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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月22日(木)☀️/☁️
51/279

4-6 混乱の後継者


「バーチャん。ただいま。」


 玄関から入り、廊下の先に声をかけるが返事がない。あれ?


「ただいま~」


 仏間に入りながら声をかけると、バーチャんが仏壇に合掌していた。

 俺も隣に座り合掌し、墓参りさせて貰ったことを心の中で伝える。

 仏壇前の供物台には、今朝は見なかった白い箱と名刺らしきものが3枚置かれていた。

 合掌を終えたバーチャんは名刺を回収し、桐でできているでろう木箱に納める。

 白い箱は台所に持って行き冷蔵庫にしまった。


 「おかえり。」


 仏間に戻ってきたバーチャんは、ようやく俺に答えてくれた。


 けれども何か静かな感じだ。

 思いきって俺はバーチャんに尋ねた。


「何かあったの?」

「あった。」


「何があったの?ネットのこと?」

「二郎のことじゃ。」


「えっ?俺のこと?」

「ああ、二郎のことじゃ。」


 何があったんだ?


「二郎は英語が喋れん。」

「はい。無理です(キッパリ」


「カンシュウは継げんじゃろ。」


 あぁ~。そう言うことか。

 今はバーチャんがやってる翻訳の監修だが、俺では継げないという話だな。


「それに『門』に関する知識もないじゃろ。」

「全く。というかこれからでしょ?」


「実はのう…」


 それからバーチャんは『国の人』との今日の話をしてくれた。


 俺が帰省する以前から今日は『国の人』が来る予定だった。

 俺が『勾玉まがたま』と共に帰省したことで、バーチャんは俺と『国の人』を会わせようと考えた。

 その為に今日は俺に一日予定を空けさせた。

 けれども昨日からの俺との話で、まだ早いと判断して会わせるのはやめたそうだ。


 ここまでの話を聞いて、昨日のバーチャんの『継ぐ』という言葉を思い出した。


「バーチャん。そもそも俺には『門』に関する経験が一切無い。だから日記に書かれている事が事実かわからない。」

「そうじゃ。」


「だから翻訳の監修は継げない。」

「そうじゃ。」


「それが… 俺のことなの?」

「そうじゃ。」

 

 あれ?なんか変だ?


 そもそも俺は

 ・『門』についての知識が無い

 ・『門』についての経験が無い

 ・英語ができない


 これだけ条件が揃ったら、翻訳の監修なんて無理に決まってる。

 それを継ぐとか考えること自体が間違いじゃないのか?


 バーチャんも『国の人』も、継がせる相手の選別からして間違っているよ。


「じゃから当分はワシが続けるしかないんじゃ。」


 はいはい。

 バーチャんのおっしゃるとおりです。

 俺は後継者にはなれません。


「じゃが、血筋は両方を持っとる。」


 血筋?

 両方?

 なんのこと?


 バーチャんが混乱してる感じがする。


 これ以上はバーチャんと話しても無駄な気がしてきた。

 バーチャんも考えが纏まらない感じがする。

 それに今の俺もマクドでメスライオン3匹の餌となって疲れきっている。


「バーチャんごめん。ちょっと仕事を見てくる。」

「…」


 俺はバーチャんとの話を打ち切って、お爺ちゃんの部屋に向かった。



 お爺ちゃんの部屋に入って、置かれている物の並びが今朝と違うことに気が付いた。


 座卓の上には以前から置かれていたノートパソコンが戻され、新たなLANケーブルで繋がれている。

 俺が持ち込んだノートパソコンは脇にどけられているが、LANケーブルは朝のままだ。


「これって…明らかに見てるよな…」


 俺は自分のノートパソコンを座卓の上に置いたままで部屋を空けたはずだ。

 それが入れ換えられているのだ。


 俺のノートパソコンからLANケーブルが外されていないということは、俺が勝手に実家のネット環境を使っている証拠になる。


「もう。バレバレだな。」


 半ば諦めた。


 『国の人』に知られてるならそれでいい。

 勝手に使ってダメなら後で叱られよう。

 既に先方は俺が勝手に使ってるのを知ってるだろう。

 それでも止めなかったら『国の人』も同罪だ。


 俺はそう考えながら自分のノートパソコンを開き、社内ネットワークにログインして社内メールを読み始めた。


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