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《完結》錬金術師の一番弟子は国から追われる  作者: かんあずき


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73 素材集めと晩ごはんと、ちょっと赤面する俺

ダリウスの重い決意を聞いたあと――


部隊員たちが、大量の素材やカニもどきを焼くか蒸すかで悩む中、ミレイユは殻に触れて鑑定していた。

どうやら、盾などに使えば魔力を反射できるらしい。


「じゃあ、中身は……刺身にするしかないのか?」


俺が呟くと、ダリウスが軽く提案する。


「せっかくだから、その短剣で一部を炙ってみたら?」


脚の第一関節だけで、人の身長ぐらいある。それをダリウスの剣がスコンと落とす。


「その剣、真面目にすごくないか?」

レオンハルトも先ほどの討伐で驚いたが、その切れ味は尋常じゃない。


「バカ言え。ここまで使いこなすのに、アリエルからどれだけ酷い目に遭わされたと思ってる?」


ダリウスは笑いながら話す。


「最初なんて攻撃力100倍にされて、斬った瞬間に反動でほぼ即死寸前、ハイポーション使って生き返ったと思ったら、今度は氷属性で自分も凍りかけたり、火だるまになったり。十年かけてようやく、今の扱いに慣れたんだ」


ぞわっと背筋が寒くなる。


俺の目の前で、ダリウスが斬った甲殻系魔物の脚は、中身がぎっしり詰まって見える。

ミレイユも短剣の意外な使い道に驚いていた。

どうやら、剣の柄を握る力で火力を調整できるらしい。


そのまま殻の上から直火で炙っていく。


――本当に万能短剣だったのか。

俺は一体、何を預けられたんだ。


あ、ミレイユ本人も預けられたな。

……うん、それは嬉しいんだけど。


思わず一人で赤面してしまう。


「火を入れても大丈夫。むしろ強度が増します。盾に加工すれば魔力防御も可能ですね。粉末にして加工もできそう」

ミレイユは炙られた殻をじっくり鑑定している。


「じゃあ、火属性のもので焼きガニ決定だな」


昼は狼肉のバーベキューだったが、夕方は豪華に焼きガニ。独身の彼女なし兵たちは、「このままここにいてもいいんじゃないか」と呟き始める始末だ。


甲殻や今日の素材は、拠点近くの水場で洗浄することになった。みんなで分担しないと、塔には大量の狼毛皮もあるし。


その他、魔物ごとに魔核を分け、スライムや魚は干して保存食にしていく。


ミレイユと俺は、残りの木箱のレシピ確認と、狼の毛皮や目玉の片付けのために一度塔に戻ることにした。


指輪で塔の前に出ると、夕日を背に月影狼の銀色の毛皮がキラキラ輝き、オレンジ色の光でふんわり温かい香りがする。


目玉は乾燥してしまうと、金色の小さなウロコで、科学の国でいうコンタクトレンズほどの大きさ。そっとトレイに置いていく。


……正直、気持ち悪い。鋭い眼光は、まるで生きているみたいだ。


「この光が夜目で活躍するんだそうです」

さすが月影狼。目玉になっても迫力と実用性は健在だ。


片付けが終わるころには、すっかり日も暮れていた。俺たちは急いで塔の中へと入った。


ーーー


塔に入った瞬間、魔物はこない安心感でほっとした気持ちに同時になる。


――だからだろう。

次の瞬間には、もう互いの距離を我慢できなくなっていた。


まだ塔の階段を登りきってすらいない。

それなのにミレイユの壁を背に、唇が触れ合い、確かめるように、いや、貪るように深く重なる。


「ん……っ」

甘い吐息がこぼれる。

かつては、指先が触れるだけでも勇気がいったはずなのに、いまはもう、お互いが止まらない。


角度を変え、深く、浅く。

唇から頬へ、耳たぶ、首筋へ――その指先で、唇で、互いの存在を確認し合うように触れていく。


思わず興奮して、誤って跡が残らないように気をつけてはいる。けれど、その理性すら危うい。

理性と欲求が、せめぎ合いながらも確実に熱を高めていく。


「……もう、少しだけ」

どちらがそう懇願したのか?

もうお互いがわからなくなっていた。


ただ確かなのは、いま互いを求め合う気持ちがすべてを上回っていた


少しして、ゆっくり唇を離す。なんとか理性で止めたが....


確かに奥手だな


レオンハルトは苦笑いする。

だけど、全てが解決したら、奥手では終わらず、ちゃんと、堂々と一から交際を申し込んで、きちんと婚約者になってもらえるまで口説き続ける!


レオンハルトはそう決意するが、それが奥手なんだとみんなから微笑まれている行動だということを理解できていなかった。









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