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レンタル彼女 即キャンセルしました

大学のキャンバスに人だかりが出来ている。 彼女ーー塚本紗良を見る人の集まりだ、俺ーー朝倉和馬もその野次馬の1人だ。


 「紗良様、美しい~」

 「おい紗良様がこっちを向いて笑ったぞ」

 「はぁ、お前じゃあねぇよ、こっちを向いて笑ってた」


 その様子はアイドルそのものーー少なくとも俺には届かない、遠い存在だ。 彼女もそうなのだろう、俺何処か、そこにいる人々を意識しない立ち回りを見せている。


 俺はせめて彼女と話をしたいーーその一心で頭がいっぱいだった。 でも俺には女性に対する免疫がないーーならばそう経験すればいいんだ。 俺は彼女や人だかりに背を向けた。


 ーーまっていてください紗良様、いつか貴方に会う男になります。



 青空の噴水広場ーー俺はここで待ち合わせをしていた。 髪を弄りながら時計と全身を確認する、よしオッケーだ、後は待つだけだな。 そう俺は紗良様と話をするための練習として、レンタル彼女を依頼したのだ。


 女性との触れ合い未経験な俺が、今日から始まる経験を経て、いつか紗良様に話かけるその日の為に頑張るぞ。

 

 俺はそう心の中で考えていると、「あの~すみません」と女性の声がした。 俺はハッとなり彼女を見るーー


 「貴方が今日待ち合わせの、朝倉和馬さんでお間違えないでしょうか。 始めまして私の名前は⋯⋯」

 「キャランセルで」

 「はい? キャンセル? どうしてでしょうか?」

 「貴方じゃないと言うか⋯⋯」

 「⋯⋯私じゃない、好みではないと⋯⋯」

 「あ、いえ⋯⋯お、お腹が急激に痛くなってきた! じゃあそう言うことでさよなら!」

 「え? 待ってください!」


 もちろんお腹が痛くなったのは嘘だ、俺がキャンセル⋯⋯逃げた理由は彼女が塚本紗良本人だからだ。


 「キャンセルって何だ? マジありえないんだけど⋯⋯」



 次の日、大学の食堂で俺はうなだれていた、俺の青春への一歩が早速頓挫したからだーーどんな確率だよ好きな女性がレンタル彼女をしていて、それを引き当てるとか有り得ないっての。 まさか覚えられたりしてないよな、どうしよう、まぁ彼女は「始めまして」って言っていたから問題ないなーーすぐに会わなきゃあってもバレないだろうし。


 俺はどうにか、気持ちを持ち直して次にどうするか考えていたとき「あの~すみません」と女性の声が聞こえてきた、俺は意識を戻して彼女の方へ視線をーー


 「すみません、食堂混んでて場所が空いてなくて隣いいですか⋯⋯あれ貴方は⋯⋯」

 「おほぉおお腹が⋯⋯ではこれにて失礼します、さよなら」


 俺は情け無い悲鳴をあげながら、荷物と食器を持って彼女ーー塚本紗良から離れる。 最悪だどうしよう俺は絶望感に苛まれながらもその場を去るしか頭になかった。


 

 「ふざけた奴だな⋯⋯朝倉和馬」

 


 休日、俺は繁華街で人間観察をしていた。 目的は簡単ーーナンパをする為だ。 俺は新しい恋に生きることに決めた、だって彼女ーー塚本紗良と付き合う何処か話ことすら出来なかった。 あんな醜態を彼女の前で晒したのだ、もう諦めるしかない。 街を行き交う人々を見てターゲットを決める。 あの帽子を被った女性はどうだろうかーー堂々とした歩き方に何処か惹かれるものがある。 俺は勇気を出して彼女に話かけた。


