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《完結》錬金術師の一番弟子は国から追われる  作者: かんあずき


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95 重体の部隊長に届く声

指輪のクラッカー装置は、火薬を含むこともあり拠点で試してみることなった。

装置は、耐火性の貝殻を組み合わせて指輪の先に取り付ける予定らしい。


更にみんなの盾や防具に月影狼の毛皮を貼り付けるため、他の隊員とミレイユは仲良く作業をしていた。


レオンハルトとしては、昨夜の出来事があり、自分より若い隊員が会話をしているのを見てもやもやした気持ちは残るが、困った出来事が拠点内に起きていてそちらの対応に追われていた。


ーーー


部隊長室。

レオンハルト、ダリウス、カイルの三人で机を囲んでいた。


「……それで、定期連絡はどうなってる?」

レオンハルトが真っ先に切り出す。


カイルは気まずそうに肩をすくめた。

「今も続けてますよ。もちろんダリウスさんの監視つきで……ユリウスに」

カイルは苦笑した。

王の影だったセリオが死んだことを悟られてはいけない。

定期連絡を切ってしまうことは、王の影の死亡や寝返りを意味する。

そのため定期連絡は続けていた。


「一応、こちらの状況は“新しい錬金物が作れず拠点から動けない”“探索に出たが怪我人多数”ってことにしてます。……それと、“通信士は死亡、部隊長は重体”ってことに」


「ふん。重体の俺に相変わらず連絡が来てるんだよ」

レオンハルトは小さくため息を吐く。


本当にこの拠点に来て以来、ずっと奇妙なことがあった。

――総司令官ユリウスから、部隊長である自分宛に直接モールス信号が届いているのだ。


この国では魔法通信が主流だが、樹海は魔力が濃すぎて不安定。魔鳥も魔物にやられる。

だからこそ、科学寄りの隣国に倣ってモールス信号が隠密通信として使われていた。


「モールスは一方通行だ。こっちが返信しなきゃ、向こうに確認する術はない」

レオンハルトは机を指で軽く叩いた。


「最初は“物資を送ろうか”なんて善意じみた内容だった。だが……総司令官が、王直属の部隊長の俺に直接連絡をよこす時点で怪しい。しかも、ユリウスと俺は犬猿の仲だからな」


「ふむ。俺の時は前任の部隊長がアリエルだったから、魔術師団の動きの把握のためにここに出入りさせてもらっていたが恋仲だったしな。

むしろ、魔術師団の動きが見えなくて困ってたが……」

ダリウスが腕を組む。


魔術師団は総司令官の直属となる。

しかし、やっかいなことに紛争以外ではあまり接点がない。

プライドも高いので、救護活動なども管轄外だと言ってやらない。


普段魔導炉の管理以外何やってるんだという感じだが、アリエルのような生きた兵器を多く作ろうとしており、国としては蔑ろにできない部隊の一つだった。


もっともアリエルのような人間はそうそう生まれないし、その後、ダリウスとの交際なんて関係者は誰もが思ってなかっただろう。


「ユリウスが管理する魔術師団のことは、これまでは一つも連絡になかった。“食料は足りているか”だの“ポーションが市場に出回ってなくて届けられない”だの訳わからない言い訳めいた連絡ばかり一方的に送ってくる」

レオンハルトの声音は低い。


カイルが顔を上げる。

「……で、今回の定期連絡ですが。怪我人が出てるなら“魔核は取れなかったか?”と。」


レオンハルトも言った


「こっちも、ユリウスから初めて魔術師団関連の連絡だ。魔導炉に使う魔核の供給が止まっている。今まであった樹海防衛部隊からの供給がないからだと。大量に必要としてるから、樹海防衛部隊が動けないなら魔術師団による魔物討伐の許可が欲しいって」


ダリウスの眉がぴくりと動く。

「馬鹿な。樹海の管理は樹海防衛部隊の専権事項だ。」


レオンハルトが頷く。

「しかも、俺は重体で動けないことになっているのに、連絡してくるところが....な。」


ため息をつきながら

「霊峰山の魔導炉の管理は奴らの仕事だが、樹海の魔物に手を出す権利はない。……重体の俺に“許可をくれ”というのは....」


「……許可なんて出ないとわかっていて、形だけ通したってことでしょうか?」

カイルが呟く。


「魔核はとれている。それを届けると伝えるか?

クーデター決行に合わせてな」

レオンハルトの目が細められた。

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