天使ちゃん
1245-7改め、神林天使の人間界視察プログラムについての報告書を提出します。
-1カ月前-
私は“主”に見捨てられたのだろうか。
私は仕事帰りに数日後に始まる人間界視察プログラムについて考えた。私は、このプログラムの初の体験者として選ばれた。のだが、正直に言えばあまり喜ばしいことではない。人間界視察プログラムは言葉の通り、人間界を視察して今の人間界はどうゆうものかを調査するというものだ。すでにありそうなプログラムだが、このプログラムには特殊な条件がある。それは、一部の能力を除いて、人間と同じ能力と体を持たなければならないことだ。人間になるということは食事や排せつ、性処理など人間の行う非天使的な行為をしなければならない。身震いしてしまうのは、このプログラムが怖いからではなく、突然吹いた冷たい風のせいだ。
私は天使として奇跡提供課にだいたい100年ほど務めた。やっと後輩に仕事を教える立場になったのに
「なんでまた選ばれたのが私なんだ!」
と、つい叫んでしまいたくなる。が、そんなことをすれば周りの天使から不審な目で見られるのでやめた。このプログラムを終えれば昇級の可能性もあると言われているが、あくまで可能性でしかない。そもそもどのくらいで戻ってこれるのかも未定だ。断ればいいと言われるかもしれないが、このプログラムの参加者を選んだ人は“主”だ。普通の天使なら“主”の命令に逆らえるはずがないのだ。
「1245-7さん。お疲れさまでした。こちらの出口から人間界に行けます。」
ついに、この時が来てしまった。初めて見る天界の出口は白の扉で、あまりにもシンプルだった。天界とさまざまな場所をつなぐ天界移動所でたくさんの薬品を飲まされた。この薬品が数時間すると私の体を人間の体に変えてくれるらしい。ここまでくる道中で、会った人からはプログラムの参加おめでとうございますと言われた。しかし、だれの言葉も同情を含んだものだった。
「ありがとうございました。」
天界移動所の職員に一礼して出口に向き合う。少し息を吸って、吐く勢いのままドアノブをおした。
目を開けると畳のある部屋にいた。何時間寝ていたのかわからない。起き上がって部屋を探索する。それなりにきれいで、人一人が住むのには十分な大きさだった。お風呂や台所もついており、住みやすそうだ。一つ分からないのが部屋の壁に、どこかの学校の女生徒用の制服がかけてあることだ。とりあえず、顔を洗って、目を覚ますために洗面所の方に向かおうとした。その時、私は部屋の隅にあった全身鏡に映った自分の姿を見た。顔と髪型は変わらないものの身長は10cmほど縮み、全身が曲線的で胸には少しふくらみがあった。
「に、にぃ、人間の女になっている!!!」
いろいろな作品に影響を受けてます。温かい目で見てもらえると嬉しいです。