニコニコしている美世を一瞥して口もとを少しひきしめて、またメモ帳に目を落とした。


「うん、ケンジがいなくなって、そりゃ困ったケド」

 彼らが聞いていたのは最初にかけてきた電話の録音だったが、その時の途方にくれたような子どもっぽい声とはまた違った、あっけらかんとした言い方だった。

「学校まで乗せてってくれる人いないし。朝夕? そう、送り迎えだよ、あの車で」

「夕方も?」軽く送迎要員だったのだろうか?

「放課後、学校に寄ってくれたのか?」

「ちがうよぉ」

 ケラケラと、美世は笑ってケーキの端をつつく。

「ガッコに横付けなんてできないからさ、バレバレじゃん?」ま、どうせいつかバレるんだろうけどさ、かくしてみたいお年ゴロなのよ、とまずケーキをほおばった。

「近くのコンビニで乗り降りすんの。案外目立たない所でさ。そっからは歩くんだ。朝はケンジの会社早いんで、まず、学校の誰にも会わないしね」

「あのさ」

 リーダーが目を上げると、美世、不思議そうに彼を見返した。この店で一番高いケーキを文句もなく御馳走してくれるという珍種のオヤジを、まじまじと観察しているようだった。

「ケンジくんがどこにいるのか、本当に知らないんだよな?」

「うん知らない」明らかにとまどってはいる。


 成人式の朝、おめでとう、と電話をしたのが声を聞いた最後だったと言う。スーツ姿も後で写真を見せてもらう約束だったので当日には会わなかったそうだ。その後、電話もかかってこなかった、と。実際、手掛かりがまるでないらしい。


 しかし、この底抜けとも言える明るさは何なのだろう?

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