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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月23日(金)☂️/☀️
62/279

5-4 利得


 中学3年生の冬。


 2月14日に、俺はチョコレートを貰った。

 バーチャんの呼び名は組合の娘。

 旧姓原口さんから貰った。


 当時の俺は女性との付き合いなど全く無かった。(中三だから当然だよね


 高校進学も決まり、卒業まで残り1ヶ月も無いときに同級生の女の子からチョコを貰ったのだ。


「ジローくん。チョコあげる♪」


 貰ったときは冷静を装ったが、始めてのチョコだ。

 心の中は動揺しまくりだ。


 家に帰りイロエロと考えてしまった。

 返事はどうしようとか、食べて良いのかとか、お返しは何にしようかとか、卒業式とホワイトデーの日程まで考慮してしまった。


 そして後に真相を知った。

 ホワイトデーのお返しを買いに少し洒落た菓子屋に出向いた。

 そこで高校時代に、農協のバイトに誘ってくれた彼と鉢合わせした。

 互いに恥ずかしくも誰へのお返しかを話した。

 結果は二人共に旧姓原口さんだった。


 そして知ったのだ。

 旧姓原口さんを含む俺を骨までしゃぶったメスライオン3匹は、全員で協力してクラスの全男子にチョコを渡していたのだ。


 嬉しかったが、嬉しかったが、少しだけ悲しかった。


 旧姓原口さん。

 バーチャんに話してたんだね。

 バーチャんは忘れてたはずなのにね。

 あそこで会わなければバーチャんも忘れてたはずなのにね。



 昼御飯の洗い物を済ませ仏間でお茶をいただく。


「東京の女か?」

「何が?」


「悩んどったのは東京の女か?」

「う~ん。少し関係がある。」


「どれ、バーチャんに話してみい。」


 俺はバーチャんに自社製品に関する社内での知名度を話した。

 俺に良くしてくれた前課長が担当していた話しもした。 

 そしてバーチャんも見ているプレゼン資料が消えた話しもした。

 資料が消えたのには上司である部長が関わっている可能性も話した。


「その部長さんは本当に関わっとるんか?」

「断定はできないけど…」


「存在を消そうとするなんて無駄なことじゃ。」

「俺もそう思うんだよ。」


「二郎や。事実は消せるもんじゃないんじゃ。物が残っておればそれは事実じゃ。それまで消せると思うか?」

「俺もそう思う。」


「じゃが事実を一人占めできるならどうじゃ。」

「一人占め?」


「ワシなどがその例じゃ。」

「あっ!」


 バーチャんがニヤリと笑う。


「門に関しての事実はバーチャんしか知らない。」

「そうじゃ。」


「バーチャんしか知らないから、翻訳の監修はバーチャんしかできない。」

「そうじゃ。」


「けど、それとは少し違うんじゃ…」


 待てよ。


 あの製品が社会的に価値のある物だとする。

 もしくは、あるコミュニティで価値のある物だとする。

 それを一人占め、独占できたとすれば得られる利得も独占できる。


 実際に前課長はそれをやっていた。


 部長も同じように利得を独占したいんじゃないか?

 そう考えれば、部長のメリットも辻褄が合うんじゃないか?


 だとすると、次にわからなくなる事が出てくる。


 どうして前課長は資料を残したんだ?

 前課長が会社を去れば自社製品から得られる利得はなくなる。

 だから会社を去る際に残したのか?


 前課長は彼女に資料を与えている。

 彼女の様子からすると、利得を彼女が継いでるとは思えない。

 彼女が利得を独占しているならば、あれだけ気軽に資料を俺には渡さないだろう。


 部長の思惑は俺の憶測かもしれない。

 けれども当たっているだろう。


 前課長のやったことは、今では推測すらできない。


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