 「やぁ、そこの格好いいお嬢さん。 俺暇でさ~、君はどうかな?俺とこれから何処に行か⋯⋯」

 「ほう、暇か⋯⋯そうかそうか、儂も暇や。 いいぜ! 行こうや」

 「⋯⋯ぇ口調?⋯⋯その、キャンセルで」

 「お! なんや、また腹痛か、面白いな~儂に会うたびに腹痛なぁ、朝倉和馬!」

 

 彼女はそう言うと、俺を引きずりながら歩き始めたーーこれからどうなるんだ俺。


 

 やって来たのはラーメン屋ーーどうやら彼女はここへご飯を食べる為に外出したらしい。

 

 「大将、今日は二人だけど空いてる?」

 「いらっしゃい、紗良ちゃん。 空いてるぜ⋯⋯注文は何時ものでいいかい」

 「おう、当然だぜ」

 「はいよ! そちらの方は、どういたしますか⋯⋯と言うか彼は大丈夫かい?」

 「ああ⋯⋯こいつはスタンダードでいいよ。 よろしく大将」


  程なくして運ばれてくるラーメンーーラーメン!? 俺は彼女のラーメンとニコニコした彼女の顔を見る。


 「いや、これラーメンと言うか⋯⋯肉の塊?」

 「おうよ! 名付けて紗良ちゃんスペシャルだぜ!」

 「朝倉、ほら早く食え、麺が伸びちまうぜ」


 そう言うと彼女はすごい勢いでラーメンを食べるーーその姿は何時も遠くから見ていた『塚本紗良』とは似ても似つからないが、何故だか胸がときめいた。 俺も彼女につられてラーメンを食べるーー美味しい、俺は思わず彼女を見ると彼女も俺を見ていたのか、目が合った。 彼女は笑顔になると俺の背中をポンポンと叩いて笑ったのだった。


 

 「さあ次はデザートのパフェを」

 「紗良様まだ食べるの!」

 「あ? どうした? いきなり様よびしやがって」

 「え、いやこれは何時もの口癖というか」

 「口癖? ⋯⋯あの日以前に儂とお前あっていたのか? おかしいな儂、顔と名前を覚えるのは得意なんだが」

  

 彼女はう~むと言いながら考えこむ、俺のことを考えている、その様子が何処かおかしくて笑ってしまう。


 「まあいいや、それじゃ調子もよくなったようだし⋯⋯話聞こうか?」


 そう言うと彼女は俺の腕を組んで何処へ連れて行こうとするーーやばい腹が痛くなった気がするな。



 「アイドル? ウケるわ! 冗談おもろいな、朝倉」

 「いや冗談じゃあ無くて⋯⋯」

 「ほう、じゃあどうや実際に話て、まったく違うやろ」

 「はい、違いました」

 「よしよし、それじゃあお互い誤解も解けたし、仕事やからな、この前の続きしようか⋯⋯レンタル彼女」

 「キャンセルでお願いします」

 

 俺は前回と違い今回は彼女の目を見てはっきりとそう言った。 彼女は一瞬寂しそうな表情をした後、にっこりとした表情を浮かべ、「じゃあまたな」と言って去っていった。 


 彼女が離れた途端に何処か寂しく思ってしまうのは、贅沢な話だよなーーまたこれから頑張るか。



 「紗良様、今日も美しい~」

 「おい、紗良様がこっちに来るぞ」

 「やべえ緊張してきた」


 大学のキャンパスに人だかりが出来ている。 今日も彼女を見る人の集まりだ、違うのは俺がそこに混ざらないだけだった。 俺は本を読んでいた『モテモテの秘訣あなたに教えます~これであなたもモテ人間』内容はーー


 「モテるのに簡単な方法それは、来世に期待することです。今の残念なあなたよりましです⋯⋯なかなか辛辣な本読んでるな朝倉」


 ふと、横を見るとニタニタしながら顔を本に近づけて読んでいる彼女がいたーー


 「よお、なんだよてっきり面白いリアクションを期待したのにな⋯⋯おい朝倉、お〜い!」


 

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