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ママはどんな人? 01

 昼はいったん、ホテルに戻る。


「アナタ」部屋についてドアをしめたとたん、ボビーが口を開いた。

「どうしちゃったの?」

「どうもしてないけど、何で」サンライズはきょとんとしたまま彼をみる。

「ほんとにタンテイみたいよ。シゴトはどうするのよ」

「シゴトは、してるよ」むっとした顔になって、彼は冷蔵庫を開けた。

 気のきいた冷蔵庫で、コンビニで買ったお茶やビールがしこたま詰められるようになっている。

「それに、ケンジは家出じゃない」

「どうしてそう言いきれるの」

「一つだけ、引っかかったんだ」お茶と、買ってきた昼食を拡げる。

「何よ」

「自慢の車を、市民ホールなんかに置き去りにして家出だろ? 普通さ、車で出ていかないか? 遠くに行きたいんだろ? しかも式の後、いったん車を動かしている。夜少し遅い時間だ。ガソリンを満タンにしたんだ、レシートがあったよ、バインダの一番上に。どうして家出の前にガソリンを満タンにしたんだろう」

 ボビーが腕を組み、それについて考えこんでいたので

「まあ、メシ食おうぜ」とうながして早速割り箸を取り出した。

 シヴァは、早速自室に戻ってこもってしまってる。ボビーが、お昼一緒に食べましょうよ、と誘ったが「ちょっとやることある」とあっさり返して部屋に消えた。とんだアシストよね、とボビーが憤慨しているのを、サンライズは横目で見て、かすかに微笑んだ。


 午後はまず、駅近くの学校に通っている佐伯の娘に会う予定だった。


「だいたい、あの母親というのが変わってるわよ」

 ボビー、先ほどのコンビニで買ったフルーツサラダをつついている。

「心配している、というよりもゾンビみたい。目が死んでるのよ。日常生活はとりあえずこなせているゾンビ。どうしてもっと積極的に捜し回らないのかしら? いくら大人になったと言っても、一人息子でしょ」

 サンライズはねぎとろ巻きと鯖寿司。「ビール飲みてえ」とつい一言出てしまい、まず一口。意外といける、あとは無心にかぶりついた。

「ワタシの母親だってずいぶん変わってたけど、あの女よりはずっとマシだったわ」

「ボビーのママ? 教えてくれよ、どんな人だったんだ?」

 ボビーはミネラルウォーターのボトルを脇に置いて、話し出した。


 クリスチャンサイエンスの信者だったけど、結構話は判る人だった。

 アタシがまだクリスって呼ばれてやせっぽちの高校生だった頃、実は自分は男の人が好きだ、と泣きながら打ち明けた時も、「まあ何てこと」とは驚いたものの、その後はじっくりと話を聞いてくれた。そして、こう言ってくれたの。

「ママは、アナタのことを信じているから」


 気に入らないキッチンの壁を、急に思い立って一晩がかりで塗り替えたり、やってきた科学雑誌のセールスマンに、なぜUFOがアラバマに多く出現するかを細かくレクチャーしたり、近所のドラッグストアに「おたくの洗剤には国を滅亡させるウィルスが混入されている」と警告に行ったり。

 幼い頃からハラハラさせられる人だった。でも、とてもチャーミングだった。


「オマエ、その母さんが女手一つで育ててくれたんだろ?」

「そうよ、すごかったの彼女。今もパワフルだけどね」

 サンライズが控えめに笑うと、今度はボビーが聞いてきた。

「ところでリーダーのママって、どんな人なの?」

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