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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月27日(火)☀️/☁️
94/279

9-1 週間天気予報


「バーチャん。おはよう!」

「ありゃ。もう起きたんか。」


 台所で朝御飯の準備をするバーチャんに声をかける。

 俺は既に起きて顔も洗い着替えも済ませ布団もたたんだ。

 もちろん座敷で神棚に手を合わせ、仏壇にも合掌済みだ。


「もうすぐ出来るで。」

 バーチャんの作る味噌汁を覗くと、ワカメと油揚げだった。


 いつもの実家の朝御飯を食べながら、昨夜の『ドワーフ』についてバーチャんに聞いてみた。


「バーチャん。ドワーフについて教えて。」

「良かろう。日記には書いとらんで教えちゃる。ワシはなぁドワーフの血が入っとるんじゃ。」


 バーチャんの話では、バーチャんの祖母がドワーフだと言う。


人間♂+バーチャんの祖母♀️

   |

 バーチャんのお母さん♀️+人間♂

            |

          バーチャん♀️


 元の世界で魔王により親族全てが殺され、バーチャんは生き延びたが魔王国の大魔導師に拾われたそうだ。

 バーチャんのいた集落では、人間とのハーフやクオーターは当たり前だったらしい。


「やっぱり、みんなお酒が好きなの?」

「無類の酒好きじゃ。」


「それと、大事なことだけど。」

「なんじゃ?」


「『国の人』にはドワーフってばれてるの?」

「知っとる。」


「大丈夫なの?」

「ドワーフは二日酔い知らずじゃ。」


「いや。そうじゃなくて、『国の人』から接待とかされた?」

「ああ~ その心配をしとるのか?」


「そう。酒で酔わしてサンダー…ケンタさんや若奥様の話を聞き出そうとか、『国の人』って何かしてきそうじゃん。」

「そこは、お爺さんが守ってくれたんじゃ。」


 ああ、あり得そう。

 バーチャんとお爺ちゃんは若くして、礼子母さんを切っ掛けに結ばれている。

 日本で飲酒が許される年齢の頃には、既に零士お爺ちゃんと出会ってるんだ。

 『国の人』が接待を申し込んできても、お爺ちゃんがガードしてたんだな。


 けど、お爺ちゃんが亡くなってからは?


「けどなあ、お爺さんが亡くなって暫くして食事のお誘いがあったんじゃ。」

「それって接待でしょ?」


「お爺さんの言い付けがあったんで断ったんじゃ。」


 お爺ちゃん!素晴らしい!

 バーチャんに『国の人』から接待がかかるのを予想してたんだ。


「ワシはお爺さん一筋じゃ。お爺さんの言い付けは必ず守るぞ。」


 バーチャんも素晴らしいよ。

 お爺ちゃんとの約束を守り通すなんて。



 朝御飯の洗い物をしている間に、バーチャんは洗濯物を干し始めた。

 洗い物を終えた俺が手伝うかと聞けば、それより部屋を掃除しろと言われてしまった。

 帰省して一週間。

 掃除を一度もしていないことに気がついた。

 寝泊まりしている部屋を掃除していると、バーチャんが布団を干せと言ってきたので布団も干した。

 布団干しは力仕事だから、バーチャんの布団も俺が干した。

 力仕事ついでに、バーチャんの要望で来客用の布団も干した。


 母家に戻り、お爺ちゃんの部屋も掃除する。

 白い増設コンセントを思い出し、部屋の中を探し物をするように念入りに掃除した。

 結局、何も出てこなかった。


 お爺ちゃんの部屋の中を見渡す。

 大きめの液晶テレビ。

 それを乗せているテレビ台。

 中に納められているLAN-DISK。

 ノートパソコン。


 どれもが『国の人』が準備した物だ。

 盗聴器を仕掛けようとすれば、全てに仕掛けられる。

 ノートパソコンなんてカメラを有効にすれば映像まで得られる。

 そんな仕掛け放題の中で、メガネ執事さんとメイドさんが白い増設コンセントを探し出している。


 俺が探し物をするように念入りにやっても、メガネ執事さんとメイドさんの漏れを調べる失礼な行為だと考えを改めた。


 お爺ちゃんの部屋の掃除を終えて廊下に出ると、バーチャんがトイレ掃除をしていた。

 座敷と仏間を覗けば埃一つ落ちていない。俺は台所でお茶を入れ仏間に運びバーチャんを待つ。


 程なくしてバーチャんが仏間に来たので、飲み頃に冷めたお茶を差し出す。

 バーチャんが礼を言いテレビをつけると、『dボタン』を押して週間天気予報を見てブツブツ言い始めた。


今日    ☀️/☀️

明日    ☀️/☁️

4月29日(木) ☀️/☀️

4月30日(金) ☀️/☁️

5月1日(土) ☁️/☂️

5月2日(日) ☂️/☁️

5月3日(月) ☁️/☀️


「土曜の雨が早まりそうじゃな。やっぱり明日中に収穫せんと…」

「新玉ねぎ?」


「明日は取って干すから、明後日に借りるか?」

「ああ、トラクターを借りる話だね。」


 そう言ってバーチャんがスマホを取って電話をし始めた。あの整備工場のオヤジさんに電話しているのだろう。


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