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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月25日(日)☀️/☁️
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7-2 授かり婚


 あれから俺は、お爺ちゃんの部屋で『国の人』が持ってきたノートパソコンを操作し続けた。


 一郎父さんと礼子母さん、二人の軌跡を追うのが目的だ。


 礼子母さんは、バーチャんの話のとおりに『米軍の門』から出てきたのが読み取れた。

 同じ『米軍の門』から出てきた零士お爺ちゃんとは違って、『レンガ』とか

『剣と鎧』や『魔物』と言う順番ではなく突然に幼女(礼子母さん)が出てきたと記されている。

 そしてバーチャん同様に、別世界の言葉を幼い礼子母さんが口にしたことから、お爺ちゃんとバーチャんに預けられる。

 後に一郎父さんが『淡路陵の門』から出てきた際には、礼子母さん自身が『米軍の門』から出てきた様子と照らし合わせる様なことが書かれた日記を見つけた。

 やはり一郎父さんも別世界の言葉を口にしたことから、礼子母さん同様にお爺ちゃんとバーチャんに育てられている。


 礼子母さんが次に『米軍の門』と関わったのは、高校を卒業して留学と称して渡米してからだ。

 米国の大学に通いながらも『米軍の門』の実験に参加しているし、長期の休みなどは全てが実験への参加となっていた。


「母さんが『米軍の門』の実験に参加したのは何が目的だったのか。」


 その事が俺の中で強い疑問になった。


 検索結果から読んだ限りだが、礼子母さんの日記で『米軍の門』が出てくるのは、一郎父さんが『淡路陵の門』から出てきて以降に増えている。

 バーチャんが話していた勇者繋がりで、礼子母さんが一郎父さんから何かを聞いたからだろうか。


 驚いたのは、留学が決まった時の喜びが書かれた日記だった。

 『米軍の門』を開く実験に参加できることに、礼子母さんは強い喜びを日記で記しているのだ。

 また一郎父さんは、留学が決まって喜ぶ礼子母さんのことを日記に書いていた。

 それは、礼子母さんの望みが叶うことを願っているようだった。


 礼子母さんは留学で『米軍の門』に関わった後、大学を卒業してからも継続して実験に参加していた。

 けれどもバーチャんが話していたとおり、米国の『米軍の門』に関する方向性が変わり日本に帰国している。


 そして帰国した礼子母さんは、一郎父さんと結ばれ俺が生まれている。


「これって『授かり婚』な気がする。」


 俺は自分の出生を学んでしまった。


 礼子母さんと結ばれた一郎父さんだが、『淡路陵の門』から離れることを考えている様子が日記には一切書かれていない。

 けれども一郎父さんと礼子母さんは共に『米軍の門』の実験で亡くなっている。

 これが唯一、一郎父さんが『淡路陵の門』を離れた話となっていた。


 ガラリ。


「二郎。昼飯じゃ。」


 バーチャん。突然入ってくるなよ。



 昼飯は『いなり寿司』と豚汁だった。

 バーチャん、豚汁3回分作ってたのね。

 美味しいから良いけど。


「二郎や、鯵はどうする。」

「バーチャんは晩御飯に食べれる?」


「さっき見たら、賞味期限が今日なんじゃ。」

「なら、食べよう。俺が焼くよ。」


「ほな。任せるぞ。」

「おう。後始末も任せて!」


 バーチャんはニコニコ顔だ。


 その笑顔の手前には、晩御飯にもう一度食べれば無事に消化できそうな量の『いなり寿司』が残っていた。


 今日の昼御飯の洗い物は少ない。

 昨夜の晩御飯、今朝の朝御飯と同様で、豚汁を飲むのに使ったお椀と取り皿に箸ぐらいだ。


 洗い物を終えて新たにお茶を入れて、仏間でくつろぐバーチャんの所へ運ぶ。

 Padを操作しようとするバーチャんに声をかける。


「バーチャん。」

「ん?なんじゃ?」


「明日の予定は?」

「そうじゃのう、今日は休んだで畑じゃな。」


「買い物は?」

「忘れとった。すき焼きはどうする。」


『こんにちは~』


 玄関の方から声がする。

 思わずバーチャんと顔を見合わせる。


「バーチャん。誰?」

「いや。予定は無いはずじゃ。」


「俺が出る。」

「いや、待て。」


 立ち上がろうとするとバーチャんに制された。

 それでも俺は立ち上がる。

 物騒な話だが、予定の無い来客は警戒するべきだ。

 バーチャん一人で対応させるわけには行かない。

 結果、バーチャんと共に仏間を出て玄関へと向かう。


『ご不在ですか~』


 女性の声。


 玄関の前まで進むと、バーチャんがいきなり正座して深々と頭を下げた。


「よう来てくださった。」

「まもなくお邪魔しますが、宜しいでしょうか?」


 俺は正座して頭を下げるバーチャんの脇で立ちつくした。


 普段は閉めているはずの玄関の両戸が開かれ、光が差し込む土間口には見覚えのある服装の女性が立っていた。

 俺が帰省する際に出会ったコスプレ集団にいた、メイド服姿の若い女性と同じ服装だったのだ。


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