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《完結》錬金術師の一番弟子は国から追われる  作者: かんあずき


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66 妄想の王、隠された王太子

国王カールヴァインは、王妃に勧められた葉巻を口にくわえ、ゆっくりと煙を燻らせた。


怪しげな白い煙が部屋に満ちる。

隣で王妃も微笑みながら、それを楽しんでいる。

煙を吸うたび、俺は誰よりも強く、誰よりも賢く、誰よりもすごい存在になった気がした。


王妃マーガレットは後妻だ。

前妻セリーナは気立てこそ良かったが、何かと口うるさく、俺の目にはただの目障りな存在だった。

しかし、世継ぎを産む道具としてなら、愛がなくても成立する。

男児が無事生まれ、前妻は別棟に移らせた。義務は終わりだ。


俺たちの会話は、当然のようになくなった。


腹立たしいのは、その前妻との間に生まれた息子だ。

まず、俺に似ていない。

栗毛の髪は、俺の嫌いな弟にそっくり。

顔も、どこか弟の影を感じさせる。


弟セドリックは性格穏やかで、座学も剣術も優れている。

平民にさえ優しく、国民の人気も高い。

貴族の反発も社交性でかわす。

敵を作らず、誰にも徒党を組まない。

しかも、国王派であることを隠さない

自分のために周囲との干渉を最小限にしている――そんな風に俺は誤解してしまいそうになる。


でも知っている。

あいつは俺に忠誠を誓っていない。

俺の行動を常に監視し、裁量で勝手に動くこともある。

結果的には俺に有利なことが多く、それがまた腹立たしい。あいつが弟でなければ、間違いなく手を出している。

だが、弟だからこそ、簡単にはできない。


そして、その弟に似た子供を産んだ前妻への怒りは、ますます募る。


俺に言い寄る女性は多い。

俺を理解し、力になりたいと言う女もたくさんいる。

世の中にはもっと若く、美しく、どこに出しても羨ましがられる女がいる。

王という立場なら、当然それを求められる。


今の王妃は、その中で特別だった。


俺を必要だとすがり、俺を立て、気持ちよくしてくれる。

若く、美しい。

前妻さえいなければ、この女と一緒になれるのに――。


苦しい時、王妃が勧める葉巻を吸った。

恐る恐る口にくわえると、心の凪が解けた。

あんな弟みたいな小物に何を腹立てていたのか。

俺はこんなにも素晴らしい存在なのに、と馬鹿らしく思えた。


「今の感覚が、あなた本来の姿ですよ」


王妃の言葉に、嫉妬の醜さを改めて実感する。

自分の方が優れているのに、相手の方が際立って見えてしまう――それが嫉妬だ。


俺は決めた。王妃を、絶対に手元に置く。


そして、消すべきものは消す。

だんだん冷静になればなるほど、弟と前妻は間違いなく不貞を働いたと思えてきはじめた。


弟と不貞を働いた前妻も、その息子も消えて仕舞えばいい。


今の王妃にそう告げると、彼女は前妻と息子に仕込む毒を差し出した。


久しぶりに家族で会話しよう――そう前妻を呼んだが、来たのは前妻一人。息子は魔力過多症の治療中だという。


仕方ない。まずは前妻だけ片付けて、息子は後だ。

理由は後からつければいい。


私が注ぐ果実酒を飲み、血を吐き、前妻はあっけなく死んだ。

簡単すぎる。

料理人が毒を仕込んだことにしてしまえば済む話だ。


そうして、罪を料理人に押し付け、王妃は順調に俺の側に――正式に迎え入れられたのだった。


厄介だったのは息子だった。会うことができない。


やっぱり前妻とできてたから、セドリックは俺から息子を隠しているに違いない


息子を差し出すように伝えると弟セドリックは息子の魔力過多症状が重く移動が難しいこと、その症状が重い中で、もし後妻との間に子供が生まれた場合、新たな政治不安定を生む可能性を告げた。


もっともらしいことをいいやがる


くそっ!それなら王妃との間に子供を作ればいい。

前妻との間に生まれた弟との不貞の子など、弟と一緒に闇に葬ってやる














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