(83)違い
涙といっても、その内容には自ずと大きな差がある。今日は涙の違いをテーマにしたお話です。^^
とある大手グループの総帥、団子は妻に浮気がばれたことで豪邸での暮らしが日々、居ずらくなっていた。
「ア~~タッ! どこへ行ってらしたのっ!!」
「どこへ? ってお前。ははは…この前言ってたグループの夕食会じゃないか…」
風向きが怪しくなってきたのを察知してか、団子は妻の詰問をやんわり暈した。確かにその日、グループ夕食会に団子は出席していた。だが、問題はそのあとの行動だった。いつものように、とあるマンションを訪れていたのである。あんなことやこんなことがあったのか? までは妻が探偵社に依頼した素行調査では分からなかったが、翌日早朝のご帰還ともなれば、妻にも薄々は分かろうというものである。それが強い詰問の言葉尻に現れていた。
「確かに行ってらしたようですわねっ! そのあと、どうされましたっ!?」
「どうされましたってお前、帰って来たろっ! 運転手の月見に聞いてくれ…」
「確かに帰ってこられたようですわねっ! そんなことは分かってますっ! お時間はいつ頃でしたのっ! それを訊ねてるんじゃありませんかっ!」
「い、いつ頃だったかのう…」
団子は妻の厳しい詰問に心で涙した。
一方その頃、しがない町工場の社長、葛餅は今月、社員に支払う給料の金策が思うに任せず、心で涙していた。
同じ涙でも、このような深さの違いがある訳です。^^
完




