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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月25日(日)☀️/☁️
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7-5 御焼香


《神に会える ○○日13時集合》


 若奥様。確かに今日は○○日です。

 『神に会える』って…


 もしかして、目の前で胡座をかいてるサンダースさんが、神=神様なの??


「ホッホッホ。信じられんか?」

 サンダースさん。口調が神様っぽい。


「わかりにくかった?」

 はい。若奥様。俺には無理です。


「今日は何の用じゃ。」

「桂子さん。勾玉を二郎さんに送ったでしょ。」


「ちっ。知っとったんか。」

「神は何でもお見通しよ♪」

 若奥様。そのセリフは某ドラマの…


「二郎さんが勾玉を受け取るみたいだから、そろそろかなと思って来たんだけど?」

「まだじゃ。」

「ホッホッホ。まだ早かったか。」


 この3人が何の話をしているかわからない。


 勾玉を受け取る?

 宅配便で受け取りましたけど?

 バーチャんが「預かっとけ」と言ったけど?

 結果的に持って帰ってきたけど?


「二郎は勉強を始めたばかりじゃ。」

「じゃあ、二郎さんが継ぐんでしょ?」


 『継ぐ』?俺が?


「ホッホッホ。それは二郎さんが決めることですよ。」

「けど、桂子さんは送ったでしょう。」

「戻ってくるか、試しただけじゃ。」


「ちょっと待ってください。」


 俺は思いきって3人の会話に割り込んだ。


「『継ぐ』って何ですか?それに勾玉も知らないものだし…」

 俺がそう言うとバーチャんは首をふりながらうつむいた。


「二郎。巻き込んですまんかった。」

 バーチャん。謝らないで。


 俺とバーチャんの様子に、サンダースさんと若奥様は顔を見合わせる。


「それに最近は勾玉も泣かん。電池切れじゃろ。」

「ちょっと失礼しますね。」


 バーチャんの言葉に若奥様が立ち上がり、神棚に手を伸ばして勾玉の納められた箱を取る。

 それを座敷机の中央に置くと、箱の蓋を開けて勾玉を取り出した。

 表裏を確かめるように勾玉を手の上で返すと、両手で包み胸元に寄せた。

 すると若奥様の胸元に寄せた両手がほのかに明るくなった。


 その時、俺は一瞬だが目眩を感じた。

 思わず座敷机に両手を着いて体を支えてしまった。


「これこれ急にやるでない。」

「あら。ごめんなさい。」

「二郎。大丈夫か?」

「大丈夫。ちょっと目眩が…」


 若奥様が勾玉を箱に戻す。

 戻された勾玉は、前よりも鮮やかな色合いになった感じがする。


「切れとったろ。」

「切れかけてましたね。もう大丈夫です。」

「ホッホッホ。」

「…(若奥様。何をしたの?」


 若奥様は勾玉の入った箱の蓋を閉めると再び神棚に戻し、軽く神棚にお辞儀する。


「用は済んだか?」

「そうね。向こうも終ったようだし。」


 バーチャんと若奥様が言葉を交わすと、座敷戸の向こうから声がかかった。


「失礼します。」

 メイドさんの声だ。


 その声に動かされ、サンダースさんも若奥様もバーチャんも座り直す。

 慌てて俺も座り直す。


 スルスルと座敷の戸が開き、メイドさんが廊下に座して頭を深く下げている。


「あなたの方は終ったの?」

 若奥様が優しげに声をかける。


「はい。桂子様。勝手ながら焼香させていただきました。」

 焼香?仏間でお線香を上げてたのか。


「いつでも良いで。上げに来い。」

 バーチャんが当たり前のように答えた。


「ありがとうございます。」

 メイドさんはバーチャんに礼を述べながら再び頭を下げた。

 その脇にはメガネ執事さんが微動だにせず立っていた。


「今日は突然になって、ごめんなさいね。」

「では、またの機会に。ホッホッホ。」


 サンダースさんがそう告げると、若奥様と共に立ち上がり座敷を出て行く。

 俺とバーチャんがその後ろに続く。



 玄関の土間口手前の廊下でバーチャんと並んで正座し4人を見送る。


 いつの間にやら開け放たれた玄関の両戸から4人が出たので、外までお見送りをと思い俺は立とうとする。

 するとメイドさんが手を突きだし制してきた。


「座敷の茶を下げず、申し訳ありません。」


 そうメイドさんは告げると、静かに玄関の両戸を閉めた。


 閉められた玄関の向こうでは、車が土をはむ音がしたが直ぐに静かになった。


 バーチャんは無言のままで立ち上がり仏間へと入って行く。俺も続いて入る。


 バーチャんは仏壇に合掌している。

 その仏壇では一本の線香が燃え付きようとしていた。


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