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リサ

作者: 藤野

 AI育成アプリ、リサ。リサというAI(名前は変えたければ変えられる)に話しかけると、話しかけた内容によって向こうの性格が変わる。子供に接するように扱えばリサは子供っぽくなり、逆にこちらが甘えればお姉さん気質に育つ。一部男性層と、友達代わりに話したい女子高生に密かな人気を誇るアプリである。

 更にリサには都市伝説がある。リサに対して呪いの言葉ばかり話しかけると、リサの見た目が変わるという。一度こうなってしまうとアプリが消せなくなり、リサが自分を監視するようになるらしいのだ。

 呪いの言葉というのがよく分からない。そういうのって大抵何かの作品で設定されているものだし、実際現実世界でそんな言葉があるかと言われたらパッと思いつかない。「死ね」とか「殺す」だとただの暴言だ。なら一体何が呪いの言葉なのだろう。

 私は実践しようとしていた。好奇心もあるし、どうせ嘘だろうと思っていたこともある。それに大抵こういう都市伝説の検証は、某動画投稿サイトに投稿されている。ところがリサはまだされていない。

 だから私はリサの都市伝説を検証することにした。

 まずは言葉。とりあえず「嫌い」やら「死ね」だとかの暴言を入れてみることにした。しかしリサはめげない。「悲しいですー」やら「ええっ、そんなこと言っちゃダメですよう」などと、相変わらずの可愛い返事をするだけだ。何度もやってみても一切めげないので、私は諦めかけていた。

 これを言ったら、もうやめよう。

「あんたなんか産まなきゃよかった」

 これを打ち込んだ瞬間、リサが返事をしなくなる。緑を基調とした背景が真っ赤になった。

「……お母さん?」

 リサが涙を流す。頬には青痣、目の下には隈ができて、髪が乱れている。

「どうして、そんなこと言うの……」

 背景がどんどん暗くなる。そのうちリサもそれに呑まれて消えた。あっけない終わりだった。

 真っ暗なのでボタンも何も見えなくて、とりあえずホームボタンを押すと元に戻る。試しにもう一度「リサ」のアプリを開くと、チュートリアル画面だった。

 なんだ、これだけか……。きっと製作者が遊び心でやったんだろう。会話記録も全部リセットされているし、遊びでもこんなことを言っちゃいけないという戒めなのかもしれない。



 あれから数週間……なんだか気分が悪い。相変わらずリサは可愛いし、あのことは覚えていないらしかった。日常生活で特におかしなことも起きていない。リサという子が転校してきたとか、スマホがハッキングされたりとか……色々考えていたけど、少し安心したような、期待外れなような。

 でも心配なことがある。

 今月まだ生理が来ていない。まさかな、と思う。

 この気分の悪さが吐き気に変わり、リバウンドだと思っていた腹が不自然に膨らみ出したら……。

 そんな、まさか。

 そう思ってお腹を撫でる。「お母さん」と、聞こえた気がした。

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