第2章 34GTRの手子生樹潤登場
鬼ケ窪モータースに26DETTのエンジン音が鳴り響いた1台の青い34GTRが工場へ入って来た。ドアを開けて出て来たのはココの常連の手子生樹潤だ。ロングヘアを靡かせて白のジーパンキャメルのダウンとトレードマークのグラサンは外せなかった。今日は点検とオイル交換で来た。「いらっしゃいませ。」鬼ケ窪豊社長が奥の工場から事務室兼応接室に姿をだした。「樹潤、車の調子はどうだ!」社長が樹潤の目を見た。「絶好調だよ。先週の日曜日つくばサーキットで走ってきたばかりだよ。良いタイム出ましたよ。」樹潤は社長の顔を見て微笑んだ。「樹潤はあまぼうき琢磨って白のNSXのあんちゃん知ってるか?ココによく出入りしてくれてる。8年ぶりに例のレース再開しないかって来たんだよ。8年前のレース知っているか?」社長は樹潤の目を見つめた。樹潤は黒のサングラスをはずしてテーブルの上に無造作に置いて髪をかきあげた。「知っているわよ。伝説のレースだもの!死人が出たレースだよね。」樹潤は社長の目を見つめた。「その死人ってのが琢磨の兄貴だったんだ。酔っ払いのおばちゃんに突っ込まれてあの世行き。危険なレースだけどやってみない?」社長は樹潤も誘った。樹潤は東京の音大に通う大学3年生で親はホテルを何件も経営する金持ちのお嬢様だった。「あまぼうき琢磨って知ってるわよ。私の大学の先輩を追っかけてるなかなかのイケメンらしいじゃない?株屋だよね。確か?」樹潤は社長の目を見た。「琢磨、追っかけなんかやっていたんだ?知らなかった。」社長は樹潤の目を見てニヤリ笑った。「つくば市立フィルハーモニー管弦楽団で第1バイオリンをやっている美人な先輩なんだ。その先輩があまぼうきって言っていたからまさかと思って。」樹潤は社長の目を見て微笑んだ。「メンバーは揃うんですか?」樹潤は社長の目を見つめた。「大丈夫だ!後二人候補はいる。4台で走る。後二人もうちに出入りしてる連中だ!Rx7とA80スープラだ。良い勝負だろ!たぶん琢磨のNSXか完成すれば一番速い間違えなく。これから作る。30A改3.5L6蓮スロットル415馬力だ。樹潤の34GTRも速いがNSXには勝てないだろう。フラットの直線コースだからな、カーブとかありゃ樹潤が一番速いのはわかっている。FD3sも後期型280馬力で、A80スープラ
も改造して2JZGTEは500馬力はある。馬力では一番だがドライバーがイマイチでな!ビビリだからどこまで踏み込めるかが鍵なんだ。」社長は樹潤の目を見つめた。「どうだ勝負したいか?明日までに連絡くれ!」社長は樹潤の目を見て離さなかった。「社長、GTR点検とオイル交換終わりました。」従業員が社長に声をかけた。「樹潤終わったぞ!お待ちどう様。たぶん、問題なしだな、従業員何も言ってなかったから安心して帰れ、やるかやらないかは明日までに連絡くれ!時間がない。」社長は樹潤の顔を見た。「わかりました。連絡します。前向きに考えてますから。」樹潤は鬼ケ窪社長の顔を見てニヤリ笑った。テーブルの上のサングラスをすると事務所を出て、長い髪を靡かせて車に乗るとバックファイヤーを2回繰り返し立ち去った。