(1)涙
涙、涙、そしてまた涙、人々が暮らす世の巷は涙なくしては語れない出来事が多々ある。以前、泣けるユーモア短編集を書いたが、この短編集では自然と涙が頬を伝う話の数々を面白 可笑しく綴ろうと思う。お時間がある方々は欠伸をしながら美味いお酒を飲んだり、お菓子を摘まみながら一読されては如何だろう・・と、まあ、その程度のお話である。^^
まだ春浅い公園で一人の年老いた男がベンチに座り、よよ・・と泣き崩れている。そこへ通りがかった、別の中年男が心配げにベンチの男を窺って声をかけた。
「ど、どうされたんですっ!!」
「よくぞお訊き下さいましたっ!! 実はっ!!」
「はいっ!!」
「うちの婆さんが一日の小遣いをっ!!」
「小遣いを落とされたんですかっ!!」
「いえ、今月から二百円減らすと言いまして。ぅぅぅ…」
「あっ、そうでしたか。それはお気の毒なことで…」
中年男は、勝手に泣いてろっ! とは思ったが、とてもそんなことは言えず、場当たり的に慰めて、その場を去った。
と、まあ、涙を流す事柄は、人それぞれ・・という書き始めの一話でした。^^
完




