9-6 2021-04-27-002
ネット会議の画面は真っ暗。
既に彼女はネット会議を抜けて、鈴木さんとランチに行ったようだ。
俺は自分を取り戻し、冷静に部長宛の返信を出した。
30日のアスカラ・セグレ社へ、彼女を同行して訪問する件を承諾するものだ。
続けて人事部長と総務部長宛に、出張扱いの詳細を知らせていただけるようにメールを出した。
他に新たな未読メールが無いことを確認して社内ネットからログアウトして、テレワークを終わらせることにした。
◆
台所に繋がる食卓で、いつもの実家の昼御飯を食べていると、
「どちらも可愛かったのう。」
バーチャんが彼女と鈴木さんを誉め始めた。
「二郎がどちらを連れてくるか楽しみじゃ。」
俺は全然楽しみじゃないけど?
ここで俺はイタズラ心が湧いてきた。
普段やたらと、見合いだ嫁だと俺を困らせてるバーチャんを、少しからかいたくなった。
「バーチャんはどっちが良かった?」
「なんじゃ。二郎は迷っとるんか?」
「迷よう以前だよ。バーチャんはどんな嫁さんが良いの?」
「ワシの嫁か?」
バーチャん。それは無理です。
「そうじゃなぁ~。エルフの娘は可愛いから好きじゃ。」
『エルフ』?
昨日の夜に『ドワーフ』を調べてた時に出てきた記憶がある。
確かドワーフは、エルフに対して不信感を抱いているとか書いてあった気がする。
「じゃが、エルフの男は嫌いじゃ。」
なるほど。やっぱりドワーフはエルフが嫌いなんですね。
「奴はワシの尻を触りよった。」
それがドワーフのエルフへの不信感の原因ですか?
「俺がエルフの娘を連れてきたらどうする?」
「エルフの娘は可愛いから良いぞ。」
あれ?ドワーフのエルフへの不信感はどうなったの?
「けど、エルフの娘を嫁に貰ったら、その娘の父親、エルフの男と親戚になるんだよ?」
「う~ん。それは悩ましいのう。」
よし!バーチャんから一本取った気分だ。
「じゃが、二郎が好きになったなら良いぞ!」
あれ?技あり止まりですか?
◆
昼御飯の洗い物を済ませ、お爺ちゃんの部屋に戻る。
自分のノートパソコンを開き社内ネットにログインする。
時計を見れば13:02。
会社の皆はランチから戻った頃か。
社内メールを見てみたが、新たなメールは入っていなかった。
さすがに皆からの返信が届くのには早すぎたな。
ここでいつもならばログアウトしてテレワークを終わらせるが、敢えてログアウトしない。
続けて『国の人』が持ってきたノートパソコンを隣に並べ起動する。
これで座卓の上には2台のノートパソコンが並んだことになる。
ノートパソコン2台を前にして、腕を組んで考えてみる。
「このノートパソコン2台を纏められれば、大阪には1台だけ持って行けば済むな。それに有給休暇が終わって東京のアパートに戻ったらどうする?」
座卓の脇に置いたPadに目をやる。
「お古なら持っていっても良いか?」
そんなことを考えたが、なによりも確認するべきことがある。
Padを使って実家の外から、実家のLAN-DISK環境に接続できるかどうかだ。
それと自社製品を実家の外からも使えるかどうかだ。
『国の人』は実家の外から翻訳された日記をLAN-DISKに登録しているくらいだから、実家の外から実家のLAN-DISK環境には接続できるのだろう。
そうしたことができないのならば、大阪には『国の人』が準備したノートパソコンを持っていっても無意味だ。
また有給休暇が終わって、Padを都内のアパートに持って帰っても無意味だ。
ここまで考えて、耳元で悪魔が囁いた。
"日記に書こうぜ(by 悪魔"
そうだな。
日記を読むのに使っている自社製品やPadが使える環境は、東京に戻っても維持したい。
そうした悩み事を日記に書いたら『国の人』はどうするのかな?
ーーー
2021-04-27-002
俺が使っている、日記の検索を容易にする製品は素晴らしいものだ。
この製品の機能をフルに使うことで、日記からの学習が円滑に進んでいる。
祖母の桂子が使っていた古いPadを借りているが、これを実家の外でも使えるのだろうか?
今の有給休暇が終わって東京に戻ってからも、日記からの学習は継続するだろう。
その際には継続してPadを使いたい。
実家の外からもPadが使える方法があるならば、御陵の管理を担当している方から話を聞いてみたい。
Jiro
ーーー
これって日記なのか?
そんな思いもあるが、俺自身が始めて自分から書いた日記だ。
深く考えるのはやめよう。
日記を書き終えた時、再び囁き声が聞こえてきた。
"あ~ぁ書いちゃいましたね(By天使"
居たんならもっと早く出て来いよ。
"二郎さんもやるわね(若奥様"
えっ!若奥様の声が聞こえた気がする。
"ホッホッホ"
あれ?サンダースさんの声も??