僕はこうして生き残った
こんにちは
まずはこれを見てくれているであろう人に重要な事実を伝えなければならないのかもしれない
どうしてこうなったのか
なぜこうなったのか
自分の胸に手を当てて考えてほしいと思う
きっとそれは我々、人類にとって大きな分岐点であったはずなのだから
少し回りくどいかもしれないが、まずは聞いてほしい
まずは例え話を始めるとしよう
君は物語の主人公だ
君はある日、生態系のトップから落ちたとしよう
よくあるSFモノのように地球外生命体が侵略してきた
とか
ある種の動物が超進化してもいい
君がこの地球でぬくぬくと暮らしていけているのは人類がトップであるからだ
そこに、地位を脅かす存在が出てきたら君はどうする?
銃を手に取り戦う?
ハハハ…
そこだ
そこを間違えてしまったんだろうな
僕らはすぐに争いを選択してしまうっていう愚かな生き物なんだ
何も平和主義者や非暴力を訴えかける団体ってわけでもないんだ
そう…
これは仕方ないことなんだ
個人の思想がどうこうじゃなくて
人類って種が選択を間違えてしまったんだろうな
そんなことを考える冬の日
僕は数少ない
頂点を追われた人間の生き残りの一人になったんだ
――――――
さて
話を聞いてもらってなんだが
実際のところはあまりよく知らない
その理由については簡単だ
――――人類終末の日
僕は眠っていた
いや、眠らされていた
…らしい
どうにもおぼろげな記憶を辿っていくと
その日に僕はこの街を歩いていた
休日には数多くの人が賑わい
あまりの人の多さに眩暈をおこしそうになるくらいだ
僕はあまり人ごみってのは好きじゃない
出来れば家の中で一人でゆっくりと過ごしていたい人間だと思う
そんな僕がだ
そんな僕が…わざわざ好き好んでこの街にやってきたのにはある理由があったと思う
さっきから自分の認識に自信が持てていない?
そりゃそうだ
僕は眠りから覚めたときに何もかもを失っていたんだから
友人のこと
家族のこと
いたかは定かではない恋人の事
記憶を失っていた
眠りから覚めたときに何もかも失っていた
なんだろうか
不思議と悲しみはない
そりゃそうか
悲しむべき対象との記憶がなくなっている
人間は相対的にしか自分の感情に確証が持てないものなのかな
ただ、自分という存在がごっそり持っていかれたような気がする
確かに今の状態を当たり前と思ってしまえれば無駄な喪失感なんて感じないのかもしれない
しかし、常識のすべてを失ったわけではない
何かが足りない
何かがおかしい
相対的な感情が僕には存在していることは否定できないだろう
そんな残り物のようなものでも、自分という存在のきっかけになるんだったらましだと思う
さて
これから話すことは僕たち人類に課せられた一つのテーマなんだろうと思う
僕ごときが人類に対してあれこれと壮大な事を語るなんておこがましいものであるけれど
なんてことはない
すべて僕の目線での事実で
僕の目で見た今を語るだけだ
これが今の世界だよ?