第3話
あれから何度もその人は現れた。
諦めずに、一日に一度は現れ、少しばかり不順した時間帯だったが、そんなにも忙しい事をしていなかった私には、恨むものもなく、日常となりつつあった。
かならず一時間ちょいで帰っていく。
何か辛い顔をして出て行くとかではなく、何か、悲しそうな顔だった。
どうしてそんなにも悲しい顔をして出て行ってしまうのだろうかと、何度か考えたが、最終的についた結論は
毎度毎度来ているのに、お目当ての妹がいない。
違うと思っていても、今までの経験上、それしか考えられなかった。
だから決まった時間ではなく、探偵みたいに、何か情報を取るかのように、色々な時間帯に現れた。
そう思うことで、自分の何かに制限をつけた自分が居た。
「いつも、定期的な時間じゃなくて……迷惑ですか?」
「いいえ。迷惑では無いです。寧ろ、いつ来てくれるんだろうって楽しみで……」
なんて会話をしながらも、二人でクスクス笑った。
この時間はとても好きなっていた。
笑っている自分が、ちゃんと顔に表情として出ているか不安だったけれど、何を指摘してくるもなかった事で、少しばかり安心した。
「俺、好きです。あなたがとても。最初は、ただ憧れてるだけじゃないのかって思っていたんだけど、やっぱり、気の迷いとかじゃなくて、ちゃんとあなたが好きなんだって。解ってきました」
「そう。今はまだ、ちゃんと返事は返せない……。昔に色々あって、そういうところは慎重になってるの。でも、あなたは悪い人じゃないし、私も尊敬したい部分はあるわ」
そこまで言えるようになってきた。
微笑む事も出来るようになった。
少しずつ、好きになっているのがわかった。
でも、
そんな事も長くは続かない気がしてきた。
気付くと夕日が落ちていた。
今日の一日、まだ亮は来ていない。いつも、夕日が落ちる前には来ていくのだが。少しばかりそれが胸騒ぎとして焦る。
何かあったのか。
でも、たまに帰れるというくらいだから、そんなに悪いような病気ではないと思っていた。
(少しだけ……)
ゆっくりと体を起こし、来ないのならばこちらからと、探しに足を進めて行った。
しかし、病室番号を知っているわけもなく、こんなに広い病棟を歩くなんて、結構無謀なことだという事に気付いた。
それに、少しばかり今日はバタバタしている。
看護婦たちの邪魔にならないためにも、私は少し歩いただけで自分の病室へと戻って行った。
それから何日経っても、ずっと待っているというのに亮は来なかった。
数日、凄く一日一日が長く感じられる。