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(12)連鎖(れんさ)

 涙が涙を呼ぶ・・という涙の連鎖(れんさ)がある。

 とある小学校のPTA会場である。ダレたような長い討議が終わり、ようやく出席したPTA役員達は解放されようとしていた。その中の隣り合わせた椅子に座る二人の奥様の会話である。

「まあ、そうなんですのっ!? 石綿様の旦那様が…」

「ええ、お可哀そうにお亡くなりに…」

「ええ、それも前途を苦にしての自殺らしいですの、ぅぅぅ…」

「いい旦那様でしたのにね、ぅぅぅ…」

 涙が飛び火し、涙の連鎖が始まろうとしていた。そこへ、二人のすぐ後ろに座る別の奥様が話に乗ってきた。

「まあ、石綿様の旦那様がっ! ぅぅぅ…」

 その声に、二人は涙しながら思わず後ろを振り返った。

「そ、そうなんですのよ奥様、ぅぅぅ…」

「ぅぅぅ…まだ、お若いのに」

「リストラが原因だったそうですわ、ぅぅぅ…」

「まあっ! 石綿様の旦那様がっ! ぅぅぅ…」

 その隣に座るまた別の奥様が、すぐ後ろに座る別の奥様に驚きながら(たず)ねた。

「ぅぅぅ…そうらしいですわ」

 その連鎖は次第に広がり、会場を埋め尽くしていった。やがて会場は涙の連鎖で涙だらけになった。登壇して話をするPTA会長は、自分の話が涙するような内容ではないから、どうも合点がいかず、困惑して話を中断した。

 涙の連鎖は、ややもすると会合を中断させるウイルスのような目に見えない力を秘めているから(こわ)い。^^


                  完

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