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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月24日(土)☀️/☀️
74/279

6-6 湯上がりビール


 今日の晩御飯の洗い物は少ない。

 豚汁を飲むのに使ったお椀と取り皿に箸ぐらいだ。


 洗い物を終えて新たにお茶を入れて、仏間でくつろぐバーチャんの所へ運ぶ。

 俺とバーチャんでお茶を啜りながら、一言も喋らずに互いにPadを操作する。


 ふっ。

 端から見れば、会話の無い家族の風景みたいだろうな。

 そんなことを考えていたら、バーチャんが話しかけてきた。


「二郎は今日はもう風呂は入らんか?」

「俺は夕方に入ったから、今日はもう入らない。」


「じゃあ、ワシが入ってくるで。ビールはその後じゃ。」

「ああ。それで問題ナッシング♪」


「なんじゃその発音は(笑」


 バーチャんは仕度をして風呂場に向かった。



 俺は相変わらず仏間でPadを操作しては日記を読む。

 先ほどから自社製品の簡易INDEXと応用INDEXの機能を駆使しているのだが、日本語では不便な感じがしてきた。


 ・淡路島の門

 ・淡路陵の門

 ・淡路の門


 これらの3つの言葉(3語)だ。

 今の俺の知識では同じだと思うが、日本語の表記方法というか「語句」が異なるのだ。


 「語句」が異なるため、自社製品の簡易INDEXには3語とも登録されている。

 応用INDEXも簡易INDEXに3語登録されているので、それぞれを見れば使える。


 けれども日記全体を見通す為には、3語を駆使するため3回の操作が必要になるのだ。


 物は試しと同じファイル名で英語版の日記を見てみると


 ・淡路島の門 = Gate of Awaji Island

 ・淡路陵の門 = Gate of Awaji Mausoleum

 ・淡路の門 = Gate of Awaji


 やはり英語版でも表現に使われている語句が違っている。


 う~ん。

 どうして使っている言葉が違うんだろうと、それぞれの日記の前後を読んでみて原因がわかった。


 日記の作者が違っているのだ。

 それと翻訳の方向が違うのだ。


 『淡路島の門』の言葉は、米軍の関係者が英文で「Gate of Awaji Island」と記した物を翻訳しているようだ。

 『淡路陵の門』の言葉は、米軍の関係者がバーチャんが出てきた調査を進める中で出てきている。

 それと作者が不明だが『陵の門』の言葉も見つかっていることから、日本語で書かれたものだろう。

 これは俺の個人的な考えだが、『淡路陵の門』の言葉は「門が天皇陵の中にある」ことに敬意を払っているからだと思う。

 『淡路の門』の言葉は、全般に渡って使われている感じがする。

 しかも、お爺ちゃん、バーチャん、礼子母さん、一郎父さんと全員が使っている感じがする。

 もしかしたら日記を翻訳した人が、一概に『淡路の門』の表現にしたのかもしれない。


 俺のように「門とは何か」を学ぼうとする立場からすれば、ありがたい。

 だが、故人の日記を読むと言う観点からすると、寂しい。


 バーチャんの翻訳の監修では、この付近はどう折り合いをつけてるのだろう。

 そんなことを考えていたら、バーチャんがビール瓶とグラスを持って仏間に入ってきた。


「二郎。飲むじゃろ?」

「ああ、飲む。それよりバーチャん」


「まずは飲んでからじゃ!」


 制されてしまった。


 その時に俺は気がついた。


 俺がバーチャんの心の折り合いを心配してどうする。

 バーチャんは前に言ってたじゃないか、


〉日記には『門』に関わったお爺さんや一郎、それに礼子の『思い』が詰まっとる。

〉それを嘘偽り無く残すのは3人の供養になるんじゃ。

〉そうした気持ちも持って欲しいぞ。


 そうだよ。

 俺がバーチャんの心の折り合いを心配するより、俺が日記から「門とは何か」を学ぶことこそが3人の思いに触れられるんだ。

 語句が3種類だとか小さいことだ。


「ぷはぁ~。二郎は飲まんのか?」

「飲む飲む。」


 それにしても、バーチャんは毎日の湯上がりビールで大丈夫なのか?


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