幼馴染が無視するから攻略本が完成した
オレには、ひとつ年下の幼馴染がいる。
美紅乃というツインテール女子だ。
美紅乃は、昔からずっと長い髪の毛を二本に縛っている。
とにかくサラサラで、かわいいのだが、そもそもあの髪型は、武器らしい。
髪の毛を武器という美紅乃は、少々変わっている。
いや、塩コショウ少々の話ではない。
大さじ五杯くらい変わっているのだ。
そもそも、髪の毛をなぜ武器にしているのかって聞いたことがある。
そしたら、男避けだよって言って、髪の毛アタックされた。
いがいと痛い。
かわいいから、男が寄ってきてしまう美紅乃。
でも、そんなかわいい髪型をしていたら、それはもう…
ツインテールほいほいだ。
その髪型は、可愛すぎて逆効果な気もするけどね…。
そんな美紅乃は、朝が弱い。
なので、いつもオレが美紅乃の部屋まで行き、起こしてあげるんだけど…
「うっ…くっ…くるしっ…」
と、うめき声をあげてたりする。
でも、目ががっつりあいてるから、ふざけてるのかなって、はじめは思っていた。
しかし…目をあいているのに寝ているっぽくて、軽くホラーだ。
そして、美紅乃にはその記憶がないって言うから、おそろしい。
「おい、美紅乃〜。朝だよー」
…
「痛い痛い痛い痛みです」
…
また変な寝言がはじまった。
「大丈夫かよ?ここか?」
昨日手が痛いって騒いでたから、軽くマッサージをして差し上げた。
…
…
「やあ、おはよー」
いきなり目覚める美紅乃は、ほんとにこわいぞ?
「おい、こえーな」
「なにが?」
キョトンとする美紅乃。
そんな美紅乃が、ゆっくりと部屋を見渡して、
「この部屋…泥棒入ったんじゃない?」
と、真顔で言ってくる。
「いや、美紅乃が散らかしてんだろうな。泥棒に失礼だぞ?」
って教えてやると、美紅乃は…えっ⁉︎わ、わたしが⁉︎と、しらばっくれる始末だ。
「仕方ないなぁ。支度終わるまで片付けてやるよ」
「なんで…なんでそんなにいつも優しいの?そもそも朝は、わざわざわたしよりも早く起きて、おはようございますしてくれるし、部屋も片付けてくれるし…お母さんかよってんだよ‼︎」
…
「なんで最後キレてんだよ…」
「あー、ついカッとなって…でも、いつまありがとうね」
「あぁ。好きでやってんだし、いいよ。てか、いつまってなに?いつもじゃなくて…?あ、まさか…いつまでもお願い…てきな?」
…
「え、ちょいとおまえさん?」
「だれだよ?どこの時代なんだ?」
「いまさ…好きって聞こえたんだわ。好きって二文字で」
「そりゃ、好きは二文字だな。いつま無視かよ。」
「えっ?そこじゃないよ。二文字でも三文字でもいいの。いつまは、無視だよ」
「無視か。てか、べつに五文字でもいいんだ?」
「えっ…それは…」
「うそだよ、で?好きがどうした?」
…
「な…なんでそんなに爽やかなのよ…。てか、わたしも、すきききき」
「え?」
「だから…ほら、わたしもそれ、うきききき…って言ったの」
「どれ?てか、さる?」
「だから…紀が言ってた…やつ。共感ってやつよ」
「いや、そこ共感できないだろ…だからオレが掃除してんじゃんか…」
「あー…」
「てか、遅刻すんぞ?早く支度して」
「はーい」
まったく美紅乃は、マイペースなんだよなぁ。
…
放課後、今日はバイトもないし美紅乃と一緒に帰ろうかなと思い、美紅乃のクラスへと足を運んだ。
「おーい、美紅乃ー」
「あ、紀!」
美紅乃は、犬みたいにオレをみつけるなり、嬉しそうにこちらに駆け寄ってきた。
まったく、かわいいぜ。
「一緒に帰んない?」
「もちろん!」
急いでバッグを持ってくる美紅乃。
「キャッ」
美紅乃は、あわてんぼうなので誰かの机につまずいた。
「おっと、大丈夫かよ」
「あー、うん。ありがとう」
少し照れくさそうにする美紅乃が意味のわからないことを言い出した。
「優しいね、と矢刺したって一文字しか違うじゃない?そして、意味が同じって面白いよね」
と言うんだ。
「優しいと矢刺した?たしかに一文字違いだけど…意味は、まったく違うだろ」
「え、一緒だよ?」
…
「どの辺が?」
「だって、優しくされると心がキュンってなるでしょう?これは、男女だれでもさ、優しっ‼︎って感情になると、キュンってなるの。それはもう、矢が刺さったってことでしょ?だから、一緒なの。優しいと矢刺したは。」
…
「おー、そうか」
「だからさ、もうさ、わたしは…心の矢がボスボス刺さりまくりなわけですよ」
「それって…大丈夫…なの?」
「ううん、そろそろ…限界なの」
「マジかよ⁉︎じゃあ…オレってどうするのが正解なの⁉︎」
「それは…矢を抜く…とか?」
「え…」
「結局さ、矢刺したってさ、矢を抜いても刺したってなるから、刺さったままなんだよね…。」
「じゃあ、どうすれば…」
「どうすると思う?わたしは、こたえがあるんだけどな」
…
にこにこする美紅乃。
もしかして…
「ワンチャン、恋の矢にしてしまう?とか…ないか」
「あー、でもさわたしは、ワンチャンよりもニャンチャン派なのだのよ」
…だのよって。
「そのワンちゃんじゃないけど…」
「でも、そんなワンちゃん派のあなた‼︎お見事です‼︎」
「えっ?犬が正解⁇」
「ちがうよー…。恋の矢ってやつ」
「あー」
…まわり道しすぎて、なんの話だったっけな?
あ、恋の矢か。
「じゃあ、美紅乃には今、恋の矢が刺さった状態なんだよな?」
「うん。」
「てことは…オレのこと好き?」
「にゃんチャン…にゃんにゃんです。」
「なんだよそれ…?もしかして、やっぱりオレのこと好きなんだね?」
「うっ…おぬし何者だ」
「フツーの人間だよ」
「あー。じゃ帰ろっか」
「好きは、どこいったんだよ⁉︎また得意の無視かよ⁉︎」
「シーって。大声で好きを求めないの。鳥の求愛ダンスじゃないんだから。」
「あ…たしかに教室で愛を叫んだヤバい男に当てはまるな。」
「でしょ?とりあえず帰って密室で話そう」
「なんで密室ってわざわざいうんだよ」
「ふふ、ふふふ」
「笑いかた怖いよ」
「おほほははほは」
「よし、帰ろう」
「うん、帰ろう」
帰り道、ひとけがなくなったところで、オレは、美紅乃の手を優しく握った。
美紅乃は、黙ってオレの手をギュッと握り返した。
美紅乃には、言葉より態度の方がベストらしい。
オレの部屋に美紅乃と二人きり。
さて、さっきの好きの続きを話そうか?って、そんなわけない。
だって相手は、あの美紅乃だ。
会話が通じるとは限らない。
だから、オレは好きを伝えてキスをした。
すると、お返しのキスが返ってきた。
これが美紅乃の好きってことなんだ。
「美紅乃、好きだよ」
「うん」
チュ♡
美紅乃攻略本がオレの中で完成した。
おしまい♡




