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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月22日(木)☀️/☁️
54/279

4-9 秋刀魚の開き


 バーチャんは、昨日に続き煮物を作っている。

 今日は俺の希望で『かぼちゃの煮物』だ。


 一方の俺は秋刀魚の開きと格闘していた。

 スーパーで見た際に、その大きさに興味を引かれて購入した秋刀魚の開きだが大きすぎた。

 バーチャんと俺の分で2枚入りを購入したのだが、大きすぎて1度に2枚は焼けない。

 グリルに2枚並べて入らないのだ。


「バーチャん。2枚一緒には焼けないな。」

「じゃあ1枚で半分ずつじゃ。もう一枚は明日じゃ。」


「二日同じで大丈夫?」

「ワシは平気じゃ。二郎は?」


「俺も大丈夫。」


 そんな会話をしながら晩御飯の準備を進める。

 秋刀魚の開きが焼き上がる前に大根おろしも準備した。

 一昨日の鯖の塩焼きで大根おろしを忘れたので、今日は準備万端と言えるだろう。


 食卓に惣菜を並べ終えたら『いただきます』の言葉と共に食べ始める。


「秋刀魚が大きいで半身で十分じゃ。」

「バーチャんには量が多かった?」


「ワシは後で手土産があるけん。」

「手土産?」


 そう言えば『国の人』が来て白い箱を仏壇に供えていたのを思い出した。

 バーチャんはその事を言ってるのだろう。


「今日の『国の人』は付き合いが長いの?」

「眼鏡は長いな。偉そうなのは引き継ぎじゃ。」


 そう言えば名刺らしきものが3枚置かれていたのを思い出した。

 買い物袋を運んでくれた眼鏡スーツな男性は、何回か来ている実働部隊なんだろう。

 一切顔を見せなかったのが他に二人いて、名刺はその二人のか。


 そんな会話をしながら、バーチャん手製のかぼちゃの煮物も美味しくいただいた晩御飯となった。



 洗い物は俺が全てすることにした。


 バーチャんには仏間でくつろいでもらう。

 帰省したときぐらいはバーチャんに楽をさせたい。


 当然今日もグリルを磨いた。


 全てを洗い終え、濡れた手を拭きながら仏間のバーチャんに声をかける。


「バーチャん。手土産はこれから食べる?」

「そうじゃな。先にもらうか。」


 バーチャんの答えにお茶を新たに入れて仏間の座卓に置く。

 続いて冷蔵庫から見覚えのある白い箱を取り出し、これも仏間へと運ぶ。

 何やら甘い香りがする。


「中身は何じゃ?」

「中は…」


 白い箱の中身には『どら焼』が5個入っていた。


「『どら焼』…『虎焼き』?」

「ほぉ~少し変わったのう。」


 添えられた『しおり(リーフレット)』を見てみると「宮内庁御用達」と書かれていた。


「前は『東京バナナ』じゃった。」

「へぇ~担当が変わると手土産が変わるんだ。」


「春になると担当代えで挨拶に来よる。」

「なるほど。」


 『国の人』なら春の異動とかがあって担当が代わるんだろう。

 包装紙を破り『虎焼き(どら焼)』を取り出し半身にするとつぶあんだった。 味を確かめるべく口に運ぶと上品な甘さだ。


「結構旨いな。」

「じゃな。そうじゃ忘れとった。もう一つ土産があるんじゃった。」


 ん?忘れてた?

 バーチャんはそう言うと、先ほど名刺をしまった桐の箱を手にした。

 中から名刺らしきものを1枚取り出し俺に渡してきた。


『Kadomori Jiro』

『Pg○K94△Cy※W』


 手書きで書かれている。なんだこれ?


「バーチャん。これ何?」

「User id and initial password.」


 こ、こでまた英語ですか?


「ノートパソコンで使うもんじゃ。」


 こ、これって…


 俺は閃いた!

 直感した(変な日本語

 I have a flash of inspiration!


 あのノートパソコン。

 お爺ちゃんの部屋に置かれていたノートパソコンのユーザーIDとパスワードだ。


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