6-3 後作
「二郎くんのおかげだよ。」
「二郎が役に立ったか。良か良か。」
オヤジさんに誉められ照れてしまう。
店長は笑っている。
バーチャんも嬉しそうだ。
予定よりも早く作業が終わった。
整備工場親子の畑は全て耕し終わっている。
この後に苦土石灰を入れて、もう一度耕すそうだ。
バーチャんの畑も、同じ様にやってくれると言うので甘えることにした。
「そろそろ飯にせんか?持ってきたで。」
「桂子ばあちゃん。ありがとうね。」
「二郎くんまで借りて飯付きは助かる。」
バーチャんの飯の提案に、整備工場親子は喜んでくれた。
ちょっと俺も嬉しい気分だ。
「二郎や車から番重ごと持って来れるか?」
バーチャんの指示でショッキングピンクの軽トラに行く。
軽トラに積まれた番重には、「いなり寿司」が詰められたタッパーとペットボトルのお茶が数本。
さらには湯呑みまで準備されていた。
バーチャんの指示どおりに番重ごと取り出し、整備士親子が敷いてくれていたブルーシートまで運ぶ。
皆で青空の下で、いなり寿司を食べながら昼食である。
「やっぱり小松菜か?」
「俺は枝豆が良いと思うんだが。」
整備工場親子は新玉ねぎ後作談義だ。
それを聞いて俺もバーチャんの畑の後作が気になった。
「バーチャんは次は何を植えるの?」
「手間の掛からんのが良いんじゃが…」
そうだよね。
今は俺が居るけど、一時帰省だし。
「小松菜はどうだ。一緒にやろうぜ。」
「小松菜は取るのが面倒じゃ。」
オヤジさんの提案にあっさり答える。
「じゃぁ枝豆は?」
「もっと面倒じゃ。」
店長の提案もバッサリ切り捨てるバーチャん。
「ワシはサツマイモで考えとる。」
「「サツマイモかぁ」」
そこで親子で揃うんですか?
「サツマイモならマルチかければ雑草も少のうすむ」
「「確かに」」
そう言うもんなんですか?
「組合も今年は推しとるはずじゃ。」
「桂子ばあちゃん。それって誰から?」
「出た!桂子ばあちゃん得意の組合情報!」
組合情報?何ですかそれ?
「機械の貸し出しもするそうじゃ。」
「「なら、やってみるか!」」
いいんですか?
バーチャんの話を鵜呑みにして。
俺は3人の会話には入れなかった。
考えてみれば、3人とも兼業農家だ。
整備工場のオヤジさんは本業は車の整備だし、店長は本業がマクドだ。
バーチャんの畑の規模は、家庭菜園に近いし副業もある。
出来るだけ手間をかけたくないのも頷ける。
「俺は帰りに農協で聞いてくる。」
「おお、ついでに苗の手配も頼む。」
整備工場親子の会話をにこやかに聞いているバーチャん。
こうした付き合いがあるから、バーチャん一人でもなんとかなるんだね。
こうして昼食も終え、苦土石灰を入れてもう一度耕して畑仕事は終わりとなった。