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朝の光、眩しくて

突然だが自警団の朝は早い。

相手にしているのが犯罪者、しかも場合によってはパラノイドな事もある。

身を自ら危険に晒している以上、自分の身は自分で守れる程度の強さはなければならない。

その為に鍛えるのは当たり前なんだけど俺達ネストは学生ばかりな為、トレーニング時間が限られる。

なので早朝に全員でトレーニングに出るのが日課として決まっている。


「マナトー、ペース落ちてるけど大丈夫かー?」

「はぁ、はぁ…だ、だいじょうぶでず…」

名前からして如何にもインドアなんだろうなというのが伺えるマナトはまだ3kmしか走っていないというのに今にも死にそうな声を出していた。


これでも入った頃よりは大分走れるようにはなった。

最初に行った朝トレの時は1kmの時点で既に死んでいた。

そう考えると凄い進歩だと思う。

しかし俺達がやっているのは命のやり取り。

しかも俺達には相手がいくら凶悪な犯罪者とはいえ殺してはいけないというハンデがある。

生やさしくするのは逆に無責任というものだ。


「昨日までは5kmがボーダーだったから今日は5.5な」

「ゔぇっ!?」

「ウグイス、マナトの監視頼んだ」

『うん、後は任せてソウタは先に行ってて』

「あぁ、ありがと」

「そ、そんなぁ…」


500m追加という絶望感に打ちひしがれてか、さっきよりも力が抜けて腰が曲がっているマナトを背に俺は走り出す。

当然だがウグイスは走ることなんか出来ないのでスタート地点に待機してもらって、ドローンでメンバーそれぞれの様子を見てもらったり水分を届けてもらったりとサポートに回ってもらっている。


それからしばらく走っていると先行していたトウカとシノブの二人が見えた。

「兄ちゃーん、こっちこっち!」

「殿ー!お待ちしておりましたー!」

「あまりでっかい声出すなって、まだ朝5時半なんだぞ?」

あっ、そっかと思い出したように口を両手で塞ぐ二人。


「あれ、マナくんは?」

「マナトは置いてきた、この戦いについて来れそうにないからな」

「ふっ…所詮、マナトはネスト最弱…」

「凄い言われよう…」

まぁ仕方ない、実際ウグイスを除くと単純な身体能力では最弱だ。


「まぁあれでも根性は人よりもある故、大丈夫でしょう」

「うん!マナくん頑張り屋だからね!」

「それでは殿も来たことですし、始めましょうか」

「オーケー、今日こそ付いていってみせる」


トウカとシノブの二人は、ネストの中でもツートップの身体能力を持つ。

いや世界規模で見ても恐らく一点特化型の能力を持つパラノイドでもない限り、まずかなう奴はいない。

それはつまり、俺も二人のスピードには届かないということだ。

しかし俺もお兄ちゃんであり年上である以上、この二人に歴然とした差をつけられたままでは立つ瀬が無い。

追い越すまでは行かなくとも、なんとか視界の中に捉えられるレベルにはしておきたい。

なので二人には勝負してもらいつつ、俺はその後を追従するという形を取っている。


「それじゃあ行くよー?よーい、ドン!」

トウカが掛け声を放つと一瞬の内に二人との距離が開き、向かい風が押し寄せてくる。

「ーっ!相変わらず早すぎだろ!」

スタートダッシュをしっかり決めたにも関わらず、このわずかな瞬間で大きく離されると二人との間にある壁の圧倒的な高さを感じる。


遠目に二人を見る。

シノブに関しては走り方がもうおかしい。

いわゆる忍者走りのフォームなんだけど、なぜあの走り方であれだけのスピードが出ているのかが分からない。

恐らくいつものこだわりから来るものなんだろうけど、もしあれが原因で遅くなっていたらと考えると本気を出したらどうなるのかとても恐ろしい。


そしてトウカに関してはもう体がおかしい。

漫画とかアニメである、走る時に足が竜巻みたいになっているあの状態が目の前で起きている。

トウカは低身長だから相手より前に出るには、その分足の回転を早めないといけない。

しかもその相手であるシノブが物凄く速い以上、より回転させないといけないんだけれどあまりにも早すぎる。

それ故にあんなコミカルな現象が現実に起きている。


突然だがパラノイドには3つのタイプがいる。

1つ目は記憶のみが発現するタイプ。

特に何も能力は無いが、リンクした相手が技術者などの場合は強いアドバンテージになる。

問題はそれがこの世界で再現できるという前提があることだけれど。


2つ目は能力が発現するタイプ。

これに関しては記憶と一緒に発現する奴と能力だけが発現するタイプに分かれる。

記憶があるタイプは使い方や発動の仕方、弱点もわかるので苦労しなくて済むが無いタイプは1から全部自分で調べなければならない。

その実験が原因で怪我や事故を起こす人間も少なくは無い。


3つ目は前二つに加えて自分の体が変化するタイプだ。

こちらも記憶のある無しはあるが、それ以上に厄介なのが体の変化だ。

昨日確保した強盗の男も恐らくこのタイプだろうけど、獲得した能力に体が対応していない場合、それに合わせる形で体が変化する。

あいつの場合だと電気を生成する器官と電気を受け流す体に変化したんだろう。

その程度の変化だとまだいい。

場合によっては人間とは程遠い見た目になる場合もあるらしく、そうなるとまともに日常生活すら送れなくなる可能性すらあるという。


言うまでもなく二人は肉体変化型だ。

シノブは記憶が発現しなかったらしいけど、それはトウカも同じだった。

また記憶の発現によって性格が変わってしまう時もあるらしく、それが無い分当時は安心したけれど同時に急な体の変化で俺達兄妹はとても不安に駆られたのを今でも思い出せる。


今でこそ普通に暮らせているが記憶が無い分、今後二人の身に何が起こるかは分からない。

そうした時に能力差で守れなかったなんて甘ったれた言い訳をする訳にはいかない。

だから俺はどれだけ離されようと追いかけるのを諦めない。

いつか二人に追いつく、その日まで!








ーーーーーー

『ソウタ!しっかり水飲んで!酸素缶も!』

「兄ちゃん起きて!死んじゃダメだよ!」

「殿ーーー!!拙者が至らぬ故、申し訳ありませぬーーー!!」


その後二人のペースに必死に喰らい付いてなんとか10km地点にあるゴールまで辿り着くも俺の体力は底がつき、その場で倒れた。

ペース管理、しっかりしよう。


ちなみにマナトも同様に倒れたらしい。

メンバーの名前を漢字だとわかりにくいかと思って文中ではカタカナ表記にしてみました。

また元の漢字に戻すかも?

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