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処刑人と姫様  作者: stenn
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月夜

誤字脱字、読み辛い。ごめんなさい。


アネルに戻ります。

満月だった。


誰もが寝静まった世界を冷たく白い光が包んでいる。


グランエラから少しだけ離れた森の中、そこは昔から貴族の避暑地だった。内乱の大粛清で貴族が消えた後その地を半ば強引に奪ったのは大富豪。彼らが管理しているその地には競うようにして幾つか美しい建物が建てられている。


俺達はその一つ、威厳さえ漂わせる築何百年を超えたような屋敷の前に立っていた。もちろん堂々とでは無く、隠れているが。


て、いうか。俺は溜息一つ。


「なんでテメェがいんだよ?カノ。」


隣には少女がいる。嬉しそうな顔を浮かべながら。その様子はなかなかカワイイがそんな事で誤魔化されはしない。


この女。レイスの眼を狙ってやがる。絶対に。


「え?だって面白そうだし。お姫様って女の子の憧れだもん。」


「いやいや。お前邪魔なんだけど。」


彼女は戦うことができない。が、その代わりにゴロツキどもが彼女を護っている。奴等に取ってみればカノはどうやら娘のような存在らしい。そのゴロツキも居ないとなれば邪魔なだけだ。


というか、女って『お姫様』に何の夢を持っているんだ?テイカといい。なんかデジャヴ。


「だって、アネル強いし。護ってくれるんでしょ?」


なぜ?彼女は悪びれた様子もない。


「強い。カッコイイ!」


ヨイショするカノの声を聞きながらなぜか隣で半眼で見ている男。


ただ俺は気持ちよくなり始めていた。おだてに弱いのだ。分かっていても。思わず、口端が緩む。


「……。」


「モテモテだよ。このまま行けば!!」


「そ、そう?」


「よ、アネル!」


瞬間、俺の中で何かしら弾けた。溢れ出る自信と笑顔。なんか花も背負っている気がする。


「さぁ。行こうか?ふふ。君は俺が守るよ。」


もはや誰だ。とキャラを見失う俺。白い歯が光った瞬間、カノの顔が一瞬引きっつた。


それを見ないフリをして強引に進んで行く俺の後ろで大げさなため息が聞こえた。






「ところで。」


窓で揺らめく淡い灯り。それを見ながらユウトが言う。なんだか久しぶりに声を聞いた。


「どうするんだ?正面突破か?」


「いやよ。面倒くさい。」


ようやく正気に戻った俺は『おまえは何もしないだろう』と心の中で突っ込んで見る。ただ同意見だ。情報によるとこの国の治安隊が数人屋敷を守り、アルドルから連れてきた警備の者が屋敷の内部を守る。


その数合わせてだいたい十人前後。強さは分からないが、強いと見ておいた方がいいだろう。


「だいたいアルが護衛に入ってるのに。」


「へぇ。アルが。」


一拍。聞いたことのある何俺は、凍り付く。


えっと。アルドル国の略じゃなくて?と声を出していたらしい。カノはキョトンとした顔で『アルバート』と答えた。


「俺、帰る。」


一番目のアルバート。一族最高の強さを持つ男だ。エルだったらまだしも。アルはダメだ。いや、『四番目』からダメだろう。最悪だ。下手をすれば死ぬ。帰りたい。もうランクが下がろうがもういい。


「殺されるわよ。テイカに。」


平然と言ってくれる。俺は、睨みつけるようにカノ見て頭を抱えた。


どうしろと?


「ああぁああ。俺に死ぬと?」


「何とかなるわよ。きっと。」


爽やかな笑顔を浮かべながら親指を立てる。やはりなんとなく楽しんでいるだろう?この女。可愛い顔をしやがって。


男だったら絶対殴り殺すところだ。


「それに、あの人もういったし。」


暗がりに消えかける男の身体。俺は、全身の血が引くのを感じた。

すっかりヘタレになったけど……。強いんだよこの人は。本当、うん。

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