4-4 再びのマクド
俺は、ショッキングピンクの軽トラを運転しながら考えていた。
昨日バーチャんは『国の人』と言っていたが、本当にそうした人がバーチャんと接しているんだと実感した。
昨日話を聞き、さっきまでは絵空事のように感じていたのだが、実際に遭遇すると本当なんだと驚きが先に立つ。
それにしてもそんなに『門』に関わると言うことは、大事なのだろうか?
そんなに『門』に関わる知識は大事なことなのだろうか?
そんなことを考えているとマクドが見えてきた。
帰省初日に立ち寄ったマクドだ。
ショッキングピンクの軽トラを駐車場に駐め店内へと入る。
今日は店内で食べようと思い、まずは空席を探した。
「ジローくん。」
女性から声をかけられた。
声の方を見れば、記憶の蘇る女性が3名ほど子供と一緒に座っていた。
全てが中学時代の同級生とそのご子息たちだ。
し、しまった。
昼時のマクドなんて、再びのプチ同窓会になりかねん。
声をかけて来たのは、ファッションセンターで会った旧姓原口さん。
他の女性はスーパーで談話中だった2人だ。
「お久しぶり~」
その声は、こっちに来て座れと言わんばかりだ。
このまま座ったら、話題に飢えた彼女たちの餌食になりそうだ。
どうする?!
「ママ~遊んできていい?」
おお、そこの幼女。
素晴らしいタイミングだ。
このマクドには子供向けの遊具施設が併設されている。
子供達はマクドを食べるよりも、遊具で遊ぶことが主眼なのだろう。
見たところ、その幼女の年齢ではママも一緒に遊ばないと危なそうだ。
そうなれば彼女達は遊具施設に向かう。
俺は彼女達の餌にならずに済む。
「ママ~ ボクも行っていい~」
おいおい。そこの男の子。
ママも連れて行け。
「リナちゃんとか小さいから、ちゃんと見れる~」
おいおい、何を言ってるんだ。
ママも一緒に遊ばないと危ないだろう。
「ママ~ ボクも行く~」
おいおい。旧姓原口さんの息子さんまで参加ですか。
「ユウ~ 面倒見れる~」
旧姓原口さん。
ママも一緒じゃないと危ないよぉ~。
「ユウ~ あんたが一番お兄ちゃんなんだから、ちゃんと面倒見るんだよ~」
旧姓原口さん&ママさん二人。
全員が育児放棄ですか?
大丈夫なんですか?
ママから許しを得た子供達は、全員で我先にと遊具施設へ走って行く。
それを見届けたママさん3人が、自分の隣の席が空いてると言わんばかりにこちらを見ている。
これで俺は彼女達の餌となることが確定した。
俺は諦めて、自分の食事を注文することにした。
◆
「チーズバーガー50個とコーラLサイズでよろしいですか?」
元整備士のお兄ちゃん。
そうだよね。
店長なんだから、接客してても不思議じゃないよね。
「店内でお召し上がりですか?」
そんなバカ食いしたら、彼女達の話題になるからやめて。
「ビッグとタツタとコーラMで。」
「ビッグワン、タツタワン、コーラM」
さすが店長。仕事してるねぇ~
「すいません。出来上がりに時間がかかるんで席にお持ちします。あちらの席でよろしいですね。」
はいはい。
元整備士のお兄ちゃん。
差し出した手の先は、メスライオンが3匹も座ってますね。
俺に檻に入って食べられて欲しいんですね。
そのメスライオン3匹の笑い声が店内で一番賑やかなんですけど。
私があの檻に入ったら、店内がもっと騒がしくなりますよ。