5-8 部長からのメール
俺はお爺ちゃんの部屋に戻り、社内ネットにログインして、夕方のテレワークを始めた。
未読メールは12通。
情報共有が9通。
複数のCc:に、俺が混ざって入ってるだけなのでこれは読み捨てて良い。
パワハラ課長宛が9通。
以前にパワハラ課長を名指しで来たものに回答期限が書かれていた。
俺が複数のCc:に混ざって入ってる。
回答期限は次週の金曜日なので、課長が有給休暇から戻ってからでも大丈夫と判断して読み捨てる。
最後に部長から俺宛てが1通。
内容としては、以前に俺が担当していた会社と我社の状況を聞きたいと言うものだった。
以前に俺が担当していた会社と言うのは、山田に付き添って土下座謝罪に行った会社、自社製品のプレゼン用資料に導入実績として名があげられていた会社のことだ。
今、部長と接触するのは何とも危険な感じがする。
無視もできないので、どうしたものかと思案する。
できる限り丁重に断るべく、以下の事項を盛り込んだメールを書いてみた。
・パワハラ課長から担当変更の指示があった。
・今の担当は山田である。
・現在の俺はGW明けまで有給休暇中である。
・淡路島の実家に帰省中でテレワーク対応している。
・我社との状況などの詳細はパワハラ課長と山田が掌握している。
これで部長の矛先は俺から逸れるだろう。
それでも向かってきたならば、話だけでも聞いてみよう。
部長の意図を探るためにも。
腹を据えてメールを発信する。
Cc:にはパワハラ課長と山田、そして課員全員を含んでおいた。
もちろん彼女も含んでいる。
これで部長が何らかの動きをしても、彼女を通じて動向を知ることが可能だろう。
こうして俺は夕方のテレワークを終えた。
なんで俺は有給休暇中でもテレワークしてるんだ?
◆
晩御飯は昨日とおなじく、秋刀魚の開きを焼いた。
バーチャんは今日も煮物を作ってくれた。
俺の希望で今日の煮物は『茄子の煮物』だ。
晩御飯を食べていて、ふとしたことが気になった。
「バーチャんは肉って食べないの?」
「食うぞ。」
「俺が帰ってきてから、食べてないよね?」
「そう言えば食うてないな。二郎はどうなんじゃ?」
「俺の希望で焼き魚なんだから気にならない。」
「あ!二郎は食うとる。昨日の昼にマクド食うとる。」
確かに俺はマクドは食べたけど、俺もメスライオンに食べられました。
「明日は鯵じゃろ?」
「そうだね。」
「二郎もそろそろ肉が食いたいじゃろ。」
「食いたいかも…」
「じゃあ、明後日はすき焼きにするか?」
「よっしゃぁ~ すき焼きだぁ~」
「そう言えば、二郎はすき焼きだと喜んどったのぉ~」
「そうだったかなぁ~」
「中学の時に、昼飯抜いてすき焼きに備えとったのは笑えたぞ。」
「そ、そうだったかなぁ~」
「ワシの分の肉まで食いそうじゃった。」
「そ、そんな記憶はないけど…」
「ワシの肉は食わせんかったけどな。」
「そこは食べさせてください。」
こうして明後日の晩御飯が決まった。
◆
晩御飯の洗い物を済ませ(今日もグリルは磨いた)、仏間でお茶を啜りまったりする。
こうした時間も、バーチャんはPadから手を離さない。
バーチャんを見ていると、常にPadを操作している感じだ。
そんなバーチャんのPadを見て気がついた。
Padが新しいものになっているのだ。
「あれ?そのPad。新品だよね。」
「昨日持ってきたんじゃ。」
昨日『国の人』が来たときに持ってきたんですね。
「さっき、直しかたを見せてくれたときって…」
「そうじゃ。あの後に新品を試そうと出してみたんじゃ。」
「新品は、何か新しくなってるの?」
「前のは反応が鈍い時があったんじゃ。それものうなったし、文字も見やすくなっとる。」
「へぇ~」
『国の人』も大変だな。こうして新しいものに取り替える世話までするんだ。
待てよ。
さっきまでバーチャんが俺に見せてくれてたのは古いPadで、今目の前にあるのは新しいPadってことは…
「バーチャん。古いやつは?」
「そのテレビ台に入っとる。」
俺はバーチャんが指差したテレビ台から、古い方のPadを取り出す。
試しに操作しようとすると、ユーザーIDとパスワードを求められた。
俺はお爺ちゃんの部屋から以前に貰ったメモ書きを取ってきて、入力してみると使えることがわかった。
「バーチャん。古いの借りてもいいかな?」
「大丈夫じゃろ。かまへん。」
この後の日記からの学習には、お古のPadを使ってみよう。
これで布団の中でも見れるだろうから、寝不足にならなくて済むかも?