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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月19日(月)☁️/☁️
9/279

1-8 神棚と仏壇


 軽トラの車内に乗り込むと、狭い車内は持ち帰りのマクドの匂いで満たされる。


『お爺さんは、ポテトが好きでなぁ。』


 そう言ってバーチャんが追加でポテトを購入した。

 今は車内にバーチャんと二人。

 運転席にはバーチャん。

 助手席には俺が座っている。


「俺が運転しようか?」


 俺はバーチャんの年齢を考えて、帰りの運転を申し出てみたが断られた。


「大丈夫じゃ。年齢なら心配するな。この車には踏み間違い防止装置が着いとる。」


 あの整備士のお兄さん。

 もといマクドの店長さん、なかなか気がつくじゃないか。

 車体はショッキングピンクだけど。


「それに、この車は馴れんと乗りこなせん。」


 そう言ってバーチャんがエンジンをかけたがエンジン音が静かだ。

 車が動き出しても軽トラ特有の唸るようなエンジン音が聞こえてこない。


 整備状態が良いからかな?


「バーチャん。この車…」

「静かじゃろ。ハイブリッドじゃ。」


 軽トラでもハイブリッド化していることに驚いた。

 色はショッキングピンクだけど。


 それにしても、狭い車内にマクドの匂いが充満するのは空腹に堪える。

 実家までは直ぐなので少しの我慢だと考えていると、バーチャんがきいてくれた。


「二郎や。腹が空いとるなら食っていいぞ。」

「いや。お爺ちゃんのポテトもあるし、お爺ちゃんに挨拶してからにしたい。」


「…… そうか。そうせい。」



 俺は実家=バーチャんの家に入ると座敷へと進み、まずは神棚に手を合わせた。

 神様への挨拶を済ませると、一旦廊下を出て仏間に入り、仏壇に向かいつつ、お爺ちゃんと両親の位牌に手を合わせる。

 これは俺が幼い頃から大学入学で東京へ上京するまで、続けてきたことだ。


 バーチャんも同じ様に神棚から仏壇と手を合わせると、一人で廊下の奥へと進み、お爺ちゃんが書斎に使っていた部屋へフライドポテトを持って行った。

 お爺ちゃんの好物を供える際にはいつもしていることだ。


 俺は仏間で足をのばして寛がせてもらった。

 マクドで購入した物を袋から出しながらバーチャんが戻ってくるのを待つ。


 スマホを取り出してみたが、着信もLINEも入っていなかった。


 室内を見渡せば、以前に帰省したときと何も変わっていない。

 とても懐かしい感じだ。


「待っとらんで、先に食べんさい。お茶でも入れるけん。」


 廊下からバーチャんが声をかけてくれる。

 俺は空腹に動かされマクドを食べ始めた。

 久しぶりに食べると旨いな。

 空腹だから余計に旨く感じるな。


「二郎。いつまで泊まれるんじゃ?」


 お茶をいれたバーチャんが座敷に入ると、マクドを食べる俺の向かいに座る。


「休みは3週間もらった。」

「そんなに休んで大丈夫かえ?」


「会社に席が無くなるかもな?」

「そうか。そんな会社ならその程度じゃな。」

 バーチャんはマクドを食べる俺を見ながら、ニコニコしている。


 この感じ、子供の頃と同じだ。

 何もストレスを感じない時間。


 俺は帰ってきたことを実感した。


 帰ってきて本当に良かった。

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