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門の守人  作者: 圭太朗
2021年4月21日(水)☀️/☀️
45/279

3-14 最後の酔っぱらい


 日中は新玉ねぎの収穫。

 大量の日記との格闘。

 酔っぱらいな同僚を電話でなだめること小一時間。


 心身共に疲弊した俺は、風呂に入って寝ることにした。


 仏間のバーチャんへ風呂を貰うと告げに行くと、バーチャんは既にパジャマのような物を着ていた。

 先に風呂を済ませたんだな。

 そう言えばさっき、風呂に入れと言っていた。


「風呂、入るね。」


 バーチャんは机に置いたPadを見つめていた。


「…」


 まださっきの黙りが続いているのだろうと、再度声をかけようすると慌てたようにPadの画面を袖で拭いていた。


「ワシはもう済ませたで…(ズズズ…」


 少し鼻を啜るような音。

 あれ?もしかして泣いてる?


 きっと日記を見て泣いていたのかもしれない。


 俺はバーチャんの泣いてるかもしれない様子に触れずに、風呂に入ることにした。



 ゴーゴーゴー

 ジャグジーの音の中。

 明日のことを考えてみた。


 明日は、新玉ねぎの収穫を手伝う。

 それが終わったらテレワークして、何もなければ大量の日記に戻る。

 いやいや、テレワークした時に彼女からお客様に提案した件の話を聞くのが先だな。


 その後は…

 その後は……


 おいおい、俺って実家に帰ってきたのに何も予定が無いじゃないか。

 前に実家に帰ってきた時は地震の後片付けをした。

 他には少し農作業を手伝って…

 他に何かをしたような…


 大学時代の帰省ではバーチャんに大学の様子を話して。

 友人ができたことを話して。

 御飯食べて。

 昔の風呂に入って。

 少し農作業を手伝って…

 他に何かをしたような……


 他の人は、実家に帰ったら何をしてるんだろう?


 今回の帰省は俺が原因だから、俺の心が落ち着けば良いよな。

 日記のこととかバーチャんやお爺ちゃんが別世界の人間だとか。

 父さんや母さんまでも別世界の人間だとか。

 いろんな話を聞けて…


 そうだ!墓参りに行ってない。


 前の帰省では墓が壊れてないか見に行ったし。

 大学時代も墓参りに行ったじゃないか。


 ダメだね。

 久しぶりに帰省すると、そうした大切なことを忘れちゃうよ。


 風呂からあがったらバーチャんに墓参りを相談しよう。



「バーチャん。お風呂ありがとうね。」


 風呂から上がり仏間のバーチャんに声をかけると、バーチャんからビールを飲まんかと誘われた。


「二郎、ビールでも飲まんか?」


 バーチャんの言葉に、俺は彼女たちが飲んでいたのを思い出した。


 時々は飲んでも良いよな。

 日頃のストレス発散と考えれば良いよな。

 けれどもほどほどだな。


 泣き出した彼女などは、元々が泣き上戸なのかもしれない。

 そう言えば彼女とは数回しか飲んだことがなかったな。

 彼女もストレスがたまっていたんだろう。

 今夜久しぶりに飲んで気が緩んだのかも知れない。


「飲む。」

「じゃあ、出してこい。」


 バーチャんにすすめられ、台所の冷蔵庫を覗くと瓶ビールが冷やしてあった。

 もしやと思い冷凍庫を見れば、グラスまで凍らせてある。


「バーチャん。準備万端じゃないか。」


 凍らせたグラスと瓶ビールを持って仏間に戻るとバーチャんが待ち構えていた。既に一人で一本飲んだようだ。


 シュポン!

 新たに瓶ビールの栓を抜く。

 凍らせていたグラスにビールを注ぎ、バーチャんのグラスも満たす。


「おつかれさま」


 と声をかけて軽く乾杯。


 グビグビグイ。

 ぷはぁ~

 旨い。

 湯上がりのビール。

 最高!

 どれどれ。

 もう一杯。

 おっとバーチャんのグラスも満たして。

 グビグビグイ。

 ぷはぁ~

 旨いなぁ~


「二郎や。」

「なに、バーチャん?」


「別れ話か?」


 ブハッ。思わずビールを半分ほど吹き出しちゃったよ。


「違う、違う。別れてない。」

「さっき慰めてるようじゃったが?」


「バーチャん。聞いてたの?」

「若い女が泣いたら慰めるんじゃのう。」


「向こうの勘違いだよ。俺は何もしてないし。」

「さっき、ワシが泣いても慰めてくれなかったのう。」

 さっきのバーチャん。

 やっぱり泣いてたの?


「やっぱり泣いてたの?」

「二郎が慰めなかったのう。ワシが泣いてもダメじゃのう。」

 バーチャん。酔ってるでしょ。


「若い女は慰めるが、年寄りは慰めんのか?ん。慰めんのか?」


 お願いです。

 酔って絡まないでください。

 更に疲れそうなんです…


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