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読んでも読まなくてもどっちでもいい

パチンコ天国

作者: 阿部千代

 おばんどす。すっかり夜も更けはりおしたなあ。ふっふっふ。馬鹿め、騙されたな。ここには、はんなり美人なんていねえよ。そうだよ、おれだよ、文句あるかい。よしんばあったとしてもだ。聞く耳の持ち合わせなんぞありゃしねえよ。(ここから口上)京都に行ったら、ぶぶ漬けおかわり。空気は読まんが、本は読む。一日一本、文章投稿。黒ギャルどもが夢の跡。そう、このおれこそが、北の大地が産み落とした孤高の鬼っ子、阿部千代でいっ。なめんなよ、ヨロシク。


 勢いよく書き出したはいいものの、書くべきことなんてありゃせんのよ。

 世間一般が想像するであろうエッセイってやつ、あるでしょう。私生活のちょっとしたおもしろ話とかさ、そんなもんがこのおれにもあったとしてよ? それを書いてどうすんのっつう話じゃん。このおれがそんなもん書いてて楽しいと思うか? 心温まるほっこりした瞬間、とかさ。むかつくジジイに舐められた話とかさ。顔がむかつくババアとすれ違ったとかさ。顔がむかつく野郎と睨み合いになったとかさ。全員顔がむかつくからあんまり外に出たくないとかさ。なに? そういう話が良いわけ? 違うよな。阿部ちゃんの文章を読んでいるやつにそんなやつはいない。阿部ちゃんそう信じてる。

 おれみたいなやつが書く文章を読んでいるのは、嫌われ者、拗ね者、ひねくれ者、日陰者、そんなもんだろう? リアルでもインターネット上でも仲間に入れてくれって言い出せないんだよな?

 上等だよ。おまえら全員合格だよ。おれ自身はなにひとつ当てはまっちゃいないが、おれはおまえたちの味方だから。生きづらいよな? うんうんわかるよ。こうなったのも、おまえたちが悪いんじゃない。ただ運が悪かったんだ。それだけの話だ。だから誰かを恨んだりするのはやめろ。世の中をひねた目で見るのをやめろ。まっすぐに見て、まっすぐに受け止めて、豪速球を投げ返してやれ。打てるもんなら打ってみやがれってよ。結局なにが言いたいかというとだな、書くことがなにもねえって言いたいんだよおれは。わかれよ。だから駄目なんだおまえは。


 言い過ぎた。お口直しに霊的な話でもしようか? おれはスピリチュアルな話とかちょっと前までは大嫌いだったわけだ。いんちき臭いし、陰気臭いし、とにかくもう臭いでしょう、連中。

 でも阿部ちゃんちょっと考え直した。確かにいんちき野郎がほとんどだと思う。特にYouTubeとかではしゃいでる連中は例外なくいんちき詐欺師糞野郎だと断じてしまって構わないと思う。クズの中のクズだと斬って捨ててしまっていいと思う。

 おれいまひとり頭に浮かんでるんだけどさ、あいつ腹立つ顔してるもんな~。ぶん殴ってやりたいね。いんちきテスラ缶をケツの穴から詰め込めるだけ詰め込んでやりたいね。やつの肥え太った身体に銅線をぐるぐる巻きにして高圧電流を流してやりたいね。

 確かにあんな下衆連中に引っかかるやつも引っかかるやつだけどさ、そういうやつらって大抵はひどく傷ついたり裏切られたりしたことがあったり、元々精神的に不安定だったりする人たちじゃん? 多分。憶測全開だけど、的外れではないと思うわけ。

 そんな連中の弱みにつけこんで金儲けしようって魂胆が本当に汚いよね。1000000歩譲って、てめえらのいうスピリッチャーな話がモノホンだとしてもよ、天罰的なもの喰らうのって真っ先におまえらじゃねえのか。おまえらのどこをどう切り取ったら聖なるもんが出てくるんだよ。俗世的な欲望にどっぷりじゃねえかクソどもが。卑しい顔しやがってよークソ野郎ども。地獄の餓鬼もてめえらよりは意地汚くはねえわ。あ、ものすげえ腹立ってきた。ちょっとアンガーマネージメントしてくる。


 失礼。いんちき野郎どものことは忘れてくれ。その辺うろついてたら、シメちまってくれ。そういうやつらじゃなくて、単に霊が見えるって主張する人、いますでしょう? そういう人たちの話ね。

 おれ、酒井若菜さん好きなのよ。可愛いから。すごく可愛いから。理由はそれだけなんだけどね。で、最近酒井若菜さんがYouTubeチャンネルを開設したわけだ。その名も酒井若芽チャンネル。(若菜じゃないよ。若芽だからね。可愛らしいネーミングだよ)そりゃおれは観るよね。観させて頂くよね。

 その中で、酒井さん、霊が見えるってことを言っていたわけです。おれは酒井さんの見た目が好きなだけで、酒井さんがどんな人だろうが、関係ないですよね、本来ならば。だけど、がっかりしちゃったんですよ、おれは。あ~そっち系か~、いてえなぁ、ってさ。失礼な話ですよね、まったく。でも、聞いてください、酒井さん。そのあと考えたんですよ、おれ。いえ、ぼく。

 だってですよ。酒井さんってしっかりした方なんですよ。理解されているはずなんですよ。霊を見ることがあるって言うことで、どう思われるのか。ぼくのような考えの人間がどういう反応をするのか。しっかりと理解されていると思うし、嫌な経験をしたことだってあると思うんですよ。馬鹿にされたり、鼻で嗤われたりしているはずなんですよ。それでもそう言うってことはですね。これはもう真実だということなんです。それ以外に考えられませんから。酒井さんは嘘がつけない方なんでしょうね。誠実な方なんですよ。これはきっと、同じように苦しい思いをしたことのある人へのメッセージなんです。あなただけじゃないよっていう。優しい方なんだ本当に。


 ここからちょっと真面目な話。これは霊がいるいないの話じゃないからな。体験をするかしないかの話だから。おれとかおまえみたいな、鈍化した感覚の持ち主には捉えられないものを、捉えられる人がいるっていうだけのことだから。その捉えたものが霊かどうかは知らないよ。でも現実なわけよ。捉えられる人にとってのね。体験しているわけだから。

 霊(かどうかは知らないが他の人が見えていないもの)が見える人にとっては、もう目の前にあるんだもん。存在するだろう、そりゃ。だから、そんなもの見えるはずがねえだろ嘘つき、なんて言って、はなっから否定してはいけないってことよ。見える人と見えない人がいるってだけの話だからさ。目に見える現実ってひとつじゃないのよ。人それぞれなのよ。現実なんてそんなもんよ。わかったか、阿部ちゃん。はい、わかりました。酒井若菜さんにはマジで勉強させて頂きました。

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