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《完結》錬金術師の一番弟子は国から追われる  作者: かんあずき


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50 隊内に潜む裏切り者、そして俺を救った彼女の力

レオンハルトの怒鳴り声を聞きつけて、カイルが飛び込んできた。

「団長――じゃなかった、隊長! 一体何が……?」


カイルの顔色はひどく疲れていたが、こいつは俺が気の回らないところを全部拾ってくれる。

だからこそ、ミレイユをここに連れてくることは相談なしに決めてはいけないと思っていた。


「実はな。さっき突然、ダリウス前総司令官が現れた」

「……は?」

「彼の言うには、この樹海防衛部隊の前隊長の娘を連れてこいと」


「情報多すぎて処理できませんけど!? ……で、その娘さんはどこに?」

「俺の婚約者で、今俺が匿ってる」

「……えっ!?」


カイルが固まった。

……言ってしまった。縁談話だけなのに、婚約者だなんて。少し恥ずかしい。だが、そのぐらいの関係だと言わないと彼女も信頼されないだろう



「まさか……先週から一週間、急に休みを取った件って……」

「そうだ」


隊長が行方不明になって二週間。俺が彼女の服を急に欲しがったことも、すべて合点がいったのだろう。


カイルはごくりと息を呑む。

「別に彼女は犯罪者じゃない。ダリウスの紹介で知り合っただけだ」

俺は平然を装った。


「……でも、ダリウスさんは何のために?」

「彼女は錬金術が使える。前の隊長と同じようにな」

「それは……助かりますけど」


カイルは眉を寄せ、少し黙った。


「ちなみに隊長。ここにいるメンバー、全員が白だと思ってます?」

「正直わからん。ただ――お前は白だ」

「なんでですか」

「勘だ。こういう時に勘を外すようじゃ、どのみち助からない」

「はは……ありがたいですけど。俺も全員を信じちゃいませんよ」

「同感だ」


「じゃあ、ダリウスさんの話をわざと漏らしてみましょうか。必ず外と繋がるやつが出るはずです」

「外部連絡は前の隊長が移動してやっていたはずだが、場所はどこだ?」

「通信室、ありましたよ。誰も使ってないって話でしたけど……埃ひとつありませんでした」


カイルは通信室と思われる場所をレオンハルトに示す


「へえ……」思わず口元が緩む。


これは面白い話を聞いた。


「じゃ、俺が通信室を張ります」




カイルが全員が集まる場所で血相を変えて戻ってくるフリをする。

「ダリウス元総司令官が突然現れて……消えました!」


「なんだと!?」

「え、行方不明じゃなかったのか!?」

「もしかして俺たち、助かるんじゃ……!」


士気が一気に上がる。

逃亡犯のくせに、あの人には誰も敵わない。……情けない話だ。


俺は静かにカイルが伝えた通信室とは違う部屋へ向かった。

そこにはカイルが立っている。

次の瞬間――刀を抜き、首に突きつけた。

「色々聞きたいことがあるんだよ、カイル」


「な……! なんで俺が」

「お前、俺がここの拠点の状況知らないと思ってただろ?ダミーの通信室を俺に教えた。あの時点で黒だ」


以前塔の4階に拠点の詳細について書かれたものが残っていた。だから、カイルが伝えた場所は通信室ではないことを知っていた。


その瞬間。

背後から、冷たい刃が突き刺さった。


「……ッ!」


腰を貫かれる。血が噴き出す。

気配はまったくなかった。


即座に振り向き、ミレイユが加工してくれた剣で斬り払う。

セリオが崩れ落ちた。


「あーあ、国王の影なのに刺したつもりが、一瞬で返り討ちですか。さすがですね。その剣……錬金術製ですか」

カイルがにやりと笑い、腰から剣を抜いた。


「……なぜ裏切った」

「裏切ってませんよ。ただ、平民出の俺を拾い上げてくれた国王に尽くしてるだけです」


視界が揺れる。出血がひどい。

「この状態なら、さすがに俺の勝ちですよね。隊長?」


だが、俺にはまだ切り札があった。

袖に隠していた風魔石を、剣にそっと取りつける。


「どうかな。俺には最愛の彼女のお守りがある」


あの相手の攻撃50%カットが効いて、ネックレスが俺の身体を守っている。まだ動ける――ミレイユがくれたものだから。


最後の力で振り抜いた。

風と炎をまとった刃が炸裂する。


「っ……!」


カイルは吹き飛ばされ、俺も壁に叩きつけられた。

まだ、かすかに動いているカイルに向けて、腰から睡眠玉を取り出し、奴に投げつける。


ぱしゅん、と弾けた瞬間、カイルは崩れ落ち、完全に動きを止めた。



その物音に他の隊員が駆けつけてくる。

「カイルとセリオを拘束しろ!」


驚く者もいたが、俺の出血を見れば状況は明らかだった。

カイルは縛り上げられ、セリオの絶命も確認される。


俺は血を押さえながら、低く呟いた。

「……全くダリウスのやつ、何がもう手出しできる奴はいないだよ」

とはいえ、俺の勘は使えない。

レオンハルトは苦笑いするしかなかった。










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