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地味な仕事になりそう 02

 メンバーも追加になったので、シヴァも交えて先見のことについておさらいした。

 当時の調査内容がファイルで残っていたのを見ながらサンライズは説明する。


 原発性近未来高頻度予知症候群、平たく言うと、生まれついての予知能力者が本当にいるのか、MIROCは三年前、極秘で調査を行っていた。しかし、大掛かりなテストを行う、という直前にマスコミに嗅ぎつかれてしまった。


「どうしてその時は大騒ぎにならなかったの?」

 髪を拭きながらボビーが画面をのぞいた。


 マスコミのカメラが入る中でのテストとなってしまった。鳴木の住民全63人中20名の無作為抽出という形だった。10代から80代までの18名とそれ以下の子どもが二人。

 用意された質問は三つ。


一.来月の衆議院選で、政権交代はあるか

二.再来月の円レートは、一ドルいくらか

三.この先一ヶ月間に世界に起る事件事故、災害は?


「結果は、素人の予想すらはるかに下回るものだった」

 サンライズ、画面を指し示す。

「どうにか、ディレクターは特番にしたかったらしい、『信州の隠れ里に戦慄の予知能力一族が?』タイトルとおおまかな企画はできていた。あとはもっともらしい結果だけつければOK。

 当時のスタッフから話が聞けたが、大変だったらしいよ。まず、六十八歳の梅田シノさん、か、この方にセイケンコウタイの意味を説明するのに、一時間近くかかったらしい。

 円レートなんて、円高なのにどうして円の金額が下がるのか?ってほとんどの人がブーブー言ったって。四八歳の、ああこの下鳴木の竹内さんて人がやっとで説明してくれたが、その御本人の予想が、一ドル360円だった」

「あらまあ」ボビー、今度はドライヤーを使っている。

「とにかく、みんな素朴な方々ばかりで、取材の雰囲気は和やかそのものだったが、中身はひどかったって言ってた」

「それをまた今回、ワタシたちがやるんですかぁ?」

 言いながらボビー、冷やしてあったワインとQBBチーズを出してきた。すっかりシゴトからは興味を失っている。

 シヴァもアシスト登録が済んだので安心したのか、さっきから自分のパソコンで遊んでいた。使えない感満載。

「元スタッフが言うには住民がみんなして『こんなの番組になるわけゃないさ。だってオレら、さっぱし判んないもの』と言いだして、弱っちまったって。

 でもそれが、実は予知だったとしたら、的中したことになるんだろうな……」

「なぜですか」

「番組には、ならなかったからさ」まあ、当然でしょうが。

「リーダーは、信じるの?」

 そこで彼は、夢からさめたようにはっと顔をあげる。

「さあ」しばし、テレビに目を向け、グルダの指先に見入っていたが(ずっとグルダが演奏し続けていた、一晩中グルダなのだろうか)

「分からないな」ぽつりとそう答えた。

 ボビー、軽く笑う。

「アナタがそう答えるってコトは、本当に分かんないのね」

 ワインを一口すする。「んん? 案外いいわよ、これ」その後が手厳しい。

「このチーズにはぴったりかも」

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