表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/100

(13)物語

 涙なくしては語れない物語がある。その物語自体が悲しくて、涙なくしては語れないとはいえ、朗読する人物によっては大きな差異が生じる。要は、語り手の手腕の違い、分かりやすく言えば演技力の優劣・・によって引き起こされる聞き手の感じ方の違いだ。

 語り手が悲恋物語を朗読する小劇場である。そろそろ開演が近づてきている。隣り合った席の二人の来場者が小声で話をしている。

「今日の語り手は女優の甘口辛美(あまぐちからみ)さんらしいよ…」

「そうなの?」

「ああ、彼女の語り口調は三本の指に入るくらい(すご)いからねぇ~」

「ただでさえ悲しい話だから、彼女じゃダダ泣きだっ!」

「いつも観客の嗚咽(おえつ)(やかま)しくなるらしい」

「じゃあ、今日もそうなる可能性が?」

「ああ、あるあるっ! 僕はそう思って、いつも耳栓(みみせん)を持ってきてるんだ」

「耳栓してりゃ、話が聴けないんじゃ?」

「ははは…耳栓するのは、よほど五月蠅(うるさ)い場合だけさっ!」

「なるほど…」

 そうこうするうちに、開演のベルが鳴り、甘口辛美が登壇した。そしてスポットライトが照らす椅子に静かに座った。

 やがて、館内は嗚咽の渦が始まった。耳栓の客も嗚咽している。

 物語は演技力で涙を誘うのである。^^


                  完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